一般社団法人SDGsとうほくは東北ならではの独創的なサステナブルな活動を表彰する「とうほくSDGsアワード」を開催しており、企業やNPO、行政機関、高校などの教育機関などのSDGsに関する様々な取り組みを表彰しています。
2024年度に実施した「とうほくSDGsアワード2024」では宮城県石巻市の株式会社山大の地元の小学生のために机の天板を作り寄付する取り組み「学童机に地元産の木のぬくもりを」が大賞を受賞しました。山大のSDGsへの取り組みについて、企画広報室の本郷友恵さんにお話をお伺いしました。
とうほくSDGsアワード2024 ホームページ
木材資源の循環に取り組む
株式会社山大は宮城県石巻市を拠点に国産杉の製材や住宅資材の販売、木造住宅の建築などを行っている会社です。原木の切り出しから製材、プレカット、建築、アフターメンテナンスまでを一貫して行っています。会社の発祥は300年前、初代髙橋元助が石巻に植林をしたことにさかのぼります。以後10代にわたり植林を続けており、これまでに植えた苗は300万本。さらに、令和2年6月には、石巻地区森林組合、宮城県東部地方振興事務所と「石巻圏域における再造林促進に関する協定」を締結し、花粉量の少ない「少花粉杉」の寄付を行っています。また、地元産の高品質な杉を使った自社ブランド材「宮城の伊達な杉」を使った住宅の建設にも取り組んでいます。
山大では、創業以来木材資源の循環に取り組んで来ました。森林資源を守るためには木は適切な時期に伐採し、木材として活用するということを続けなければいけません。森林の手入れをしなければ木は枯れ、森が荒れて、土砂崩れの原因にもなります。また、木材にすると、そこには炭素が固定されることになりますから、木材住宅を増やすことは、「まちを森にしていること」と同様だと考えています。結果としてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーにもつながっていく取り組みで、「SDGs」が登場する前から、会社として「SDGs」に取り組んでいたことになります。
さらに、バイオマス資源の活用にも取り組んでいます。木材加工の過程で発生した木くずや木の皮を活用し、工場内のボイラーの燃料として使用しています。また、木材チップぐらいの木くずは紙の原料として関連会社に提供し、おがくず状になったものは家畜の敷物として提供しています。木は余すところのない資源なので、無駄なく使うという部分では「SDGs」の目標である「つくる責任 使う責任」につながっていると思います。
地元の小学生のために天板を製造し寄付
「とうほくSDGsアワード」で受賞をさせていただいた取り組みは、石巻の飯野川小学校の6年生が使っている机に「宮城の伊達な杉」を活用した天板を取り付けるというものでした。
きっかけは飯野川小学校の卒業生でもある山大の役員が小学校の先生から「児童が使っている机が重く、机が長年使われていることで傷やへこみが目立つ」というお話を聞いたことでした。その話を聞いた私たちは「何とかできないか」と考え、それまで作ったことはなかったのですが、子供たちの卒業の記念にもなるのではないかということで、机の天板づくりに挑戦しました。杉という樹種の特色として、軽い反面、傷がつきやすい木材のため、神奈川県の会社と協力し、Rpl成型という特殊加工を施し、強度を上げました。
6年生の児童を対象に、天板の取付作業を社員と一緒に行い、子どもたちからは、「軽いね」「木目がきれい」という声をいただきました。 子どもたちと社員が関わり、一緒に活動した時間は、地元の企業や、林業について知ってもらえる機会になったと感じています。この活動をきっかけに、「木に関わる仕事がしたい」、「大工さんになりたい」など将来の夢に繋がってくれたら嬉しいです。「とうほくSDGsアワード」でも地域の子どもたちに対して、実施していることや地域との連携を評価され、大賞を受賞することができました。
社員の発案を取り入れ、SDGsを推進する仕組みを
会社として今後目指していきたいことは、炭素貯蔵量に関することです。山大では2030年のゴールまでに石巻市の人口が年間に排出するCO2を炭素として貯蔵できるだけの量の木材の生産を目指しています。弊社では、自社で製材された原木消費量から、木材建物に使用された木材材積をもとに炭素貯蔵量を算出しています。
弊社では住宅建築を行う「山大ホーム」や、大型の物件の設計・建築を行う「木構造特殊建設室」といった部門を持っています。福祉施設や幼稚園など大型の建物を木造で建築することにも力を入れ、より多くの木材を活用して木に身近に触れられる場所を増やしていきたいと考えています。
また、山大は、新たに、「SDGs活動委員会」を発足させました。この委員会は一般社員を中心に構成されており、社内の横の繋がりと社外との連携を深め、社員が発案したことの実現を目指し活動しています。
委員会から生まれた具体的な取り組みとして、社内にエコキャップ回収BOXを設置し、集めたキャップをワクチン寄付のために回収業者へ提供しています。エコキャップの回収BOXは、社員の発案によって作成されたものであり、木材加工の際に発生した廃材からつくられていて、回収したエコキャップが外から見えるようになっています。地域住民も参加できる「山大サスティナブルふれあいコンサート」では、エコキャップ回収を出張形式で実施し、地域の方々からエコキャップを集めています。
他にも社員の発案で社内フードドライブを行いまして、10日間で多くの食品が集まりました。今後も社員のアイデアを生かしてSDGsに取り組んでいきたいと思います。