問いづくりのポイント1 問いづくりに必要な4つの要素


アメリカの哲学者J.デューイは著書「思考の方法」において,「今,世の中で起きていることを考えることで新しい未来を選択できる」と述べられています。現在、探究学習の必要性が重要視されています。その探究学習の核になるものとして3つのものが挙げられると考えています。それは、①問いをつくること、②リフレクション、③フィードバックになります。今回から約10回にわたり、私の学校現場での実践を通し、問いをつくることの重要性についてと、その方法をご紹介させて頂きます。まず1回目はQFT(Question Formulation Technique)をベースにして考えていきたいと思います。

目次

問いづくりに必要な4つの要素

まず、問いをつくるために必要な4つの要素について紹介させて頂きたいと思います。

【問いをつくるために必要な4つの要素】
①5W1Hを活用する。 
 5W 1Hを利用すると,同じものを題材にしても問いの視点が異なってきます。
②問いを修飾する。 
 問いを修飾することで,作成した問いの視点を広げたり,狭めたりすることができます。
③問いを転換する。
 問いを転換することで,問いに込められた前提条件や情報等を確認することができます。
④問いを軸で考える。(第2回目で考えていきます。)
 時間軸や自分軸などで問いを創ると問いの対比をすることができる。

5W1Hを活用する

それでは、まず、最初に5W1Hを活用した問いづくりについて、事例として「スマートフォン」を題材として考えていきたいと思います。皆さんは、事例に合わせて自分の興味・関心のあるものを題材と一緒に考えてみてください。きっと、自分の思考の幅が広がると思います。

皆さんが今回の問いづくりのテーマとして選んだ自分の興味・関心のテーマを決めてみよう。ここで大切なのは、「学校の授業だから」とか「受験や就職で使うから」という視点では選ばないでください。皆さんが好きな学習の内容や趣味のこと、日常の疑問でも構いません。

私の問いづくりのテーマ=(                        )

5W1H問いの事例皆さんの考えた問い
When(いつ)いつスマートフォンが開発されたの?
Who(誰)誰がスマートフォンを考えたの?
Where(どこで)どこでスマートフォンをが購入したの?
What(何)何がスマートフォンの魅力なの?
How(どのように)どのようにスマートフォンが製造されているの?
Why(なぜ)なぜ、A社やG社はスマートフォンを考えたのか?

どうでしょうか?疑問詞を変えただけで、皆さんの考えたテーマの視野が広まったと感じませんか?これは各教科・科目や総合的な探究の時間で行われている「探究」という学習の基礎基本になります。

問いを修飾する

それでは次に、皆さんが考えた問いを修飾して、問いの精度を上げてみましょう!STEP1で皆さんが作成した問いを修飾していくとどのように変化していくのかを体験してみましょう!

作成した問いの事例(上段)
修飾した問いの事例(下段)
いつスマートフォンが開発されたの?
日本では,いつスマートフォンが開発されたの?
どこでスマートフォンは購入したの?
あなたはスマートフォンはどこで購入したの?
誰がスマートフォンを考えたの?
誰がどのような理由でスマートフォンを考えたの?
何がスマートフォンの魅力なの?
スマートフォンのアプリの中で何が魅力に感じているの?
どのようにスマートフォンは製造されているの?
日本では,どのようにスマートフォンを製造しているか?
なぜ,A社やG社はスマートフォンを考えたのか?
なぜ,このA社やG社でスマートフォンを考案したの?

STEP1で作成した問いを修飾するだけで、問いが深化したと感じませんか?このことを考えるスキルが身に付けられたら、きっと皆さんの学習の視野が大きくなると確信しています。皆さんが学習をしていて分からないことが出てきた時に、何が分からないかを考え、考えた問いを修飾してみるとより具体の内容が見えてくるはずです。

問いを転換する

問いの転換とは,「オープン・クエスチョン(以下:O Q)」と「クローズド・クエスチョン(以下:CQ)」を転換させることを言います。OQは,「開かれた問い」を意味しており,答えが複数ある問いを指します。その逆にCQは,「閉ざされた問い」を意味しており,答えが一つしかありません。それでは、STEP2の内容をもとに問いを転換させていきましょう!

修飾した問いの事例(上段)
問いを転換した事例(下段)
日本では,いつスマートフォンが開発されたの?(CQ)
2008年に日本でスマートフォンが発売された理由は何か?(OQ)
あなたはスマートフォンはどこで購入したの?(CQ)
○○ショップでスマートフォンを購入した理由は?(OQ)
誰がどのような理由でスマートフォンを考えたの?(OQ)
スマートフォンを考えたのは社会を便利にしたいと考えた技術者たちですか?(CQ)
スマートフォンのアプリの中で何が魅力に感じているの?(OQ)
スマートフォンのアプリの中で魅力的なアプリの名前は?(CQ)
日本では,どのようにスマートフォンを製造しているか?(OQ)
日本でのはスマートフォンの製造は電機メーカーが提携して行っていますか?(CQ)
なぜ,このA社やG社でスマートフォンを考案したの?(OQ)
A社やG社がスマートフォンを考案した本当の理由はなんですか?(CQ)

問いを軸で考える

第2回目で詳しく解説していきます。

まとめ

問いを転換するということは,皆さんが作成した問いの前提とした条件や多くの情報を再確認できることになります。問いを修飾したり、問いを転換するということは、「具体と抽象」の世界を行き来することに繋がります。この話はまたいつかの機会に書いていければと考えています。

問いをつくることは単に疑問文を作れば良いということを考えている人が多いのではないかと思います。今回、皆さんに体験していただいたように問いをつくることは、自分の思考の幅を大きくしたり、狭めたりすることに繋がります。次回は問いを「軸」で考えるということにチャレンジしていきたいと考えています。

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この記事を書いた人

宮城県の公立高校教員として23年間勤務したのち、2024年4月より宇都宮海星学園星の杜中学校・高等学校で勤務。

指導の核としてパブリック・リレーションズの考えをもとに生徒たちに「生きやすさ」を考える授業の展開を心がけている。経済産業省「未来の教室」アイディアソンやJICA主催公開セミナーにて事例発表等にも選出された。また、探究関係の教材開発協力や授業づくりで多くの学校で講演を行っている。地理歴史・公民科教諭。

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