地域の米をブランドに-「いざ初陣」誕生物語-

宮城県南部、福島県との県境に位置する丸森町。町内を阿武隈川(あぶくまがわ)が流れ、流域一帯に穀倉地帯が広がります。また、阿武隈山地に囲まれた盆地状の町であることから、昼夜の温度差があり、美味しいお米作りに適した環境にあります。

その丸森町の美味しいお米をブランド化するプロジェクトが2018年にスタートしました。実は丸森町は歴史的にもお米作りと深いかかわりがあります。丸森町は「愛国」という品種の発祥の地とされ、それが「コシヒカリ」の祖先になったといわれています。

お米作りにはある品種と別の品種を掛け合わせる「品種改良」が欠かせません。「品種改良」によって、美味しく、冷害や害虫にも強いお米が作られるのです。「愛国」はその先祖として、多くのお米に影響を与えたお米なんですね。きれいな水と緑に囲まれた丸森の田んぼで、丸森町の米農家さんたちがこだわりぬいて育てたコシヒカリを「ブランド米」として全国に売り出すことになりました。

丸森町にある企業が、商品開発や販売を担当しました。まずは、町民の方に愛着を持ってもらおうと、お米の愛称を町民の方から募集しました。地域の夏祭りなどでも募集した結果、「いざ初陣」という名前に決まりました。これは歴史にちなんでいて、戦国時代の武将・伊達政宗が丸森町で最初に戦った地ということに由来します。初めて戦いに出ることを「初陣」と言うのです。

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「いざ初陣」を広める

次に、お米を入れるパッケージには、丸森の「M」をイメージした「軍配」の姿を浮かび上がらせました。また、ローマ字で大きく「MARUMORI」と入れるなど、丸森町を全国にアピールできるようにしました。パッケージは真空パッケージになっており、美味しさを長く持続させることができます。

販売についても一工夫しました。「ブランド米」の値段は、お米がおいしい分少し高めになっています。なので、普段家で食べるためというよりも、「プレゼント」として送ってもらえるようにしました。売る場所もスーパーマーケットよりもデパートなどを重視し、インターネット販売を使って、全国の方に買ってもらえる仕組みを作りました。インターネットの販売サイトには、お米を作った農家さんの思いを載せました。

また、商品を購入した方から、「子どもの受験の合格祈願のために買いました」という言葉を頂きました。ここから、「いざ初陣」を合格祈願米として売り出すプロジェクトもスタートをしています。「いざ初陣」を丸森町内の神社にもっていき、合格祈願として祈祷していただきました。 使用されているお米は検査の基準をすべて「合格」したお米ということにちなんでいます。 

ここまでの商品開発について「課題解決」のステップに基づき、まとめてみると下記のようになります。まずは①丸森町の自然や歴史を知り、②商品を作り、③商品の名前を決め④売り方を決める流れでした。

「新しい一歩を応援する特別なごはん」、「いざ初陣」はこうして誕生したのです。

[ 課題解決のステップ(商品開発)]

☆キーワード ブランド

「ブランド」とは何だろう。辞書で調べてみると「自社の製品と他社の製品を区別させることを意図してつけられた名称・シンボル」という言葉がある。実は「区別させる」ということが重要。高級品は一般的な製品より高いから、「ブランドもの」と言われたりする。一般的なお米と違う特徴があるからこそ「ブランド米」となるわけだ。

 

◆おすすめの本
高野誠鮮「ローマ法王に米を食べさせた男」(講談社)
石川県羽咋市の公務員・高野さんが地域活性化の実践をまとめた一冊。限界集落に合った「神子原米」とい米の名前に着目し、ローマ法王に手紙を書いて本当にお米を献上してしまうというストーリー。高野さんの行動力と発想力に驚く一冊。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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