ねこもひとも、しあわせな社会を作る

「ひともねこも幸せな社会」を作ろうと盛岡市で活動するNPO法人もりねこ。行き場のないねこ「保護猫」を引き取り、猫カフェという場を作って新しい飼い主につなぐなど、多様な活動を行っています。代表の工藤幸枝さんに、活動をはじめたきっかけや活動の内容についてお話を伺いました。

目次

課題に取り組む決断をしたきっかけ

 北海道の出身です。もともとねこが好きで、ねこを飼って、気ままに過ごしているところを見るのが好きでした。ただ、ペットショップに行くとねこが高い値段をつけられていて「商品」として扱われていることに疑問を持っていました。

 その後、インターネットでねこに関するブログを見ていると、野良猫や行き場のないねこ(保護猫)が殺処分されてしまうという課題を知りました。そのことを知った時に、ねこが好きなのに、殺処分の課題について「見て見ぬふり」をしている自分が嫌になり、ねこの殺処分を減らそうと活動することにしました。

 まずは北海道にある、保護猫と触れ合えるカフェでアルバイトとして働くことにしました。そこでは、保護した、行き場のないねこの里親を探すという取り組みをしていました。このように殺処分を減らすためには、保護猫とねこを飼いたい人をつなげる場が必要だと感じたからです。

 その後、結婚を機に2011年に盛岡に引っ越し、盛岡では仕事をしつつ、保護猫の課題に取り組む団体でボランティアとして活動をしていました。その後、保護猫の活動を持続的な活動にするためには、お金を頂きながら活動を継続できる仕組みが必要だと考えました。そこで、「仕事として保護猫の活動に取り組もう」と考えて、2014年にNPO法人を設立。盛岡市の中心部に保護猫と触れ合える猫カフェをオープン。カフェにいらっしゃる方から入場料を頂き、そこで頂いたお金を保護猫の活動のために使う形を考えました。

※犬猫の殺処分

全国の犬猫の殺処分数は減少傾向にあるが、2020年度の殺処分数は24000匹となっている。保護や譲渡によって殺処分を減らす取り組みが進められているものの、殺処分されてしまう「いのち」があるのが現状だ。

◆環境省HP「動物の愛護と適切な管理」

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

ねこにとって幸せな場づくり

 猫カフェはビルの2階と5階にあり、2階、5階それぞれに30匹、合計60匹のねこがいます。このねこたちは全て、保健所で保護されたり、飼い主が飼えなくなったりして私たちが引き取った猫です。2階のカフェには、ねこは高いところが好きなので、上下運動ができるスペースを設置し、ねこがゆっくりと隠れるスペースを用意しています。また、衛生面には気を付けていて、午前中3時間かけて、カフェの掃除や消毒を行っています。このカフェで一般の方がねこと触れ合えるようにしています。親子連れや高校生・大学生などいろいろな世代の方が訪れてくださいます。

 ここにいるねこは、飼い主がいなかったり、行き場がなかったりして保護された猫たちです。私たちは2022年度までに約800匹のねこを受け入れることができました。また、ここを「卒業」し、ねこを飼いたいという新しい家族のもとで暮らすねこも年間100匹ほどいます。

 5階はFIV(猫エイズ)を持っているねこが過ごしている場です。ここでも、一般の方がねこと一緒に過ごしたり遊んだりできるようにしています。FIVを持ったねこは保健所では殺処分の対象になってしまう可能性が高いです。ただ、FIVは人にうつる病気ではありません。FIVを持っていたからと言って、触れ合ってみると実際のねことは変わりませんし、かわいらしいです。実際にFIVを持つねこを引き取っていただける飼い主さんから、「飼ってみたら病気が気になりませんよ」というお声を頂くこともあります。

 また、高齢や病気を持つねこについては「しっぽのおうち」という場所で特別なケアをしています。人間で例えると、高齢者向けの介護施設のような場所です。ゆっくりと落ち着いた環境で最期まで過ごすことができるようにしています。また、こういったねこと一緒に暮らしていただけるボランティアの方を募集していて、ねこの飼育に必要なものはもりねこが負担し、困ったときにはいつでも相談していただけるようにしています。ご高齢で、なかなか新しい猫を飼えないという方々にボランティアに参加していただいています。縁あって引き取ったねこになるので、ねこにとって幸せな環境で最期まで暮らしてほしいなと考えています。

「多頭飼育崩壊」の現状打破へ

 最近はねこの「多頭飼育崩壊」ということがニュースなどでも取り上げられています。ねこは繁殖力が強く、1回で4~8匹ほどの子供を産みます。その子供は半年くらい経つとまた子どもを生めるようになるので、1匹のねこが2年で80匹に増えることになります。そのため、ねこを去勢せずに放し飼いにしていると繁殖が進んでねこの数が一気に増えてしまいます。放し飼いにしてしまうと、他のねこと接することで繁殖が進んでしまう可能性が高まります。しかし、「ねずみをつかまえてくれるから」などの理由で外に放し飼いになっているケースがあります。

 こうして繁殖が進んでしまうと、飼い主の経済的な負担が増えてえさを与えられなくなり、ねこにとっては衛生的に課題がある環境で過ごさないといけなくなります。実際に、飼い主の方が高齢になってしまい、ご病気や入院をして、私たちに「ねこを引き取ってほしい」という要望を頂くこともあります。このねこたちを救う「レスキュー」活動を行い、猫カフェで保護をしています。私たちが引き取れる数よりも「何とかしてほしい」という要望が多いのが現状です。

 このような「多頭飼育崩壊」を防ぐためには、適正な数を室内で飼育すること、ねこへの不妊・去勢手術をすることが大事です。私たちのメンバーには獣医がおり、引き取ったねこには不妊去勢手術を行ったうえで別の飼い主さんに譲渡をしています。昨年10月にクラウドファンディングなどで寄付を集めて、不妊去勢手術を専門に行える動物病院を開設しました。

ねこも人も、幸せになるために

 動物にはいのちがあります。動物にかかわるということは、とても責任があることだと思います。例えば野良猫にえさをあげたら、どうなるのか。1回えさをあげたことをきっかけにどんどん増えるかもしれません。かわいそう、という思いだけで、ねこを救うことはできません。本当にやらなければいけないのは、最後まで責任を持って関わるということなのです。

 また、野良猫や「多頭飼育崩壊」が地域トラブルの原因になったり、地域の民生委員さんが「多頭飼育崩壊」について発見したりもします。地域の方々はねこについて詳しいわけでもないので私たちが色々なところと連携をしながら地域全体で取り組んでいく必要があると考えています。

 目指しているのは「ねこもひとも。しあわせな社会」。ねこはねこだけで不幸になるわけではありません。ねこを取り巻く人間のかかわりのせいで、殺処分につながってしまうのです。大切なのは人間のかかわり。人間がどうかかわるか?を皆さんに考えて頂きながら、ねこもひとも一緒に幸せになれる道を探していきたいです。

おすすめの本 
ロン・クラーク「ムーブ ユア バス」(SBクリエイティブ)

組織の連携を「バス」に例えた一冊。そのバスはタイヤではなく、みんなで足を動かして、ゴールを目指していると例えている。「バスの中のこと」ではなく、「何のためにバスの中にいるか?」を考えるきっかけになります。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=工藤さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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