福島県喜多方市でNPO法人「かけはし」を経営し、小学生対象の自然体験キャンプや、中学生対象のオンライン家庭教師事業を行う石島来太さん。「幸せになるために学ぶ」という石島さんのストーリーをぜひお読みください。
1人1人が幸せになる
私はもともと長野県上田市出身で、福島大学へ進学するのを機に初めて福島県に来ました。大学在学時に東日本大震災が起こり、福島県の震災ボランティアや復興イベントに携わるうちに「福島で起業をしたい」という気持ちが芽生えたのです。起業をするにあたり、雇われる側の気持ちも知る必要があると考え、大学卒業後は一般企業に1年半ほど勤めました。その時に喜多方市で「まちづくり喜多方」というNPO法人の代表を務めていた方に声をかけて頂き、喜多方市に移住したのが私の現在の活動の原点です。
「まちづくり喜多方」では自然体験キャンプの運営に携わり、単なる学力のための学びではなく、学びの環境や新しい情報が入ってくる仕組みづくりなども重要だと実感しました。地域がよくなるためには、1人1人が幸せになることがとても大事であることを活動を通して学びました。そのためには、1人1人が幸せを定義して生き方を考える必要があり、また自分なりの幸せを定義するために「学び」が大切だと感じました。
やりがいがあり、とても充実した日々を過ごしていましたが、私が携わり始めてから1年半ほどで「まちづくり喜多方」はなくなってしまいました。その後私は個人事業主として仕事をするようになりましたが、「まちづくり喜多方」で行っていた自然体験キャンプに繰り返し参加してくれた子どもたちが多数いたこと、私自身キャンプを通して沢山の収穫があったことから、「この事業を途切れさせてはいけない」と思い私の事業として引き継ぐことにしました。
そして私が個人事業主として活動していたころから行っていた中学生対象の家庭教師事業も併せて、NPO法人「かけはし」を設立しました。
子供たちの主体性を養う
NPO法人「かけはし」では、主に小学生対象の自然体験キャンプと中学生対象のオンライン家庭教師事業を行っています。自然体験キャンプ「喜多方スマイリングキャンプ」は、開始から5年が経ち、今まで延べ500名以上の小学生が参加してくれました。このキャンプは、小学生の主体性を養うために親のご参加はNGで、春夏秋冬それぞれの季節に合わせた企画を用意して1泊2日自然を満喫してもらう企画です。親がいない分、小学生同士が互いに協力し合い、主体性を培いながら楽しむことができる環境です。
運営側には私と、ボランティアスタッフを配置し、小学生の学びがより安全に、より濃密になるようサポートしています。しかし、キャンプを運営する中で、やはりなかなか参加者の数が思うように集まらない時期もありました。定員20名に対し、参加者が2名しかいない時もありましたが、そんな時は普段よりも近い距離で小学生と接することができ、家族のような時間を過ごせてよかったというのも1つの発見でしたね。参加者の数にこだわらず、来てくれる小学生1人1人の学びを最優先して運営した結果、ありがたいことにリピーターが沢山生まれ、今日では予約が殺到する大人気企画となっています。
家庭教師事業は、個人事業主のころは新型コロナウイルスが流行する前だったため、オフラインで教えていましたが、コロナ禍以降はオンラインに統一して「つなぐ」という事業名で運営しています。オフラインからオンラインに切り替えた当初は、直接生徒が勉強している姿を見られない分、教え方に戸惑うことも多々ありました。また、「つなぐ」では5教科を1:1~1:3(講師:生徒)で教えているのですが、オフラインの講義と異なり生徒同士のコミュニケーションをとるのが難しいとも感じました。しかし、懸念点ばかりではありません。オンラインにしたことで、オフラインの時はつながることが厳しかった県外の生徒も多く受講してくれています。県内向けには折り込みチラシで広報したことがありますが、県外の生徒は皆私達のSNSやホームページでの発信を見て受講を決めてくれています。遠いところだと、大阪府や高知県の生徒も受講してくれていて、オンラインだからこそ繋がれた縁を大切にしたいととても思います。NPO法人「かけはし」ではこの2つの事業のほかに、「かけはしスペース」という喜多方市のコワーキングスペースの運営や、喜多方市の事業者とコラボしたクリエイティブ事業でまちづくりに励んでいます。
私は「かけはし」に関わる子供たち全員が「幸せ」に生きる社会を実現したいと考えています。「幸せ」の定義は人それぞれ異なりますし、他の人に強要されるものでも、強要するものでも決してありません。学びは、「幸せ」の定義を見つけ出すためにあります。学んだ先に1人1人が自分なりの「幸せ」の定義を見出して、「幸せ」になるためにまっすぐ生きていってほしいと強く思います。
「あるがままの自分を受け入れる」
「あるがままの自分を受け入れる」ことが何より大切だと思います。私も事業の運営で、何度も後悔したことがあります。しかし、後悔しても結果は何も変わらず、かえって自分のストレスになったり、自己嫌悪に陥ったりしてしまうだけなので、失敗しても時間が解決してくれると信じて「しょうがない」と自分で後悔の気持ちに区切りをつけるのも大切です。
学生のうちに、何かのイベントやプロジェクトの運営側に回ってみると将来とても大きな財産になります。参加する側からは見えない、運営側の苦労や努力を経て物事の中心に立つ経験をぜひしてみてください。こうした運営や学業、部活動、趣味など、何かに本気で何かに取り組んだ経験は将来必ずあなたの糧になります。
最後に、私からお伝えしたいのは、「人生って楽しいよ」ということです。自分で自分を楽しませられる、HAPPYにさせられる大人になりましょう!
(本の情報:国立国会図書館サーチ)
写真提供=石島さん