問いづくりのポイント4 社会と学校の架け橋としての学び

 今回は、探究学習で核になるとされる自己探究について考えていきたいと思います。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編において、探究について次のような記述があります。それは、「総合的な探究の時間は、自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していく」という記述です。冒頭に記載されている「自己」とは何だろうか考えたことはありますか?普段、私たちは何気ない日常生活の中で自分という存在を表に出して生活しています。今回は抽象度が高くなりますが、自己探究について考えていきたいと思います。それではまず最初にライフ・チャートを描いてみましょう!ライフ・チャートとは、自分自身の今までの人生を振り返り、体験したことを思い出し、人生の良かったことや悲しかったことを描いたものです。これを行うと、自分自身がどのような価値観を持った人間であることを知ることができるものです。

目次

STEP1  ライフ・チャートを描いてみよう

  今までの人生を振り返り、良かったことを縦軸の+(プラス)方向に曲線を描き、悲しかったことを縦軸の−(マイナス)方向に曲線を描いて下さい。また、横軸は皆さんの年齢です。

どの年齢の時に、どのような出来事があったのかをメモしながら描いて下さい。

 それでは作成したライフ・チャートを見て自分の価値観を整理してみましょう。

ライフ・チャートどのような出来事が起きた?その時どう思った?
どんな時に+(プラス) になった?  
どんな時に−(マイナス) になった?  

さて、ライフ・チャートを行っていただきましたが、もしかしたら、なかなか自分自身が見えてきていない人もいるかも知れません。もしかしたら、抽象度が高く、自分自身の具体の姿が見えてきていないかも知れません。そのような時はどうするのか?第3回目まで学んできた「問い」を作ることで自分自身を深化させていきましょう。

STEP2 自己を深化させていくための問い(抽象から具体へ)

 ライフ・チャートを見て、次の問いについて考えてみて下さい。

ライフ・チャートからの問い自分の答え
ライフチャートが±に振れる時って、自分にとって「いつ」なんだろう? 
ライフチャートが±に振れる時って「誰」かの影響を受けたのだろうか? 
ライフチャートが±に振れる時って、「どこ」で触れたんだろうか? 
ライフチャートが±に振れる時って「何」が原因だったんだろう? 
ライフチャートが±に振れる時って、「どのような」ことを行なったんだろうか? 

問いの力を使って自分を深める体験はどうでしたか?自分自身がどのような人間か、具体が見えてきたところで、次は具体から抽象度を少し高めていくことを考えてみましょう。自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を見つけ、解決していくために必要なものは「メタ認知能力」です。メタ認知能力を高めるためにリン・エリクソンらが唱えた概念型カリキュラムと指導(CBCI)をもとに考えていきたい。

STEP3 自分自身の価値観を考えてみよう。

STEP2で考えたことをもとにトピックを作成してみよう。トピックとは、ワードとワードを結びつけて考えた短文のことです。

           

STEP4 自分自身で考えたトピックを概念化(コンセプト化)してみよう。

※ 概念とは、短い語句で、抽象的で、時を超えるものです。

例)価値・システム・積極・明朗などです。

             

概念を考えられるということは自分自身の強みが分かることになります。自分自身の強みが分かれば、その概念を多くのことに派生させていくことができるはずです。例えば、「価値」という概念が自分に備わっていたら、皆さん自身が行動していくことに多くの価値を与えていくことができるんだという自分の長所を理解したことに繋がります。それでは、自分自身の長所をもとに自分の身の回りの問題とその解決方法について考えていきたいと思います。

STEP5 自分自身の半径10m以内(家族・学校・地域など)の中で起きていることで「問題」だと感じていることは何ですか?

         

STEP6 STEP5の問題を解決する取組として、皆さん自身が行った方が良いと思うことを考えてみてください。

           

STEP7 10m以内の問題が解決された状態と今の問題の姿を考え、そのギャップが課題になります。その課題は、皆さんが行うどのような学習と関係ありますか?

         

ここまで考えたら、自分自身の経験から自分の行いたいことに向けてかなり深く考えられたのではないでしょうか?自分自身を探究するということは、普段考えもしない領域について自分で思考することになります。言い換えると、メタ認知力が高まってくることになります。
 もし、高校生である皆さんが、大学への進学を考え文系理系 を選択する時は、皆さんが考えた問題の解決方法とそれと関連する学びの中で優先順位が高いベスト3を答え、自分が文系向きか、理系向きか、文理横断であるかを考えてみて下さい。それでは、いつものリフレクションを行います。

※文章でなくても構いません。文章が苦手なら、単語でも絵でも何でも構いません。自由に思いつくまま書いてください。
1 今回の学びで皆さん自身が発見したことを考えてください。


2 今回の学びで皆さんが一番印象に残るくらい新しく発見したことは何ですか?


3 2の時、皆さんはどのようなことを思いましたか?


4 今回、学んだことを皆さんはどのように今後に活かしていきたいですか?


参考文献 

H・リン・エリクソン他2名 著

「思考する教室をつくる 概念型カリキュラムの理論と実践」(北大路書房)

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編(文部科学省)

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この記事を書いた人

宮城県の公立高校教員として23年間勤務したのち、2024年4月より宇都宮海星学園星の杜中学校・高等学校で勤務。

指導の核としてパブリック・リレーションズの考えをもとに生徒たちに「生きやすさ」を考える授業の展開を心がけている。経済産業省「未来の教室」アイディアソンやJICA主催公開セミナーにて事例発表等にも選出された。また、探究関係の教材開発協力や授業づくりで多くの学校で講演を行っている。地理歴史・公民科教諭。

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