ヘリコプターの機動力を、医療に活かす

福島県会津若松市の航空会社JFSにおいて経営マネジメントを行いつつ安全統括官として現地でも活動されている古田和人さん。

医療現場でのヘリコプターの可能性を探っていった古田さんの活動を是非お読みください。

目次

経験を活かす

私は、福島県会津若松市出身で、地元の高校を出てから東京にある福祉の学校へ進学しました。

卒業後は会津に戻り、特別養護老人ホームでソーシャルワーカーとして勤務していました。社会福祉法人から一般財団法人へ移籍後は会津中央病院の方で医療福祉系の立ち上げ事業を行っていましたが、病院が航空会社を持つことになったことを機に航空業界へ転身しました。

現在は航空会社「ジャパンフライトサービス」代表取締役社長として経営マネジメントを行いつつ、安全統括官としても活動しています。

医療福祉の業界から航空業界への転身は、知識も無く不安でした。

その中で自分は何ができるのか、と考えた時、今までの(医療福祉の)経験があるじゃないかと気づきました。ヘリコプターの起動力を医療福祉の現場に役立てないかと考えたのです。医療福祉の現場経験から、遠方からいらっしゃる利用者さんが、数時間も車で揺られて、施設まで来ていたことをしていたことを知っていたので、ヘリコプターを利用して利用者さんの負担を減らせるのでないかと思いました。しかし、実現には至りませんでした。

 その理由が興味深いのです。我々は移動の負担を考えていましたが、利用者の方からしてみると、病院に行くという事には「出かけられる楽しみ」もあったんです。帰りにどこかに寄ったり、それが楽しみなんだと知った時に、それを取り上げてしまってはいけないなと思いました。医療福祉の現場の経験からするとやはりヘリコプターの機動力というのはポテンシャルをもっているということで、もっと広げて考えてみようと、別の道を探しました。

ヘリコプターを使って

そこで、病院から離れた場所での救急に重きを置いて考えたんです。病院から離れた場所での救急が発生した場合、119番でまず地域の救急隊員が救急車で駆けつけます。今までは、この救急車に患者さんを乗せて運び、病院からは医師と看護師を乗せたドクターカーが向かって、救急車からドクターカーへ患者さんを受け渡す流れでした。

これが、ヘリコプターを使うことで、救急隊員が駆けつけた段階でいち早く医者に見せた方が良いという判断になれば、救急隊員から要請がかかって医師と看護師を乗せたヘリコプターが現場に急行し、医師が一緒に救急車に乗り込む。この段階で医師が初期治療を行いながら病院へ向かう形です。この方が、ドクターカーで向かうよりも早く患者さんの治療ができる可能性が生まれ、1人でも多くの命を救うことができるようになります。

私たちは会津若松市の病院と連携してヘリコプターを出動させています。その病院は会津地方唯一の救急救命医が常駐する医療機関で、年間約360回のドクターカーの出動があります。只見、桧枝岐というところにもドクターカーを出動させることがありますが、病院から約100キロ離れているので、夏でも3時間。冬だと3時間半〜4時間かかります。そこで会津地方に40箇所のヘリコプターの発着場を整備し、ヘリコプターで救急救命医がすぐに患者さんのもとに向かう態勢を整えました。

現在は医療だけでなく観光業へもひろく展開しており、「観光遊覧」も実施しています。観光遊覧による収益の一部を、医療活動に回しています。

 (下の写真はメディカルメンバーのみなさん)

リアルなつながりを大事に

地域の課題の一番は、地元から若者が出て行ってしまう事じゃないでしょうか。いろいろな要因があるとは思いますが、若者から見て、福島はいまひとつ魅力に欠けてしまっているんじゃないか、とは思います。

魅力が無い訳ではなく、我々大人がその魅力を伝え切れていないのが原因ではないかと感じています。

大人も若者も、お互い交流できる場に固くならないで、関わっていくべきではないでしょうか。

関わり合う事で、大人と若い子たちの間につながりが出来れば、たとえ一度はどこかへ行ったとしても、地元を「帰ってくる場所だ」と思ってもらえるはずです。

そういう関係性を築いていくのが、我々大人の仕事だと考えています。

そしてそれが、若者の地元離れの解決の一つになるのであれば、やっていく意味はあるのではないでしょうか。

自分の働きたい場所や行きたい場所があるなら、地元を出ていくことは悪いことではありません。それより忘れない事が大事だと思います。いつでも帰って来られる場所が自分にはあるんだと思っていてくれれば。

私自身も、地元にある会津大学の学生たちと普段から積極的に交流を図っていて、今でもその交流が続いています。先日も、全国に散らばっていった関わりのある学生たちが、会津に集まってくれまして、その時、なんで会津に来るかって『古田さんたちがいるから会津に来た』って言ってくれたんです。嬉しかったですよ。

人とのつながりが希薄になってしまいがちな時代だとは思います。

でも逆に、リアルじゃないつながりというものも大切だと、コロナ禍の三年で知ることができました。このつながりもきっと色々なもののキーになっていくのかなって思います。

将来の目標設定は、早ければ早いほうがいいと思います。今はやりたい事がやれる時代だと思うので。その目標をどうやって見つけるのかについては、今はいろいろな調べ方があるんだけれども、自分の地元っていうものに目を向けてみるのも一つかもしれないと思います。僕も一度は東京に憧れた身ではあるけれど、今は地元が大好きで、もっと早く魅力に気づいていれば、「また違った人生を歩んでいたかもしれない」と思う時があります。

地域行事に参加してみたり、地域づくりに飛び込んでみて、自分の地元を知ってみてください。

今はすごく情報社会で、インターネットを通じて人とも繋がれる時代です。でもだからこそ、リアルなつながりをすごく大事にしてください。会いたい人に会いにいって、話す。これがすごく重要だと思います。それから、今の友達を大事にしてください。当然ご両親、家族も大事にするんだけれど、今の友達と、これからの出会いっていうものを大事にして欲しい。そういったつながりが一番の宝物になります。

目標を高く持って、やりたい事の実現のために、友達と、思いっきりやってみてください。

ちょっと疲れたら、君たちには帰って来られる故郷があります。

 (写真は古田さんが関わった大学生のみなさん)

おすすめの本
フロレンス・ナイチンゲール 小玉香津子・尾田葉子 訳「看護覚え書き」(日本看護協会出版会)

ナイチンゲールによって一世紀以上も前に書かれ、現在も看護の思想の原点となっている本です。
看護について学べるだけでなく、ここに記されている、看護のもっと根底にある考え方などが非常に面白いです。看護師を目指せとかそういうことではなく、目指してない人でも、根本にある考え方は他用できるのではないかなと思います。もちろんこの本を通じて看護や医療に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=古田さん

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この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

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