森林と動物の生態を知る

尚絅学院大学で森林水文学や森林生態学を研究し、キャンパス近くの里山の整備にも関わっている鳥羽妙先生。「森林」や「動物」について研究する楽しさについて聞いてみました。

目次

◆研究のきっかけ

子どものころから自然や動物が好きで、東京の家では金魚、カメ、ニワトリ、リス、ウサギなどいろいろな動物を飼っていました。東京でしたが周りには雑木林や自然もたくさんあるような環境で、動物を取り上げたテレビ番組もよく見ていました。大学からは岩手県に進学して、そこで恩師と出会い、「水文学(すいもんがく)」という学問を知り、研究していました。これは森に降った雨がどこに行くか?を考える学問です。この「森に降った雨」というのが、見えそうで見えない現象なんです。それを考える面白さがあります。

森に降った雨は、地面に浸透したり、蒸発したりします。でもそんなにシンプルではなくて、葉っぱについた水や、木の幹を流れ落ちる水もある。雨を受け止める木の大きさや量、種類によっても、雨の降り方によっても「雨がどこに行くか?」は変わってきます。これを主に物理の知識を使って解いていきます。研究室で計算式を使って水の動きを再現するモデルを考えるだけではなく実際の森林の現場を歩きまわって調査をし、水の行方を考えていました。

◆どんな研究をしているか

現在は主に森林生態学を研究しています。尚絅学院大学は小高い山の上にあり、大学の校舎の裏側には自然豊かな森林「尚絅の森」が広がっています。2016年から、学生や地域住民の方たちとともに「里山再生プロジェクト」という活動を行っています。

里山とは人間が暮らしているところに近い森林のことです。私たちは大学そばにある森林の手入れを月1回のペースで進めています。やぶになってしまったところを刈り払い、枯れた木を切り、切った木で薪や椅子を作ったりしています。また草刈りにはヤギも活躍しています。このヤギのふんを堆肥にして畑にまき、野菜を作ることにも挑戦しており、自然の恵みを享受する形にできないかと考えています。

なぜ里山を手入れしているかというと、この里山が手入れされなくなると様々な問題が起こってしまうからです。例えば、人間が暮らしている地域に簡単に動物が近づけるようになる。多くの動物には「身を隠したい」という習性がありますが、手入れをしていない森には草木が生い茂り、簡単に隠れることが出来ます。すると畑のすぐ近くまで来やすくなって、結果として畑を荒らされるという問題が起きてしまいます。また、「ナラ枯れ」など森の衰退にもつながってしまい、山の保水力が低下して土砂崩れにつながる恐れもあります。

私はこの尚絅の森のうち11か所にカメラをつけて動物の観察を行っています。カメラには赤外線のセンサーがついていて、温度を感知すると自動的に動画を撮影してくれます。

動画には様々な動物が写り込みます。例えば、イノシシの子ども(うりぼう)がエサを探したり遊んだりしている様子が見られました。

他にも、ニホンカモシカやアナグマ、タヌキやキツネなどいろいろな動物の姿をとらえることができました。この研究としては、里山を手入れすることで動物の生態がどう変わるか?を解き明かしていきたいと考えています。幸い、歩いて3分の里山がフィールドなので、通常の授業中にも学生と一緒に散策や調査ができるのもいいところだと考えています。

◆未来へ向けて・高校生へのメッセージ

 動物の生態は興味深いです。例えばリス。木の実ばかり食べていると思いきや、虫や死んだ動物の肉も食べる。逆に肉食と思われがちなクマは植物性の物を好みます。川でサケを手で払いのけて捕まえているイメージがあるかもしれませんが、あのクマは北海道にいるヒグマです。本州にいるツキノワグマの行動は違って、魚や獣を襲って食べるというより、木に登ってブナなどの木の実をポリポリ食べたり、山菜を食べたりしていることの方が多いのです。

 動物の世界は「わからない」から面白いです。動物に聞ければいいのですが、聞けないですよね。動物の動きは観察してわかりますが、なぜ動物がそこにいるか?はわからない。でも、わからないことを考えることこそに面白さがあると思います。誰も知らないことが自分にはわかる!自分が発見した!となったらちょっとうれしい。これはあぁなんじゃないか、こうなんじゃないかと考え、当たったら「やったね!」となるし、さらに次の疑問も出て来る。外れたら「なんで?どうして?」と考えることになります。これは永遠に続くわけですが、ほとんど外れる中でまれに当たりが出る「くじ引き」のような感覚に近いでしょうか。大きく違うところは自分の「がんばり」次第であたりを引き寄せる確率が格段に上がることです。

 動物でもまだまだ分かっていないことがあるので、動物が好きな方は身近にいる動物のことをぜひ調べてみてください。例えば、ネズミの仲間で「カヤネズミ」という日本一小さなネズミがいます。国内の分布では宮城県が一番北の生息地とされています。通常は草地に生息しているのですが、この前はなぜか、森にいるのを見つけました。

先日もタヌキが数匹集まって森の中で遊んでいたんです。まるでアニメに描かれているように、集まって遊んでいた。なぜそうしているのか?はわからない。あと街中でも見かけるネコの生態もよくわかっていないところがあります。ぜひみなさんにも動物を調べる面白さを感じてほしいと思っています。

探究テーマを広げる問い

「里山」についてあなたが調べてみたいことは何ですか?3つ以上あげてみよう。

◆おすすめの本

カラスの教科書(松原始)

研究者の「観察」を垣間見ることが出来ることと、何より身近な生きものでも知らないことだらけだと実感できるから。

映像提供:鳥羽先生

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