問いづくりのポイント5 社会と学校の架け橋としての学び

 前回は、ライフ・チャートから自分自身を見つめ直し(メタ認知)、自分の身の回りの問題を探ることを確認してきました。今回はそれをもとにその課題解決に向けてどのようなプロセスを行っていったら良いのかを確認していきます。高等学校における総合的な探究の時間や教科においても同じようなプロセスで学びを展開していくことが可能です。学校現場でよく見受けられる探究活動は、生徒たちの「自分」を置き去りにしていることです。例えば、よくありがちなのが、理科の実験をさせようとして、課題研究の内容を展開していく事例です。

 よくありがちですが、「教師がレールに乗せてしまう」、「興味関心もないのに無理やりグループに入れられる」、さらに一番問題なのは、教師側です。教師たちが自分の経験してきた内容を見つめ直すことができず、自分が経験したことを生徒たちに「なぞらせる」ことなどが挙げられます。また、「数学の校長先生」だった方が、「数学は問題を解けばいいのであって、教科で探究などはしなくていい!」と話していたというのを聞いたこともあります。数学は、大学入試や就職試験のために問題を解けばいいだけなのでしょうか?私たちの身近なところに数学と実社会と関連しているものが多くあると思います。

 生徒たちの身近なところからの学びの展開の事例を今回は一緒に考えていきたいと思います。


目次

STEP1 それでは、前回、自己探究して確認できたことを確認してみましょう。




 それでは、まず最初にチームビルディングから考えていきます。皆さんにとってチームとは何でしょうか?仲の良い人たちだけでチームを組んでも生産性が上がりません。また、今までの経験に固執ばかりして、新しい知見を入れようとしない人がいてもうまく前に進めません。皆さんは自分と違う考えを持っている人で、あまり話したことない人と組むことをお勧めします。自分の知らない人とチームを組むと今まで自分の知らない知見が加わり新しい視点が開けるはずです。また、高校での探究活動の一番最初の小さなサイクルを想定していますので、可能であれば3〜4人のスモールグループを組んでみて下さい。また、1人で進めようとしてる場合は、グループに「このような人が存在したら嬉しいな!」という視点を想定して進めてもらえると幸いです。チームを組んだら、チームの皆さんは半径5m以内で課題と思っていることを発表してみましょう。


STEP2 グループメンバーの半径5m以内の身近なことで課題と考えているところを文章ではなく、質より量を出してみてください。(ブレインストーミング)

メンバー半径5m以内の身近なことで課題と思っているところ
    さん 
    さん 
    さん 
    さん 

   ※可能であれば、このワークは付箋(ポストイット)を活用すると良い。

 それでは、次にチームの課題を決めていきましょう。グループの皆さんの半径5m以内の身近なことで課題と思っていることの中で共通のものを考えてみましょう。それが皆さんが行っていく探究活動の大きな問題(テーマ)として考えていくことになります。先ほど、出し合ったものを同じ内容のグループにまとめ、探究活動の大きな問題(テーマ)を決めてみて下さい。

STEP3 グループにおける半径5m以内にある大きな問い(テーマ)を考える。

               

※このまとめて考える方法をKJ法という。

 どうでしたか?大きな問題を考えられたと思いますが、小さな問題というものもあります。この小さな問題のことをこの学びでは「課題」と位置付けることにします。例えば、問題の例として、「私の住む地域の問題」という大きな問いがあったと思います。これだととても抽象的になってしまいがちになり、探究のテーマとしてはボヤけてしまいます。前回までの学んだことを応用して、事実を確認する問いで焦点化をしていきましょう。そうすると具体を伴った課題が作られまます。

STEP4  大きな問題(テーマ)から小さな課題を考える。

①皆さんのグループの大きな問題(テーマ)

   

②皆さんのグループの大きな問題(テーマ)から小さな問題(課題)を考える。

大きな問題があまりにも抽象的すぎる時には具体を考える問いで検討していきます。また、皆さん自身が複数の課題を提示された場合、すべて同時進行することはできるでしょうか?かなり厳しいと思います。課題を考えることができた次はどの課題からアプローチしていくのかを考える必要性があります。皆さんが作った問いから皆さん自身が課題解決してみたい順に番号を振ってみて下さい。

具体を質問する問い皆さんが作った問い優先順位
When (いつから問題か?)  
Where (どこで問題になっているのか?)  
Who (誰に対して問題になっているのか?)  
What (何をするのか?)  

具体的な問いを作成した後に、具体から再度、抽象を考える問いを考えてみて下さい。

具体を質問する問い皆さんが作った問い優先順位
How (どのように考えていくか?)  
Why (核心として何が問題になっているのか?)  

  

 どうでしたか?小さな問い(課題)を考えることができましたか? 考え方次第で大きな問いを解決する手段としての小さな問い(課題)を考えることができたと思います。また、課題を解決してみたい順に順位づけをしたので[1] 、それに沿って皆さんのグループの半径5m以内の課題解決に向けて探究を進めてもらえればと思います。そして、一番優先順位が高かった問いをリサーチクエスチョンとして探究を進めていって下さい。この続きは、次回から探究を戦略的に考えていくアプローチについて考えていきたいと思います。

 それでは、いつものリフレクションを行います。

※文章でなくても構いません。文章が苦手なら、単語でも絵でも何でも構いません。

 自由に思いつくまま書いてください。

1 今回の学びで皆さん自身が発見したことを考えてください。



2 今回の学びで皆さんが一番印象に残るくらい新しく発見したことは何ですか?

   

3 2の時、皆さんはどのようなことを思いましたか?



4 今回、学んだことを皆さんはどのように今後に活かしていきたいですか?




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この記事を書いた人

宮城県の公立高校教員として23年間勤務したのち、2024年4月より宇都宮海星学園星の杜中学校・高等学校で勤務。

指導の核としてパブリック・リレーションズの考えをもとに生徒たちに「生きやすさ」を考える授業の展開を心がけている。経済産業省「未来の教室」アイディアソンやJICA主催公開セミナーにて事例発表等にも選出された。また、探究関係の教材開発協力や授業づくりで多くの学校で講演を行っている。地理歴史・公民科教諭。

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