問いづくりのポイント9 社会と学校の架け橋としての学び

 前回は中間発表に関することを確認しました。今回は、いよいよ探究の核ともいえる「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題」について、自己のキャリアとの関連付けを考えていきたいと思います。問いから自分のプロジェクトを立てることは自分自身のこれからどのように前に進んでいくかを考えることに繋がります。ハーバード・ビジネススクールのあるエピソードがあります。東日本大震災後に宮城県女川町では多くの復興に伴う事業が起こっていったようです。そのことを学 びに,アメリカのハーバード大学ビジネススクール(日本でいう大学院)の学生が,女川町をフィール ドワークし,自分自身の問いから地元の方とプロジェクトを考えるということを行っていました。遠くアメリカ合衆国の地から震災後の復興から問いを見つける学びを通して、「マイ・プロジェクト」を考えていたと言われています。

 それでは、総合的な探究の時間の学びの位置づけを考えてみましょう。次の図は、高等学校学習指導要領総合的な探究の時間解説からの抜粋です。これから「自分を起点」に探究することの意義を考えてみたいと思います。

自分自身が起点となる意義って何?   

1 やらされ感の行動でなく,自分自身が中心となってアクションすることができる。   

2 自分が社会の一員として,多くのステークホルダーと出会い,行動することができる。   

3 自分で困難な状態を打破していくスキルや思考が身に付き,自分の行動に「オーナーシップ」が持てる。

ある大学では,地方自治体の問題をフランス文学を活用して課題を解決しようとするゼミも開催されているという話を聞いたことがあります。今現在、学問と社会の諸課題を接続する学びが多く行われています。社会課題を考えることは、言い換えると自分たちが生きる場の問題を考えていくことにも繋がります。皆さんが、これからの自分と社会につながる「問い」を自分で発見してプロジェクトを計画してみませんか?

(1)Myプロジェクトを考える。

  高校生の皆さんの高校卒業時点の進路は様々だと思います。大学や専門学校に進学したり、就職をしたり、もしかしたら自分探しの旅に出る人もいるかもしれません。どのような道を選択したとしても「自分で選択して、決断すること」が大切になります。それでは、Myプロジェクトシートを活用して自分のキャリアについて考えてみましょう!

 このような方法で考えることをすれば、すぐに自分のキャリアについて文章化していくより、思考の構造化が図られると思います。それでは、これをもとに皆さんが考えた社会問題についてもう少し、考えていきたいと思います。私は皆さんが働いたり、学んだりする目的の一つとして「社会をより良くしていく」ことだと考えています。皆さんの中には「社会問題を考えて」と言われても遠い世界のことを意識してしまいがちです。[1] そのような場合は、視点を変えて、皆さんの半径5m以内にどのような社会問題が潜んでいるかを考えてみてください。自分の行動範囲の中でとても面白いものがきっとあるはずです。学校の授業や学習ということを意識しすぎて無理に立派なことを考える必要はありません。身近な興味関心から自分のキャリアに接続していくを深めていきましょう。

 ここからは先ほど皆さんにまとめていただいた「My プロジェクト リサーチシート」を参考にもう1段上の視点を見えるように視野を広げてみましょう!

 

それでは、皆さんが思いついた社会問題を一つイメージしてみてください。

 →(                            )

その社会問題の解決に向けた取り組み内容を理解してください。

①問題の本質を考える

Who(誰のために?) 
What(何のために?) 
How(どのように?) 
Why(なぜやるのか?) 

これは社会問題を解決した時の,恩恵を受ける人々のことを考えるという視点も大切になります。 実社会では,「ユーザー視点」という考えになると思います。

②問題を明確化する

自分の考えた社会問題について
嬉しかったこと (もし,こうなればいいなぁみたいなことも可) 
嫌だったこと   
問題意識を持った理由  
解決したい社会問題、自分がチャレンジしようとしていること、社会問題を考えるために必要なステークホルダー、リサーチ調査の内容も考えてみよう !      





     

 

 どうでしょうか?少しだけかもしれませんが、自分自身について見えてきたものがありませんか?皆さん自身のキャリアを考える時に、「個人と社会のよりよい世界を創る」という視点を持ってもらいたいともいます。キャリを考えるということは単にそのゴールが「大学入学」や「就職」だけではなく、さらにその先を見据えてもらいたいと思います。

③志望動機のプロトタイプの作成

①解決したい社会問題 (どんな仕事や学問と関連がある?)          ②その社会問題が解決した姿 (自分がどのように社会問題に関わるのか?)


④何をどのように行うのか? (その結果、どのようなHappyな世界を創りたい?)        ③それは誰のためにするの? (エクストリームユーザーは?)


④志望動機を書く

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 次回は、リフレクションとアンラーンについて考えます。皆さんが行った探究をさらに深めるために必要なものになります。それでは、リフレクションを行います。

※文章でなくても構いません。文章が苦手なら、単語でも絵でも何でも構いません。

 自由に思いつくまま書いてください。

1 今回の学びで皆さん自身が発見したことを考えてください。



2 今回の学びで皆さんが一番印象に残るくらい新しく発見したことは何ですか?

   

3 2の時、皆さんはどのようなことを思いましたか?



4 今回、学んだことを皆さんはどのように今後に活かしていきたいですか?



 

              Copyright © 2024 Manabu Miura. All Rights Reserved.


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

宮城県の公立高校教員として23年間勤務したのち、2024年4月より宇都宮海星学園星の杜中学校・高等学校で勤務。

指導の核としてパブリック・リレーションズの考えをもとに生徒たちに「生きやすさ」を考える授業の展開を心がけている。経済産業省「未来の教室」アイディアソンやJICA主催公開セミナーにて事例発表等にも選出された。また、探究関係の教材開発協力や授業づくりで多くの学校で講演を行っている。地理歴史・公民科教諭。

目次