スケートボードで人と人がつながる、面白い街を作る

岩手県花巻市で15年以上、スケートボードを楽しめる環境づくりに取り組んできた佐々木大地さん。長年”ローカル”にこだわり「自分達の遊び場は自分達で作る」という思いを行動に移してきました。好きなことを突き詰め、地方でやりたいことを実現し続けている佐々木さんのストーリーをぜひご覧ください。

目次

スケートボードが人とつながるきっかけに

私がスケートボードを始めたきっかけは、中学時代に見た映画やスケートボードビデオでした。その中で街をスケートボードで滑っている映像を見て、自然と自分も滑りたいと思いました。そんな中、学校で同じような趣味を持つ友達を見つけ遊ぶようになったことがきっかけです。

スケートボードは自分に外の人たちと繋がるきっかけをくれました。地元の花巻でも、街中にいた先輩が「一緒に滑ろう」と声をかけてくれました。知らない街でもスケートボードという共通言語が、いつも私の価値観を広げてくれました。

私がスケートボードを長年続けてこられたのは、楽しいだけではなく、得られるものが多かったからです。スケートボードは「ストリートカルチャー」と呼ばれる1つの文化です。スケートボードはその様子を写真や映像に残す習慣があります。それらは私が大好きな音楽や、ファッション、映画などとも結びつき、いつもインスピレーションを与えてくれるのです。自分自身の生き方についてもとても影響を受けました。

そんな私の転機になったのは、26歳の時のことでした。それまではただ空いた時間にスケートボードを楽しんでいただけでしたが、いろいろな場所で遊んだ事や、様々なイベントを企画して得た経験から「そろそろ自分も、これからの人達のために何か形に残るもの、そして地元に足りない文化を作りたい」ということを考え始めました。振り返って考えてみると、自分はスケートボードでプロになるようなスキルが無かったので、とにかく違う何かをやり遂げようとしていた気がします。

花巻に公共スケートボードパークを作る

漠然と思い浮かぶやりたいことを整理していく中で、まず私がやるべきなのは、花巻に思いっきりスケートボードを楽しめる場所を作る事だと思い立ちました。

そもそも岩手に少ない公共スケートボードパークを自分が作るなんて無理だろうとも思いましたが、とりあえず仲間達と「花巻市スケートボード協会」(現在は花巻北上スケートボード協会)という団体を2009年に立ち上げ、市に相談を始めました。この時点ではかなり難しい雰囲気でしたが、良い担当者と出会い、市のスポーツフェスティバルなどに参加し、スクールやコンテストを開催し始めました。

その後2011年に東日本大震災があり、復興の意味も込め近いタイミングでなんとか形にしたい、と思い行った署名活動で、オンラインを使わずに1800名の署名を集めることができました。その後も2年ぐらい苦労しましたが活動を続けて4年経ったころ、ようやく私たちの活動が認知されはじめ、2013年に、MLBで活躍する大谷翔平選手や菊池雄星選手が通った、花巻東高校のすぐそばにある「日居城野運動公園」に小さなスケートボードパークがオープンしました。

オープン後は「ここからがスタート」という思いで、私たちはスケートボードインストラクターを取得し、休日を使って子どもたちに向けたスケートボード教室をボランティアで5年ほど続けていました。現在は私たちと似た仲間ができ、県内各地で以前よりスケートボードが盛んになってきています。

念願のお店を持ち、仲間に会える場に

東京オリンピックの影響もあり順調にスケートボード人口が増えていく中で、次は「長年の夢である、スケーターの基地になる場所を作りたい」そう思っていたころ、2017年に一度「閉店」というニュースが流れた花巻のシンボル、マルカンビル大食堂の運営を(株)上町家守舎が引き継いだことを知りました。「ここで何かできないか」と思い、(株)上町家守舎の代表で、同世代でもある小友康広さんに連絡を取りました。(小友さんの記事はこちら

まずはテストで、マルカンビルの地下を滑ってみると、路面が良く、音も漏れない。屋内なので雨や雪に関係なく滑ることができました。6階のマルカンビル大食堂には毎日多くの人が訪れていて、この場所ならコアなスケートボードカルチャーだとしても、一般の方も見に来てくれるだろうと思いました。「このチャンスを逃したくない、ぜひやりたい」ということで、この場所でショップとパークを併設した、夢の場所を作る事になりました。

私たちにはお金が無かったので、出来ることは全て自分たちでやるつもりで改装工事をスタートしました。この広い床をスケートボードに適するように整備(上の写真の3倍以上はあります)したり、「セクション」と言われる障害物の制作、店舗の什器に至るまでほぼ全てを手作りしました。この広いスペースを全て仲間と手作業で塗装しました。6か月近く毎日睡眠不足でしたが、毎日色んな人が手伝いに来てくれました。あの時の仲間たちのパワーは本当に凄かった。二度と経験できるようなことではないと思います。

そんな沢山の人が集まってできたこの場所は、勿論スケートボードだけではなく、色々な方とイベントが出来るような環境を意識しました。

開店するまで沢山の問題がありましたが、企画から約1年後の2018年に「Dprtment(デパートメント)Skateshop Park」をオープンすることができました。

Dprtment(デパートメント)は「ここに来れば仲間に会える」という場所です。一度地元を離れて何かチャレンジし挫折したとしても、帰ってこれる場所です。そしてこれから何かをやりたい人にパワーやインスピレーションを与えてくれる場所です。

この場所が出来てからは「ここでスケートボードをしたいから花巻に住みたい」と言って引っ越した人もいました。世界で活躍しているプロスケーターに地元を案内し一緒にスケートボードツアーをしました。地域のお祭りの中で音楽イベントを毎年やっています。ニューヨークからバンドとプロスケーターが来て、ローカルバンドが一緒にライブをしました。フランスから世界中で活動しているアーティストが来て一緒にイベントを開催しました。オリンピックのコーチ陣たちと、一緒に子供達にスケートボードを教えました。そしてスケートボードクラブを作って、中高の部活として認めてもらいました。

そして仲間が結婚しその我が子を連れて、スケートボードをDprtmentに買いに来てくれるのです。

花巻にさらなる拠点づくり

ここ10年で私たちの住む町の環境は少しずつ変わっていますが、まだまだこれからです。「私たちの街は面白いよね」と仲間が胸を張って言うことができる文化を作り続けたいと思っています。そしてそこで繋がっていく人々と、更にこの町を楽しくしたいです。

最後に、ここではスケーターに限らずですが、あなたの住む町にも必ずいると思われる、私たちのように何かの活動をしている人たちといつか是非めぐり合って欲しいと思っています。勿論スケートボードもお勧めです。

おすすめの本
岡本太郎「今日の芸術:時代を創造するものは誰か」(光文社)
自分が何かを創造することについて、もっとやらないとというあなたには力になると思います。

STUDIO VOICE (INFASパブリケーションズ)
たくさんのバックナンバーが存在するカルチャー雑誌です。あなたが興味のあるものを探してみてください。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=佐々木さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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