高校生の時から目指した「起業」

仙台市に本社がある株式会社manaby(マナビー)の代表の岡﨑衛さんは、大学生の時に自分の会社を立ち上げ、障害のある方の働き方を支援するサービスを提供しています。高校時代から志した「起業」。その原点を聞きました。

目次

「起業」という選択肢との出会い

中学生の頃、「働く」ということを考えた時に、「自分がやりたいことをやりたい」「将来はパイロットか社長になろうかな」と考えていました。授業中に窓の外の鳥や飛行機を見ながら、「自由でいいなあ」と思ったんですよね。

高校は、もともと女子高だった学校が共学になるタイミングで入りました。つまり、男子が入るのは私たちがはじめて。男子サッカー部としても1期生でした。伝統が決められていないことに惹かれていたと思います。その高校時代に、宮城大学が主催していた講演会で「起業家」の話を聞く機会がありました。高校生で参加していたのは私1人だったのですが、そこで初めて「起業」ということを知りました。働いて社長になるのではなく、自分で最初から社長として会社を作るという選択肢が生まれたのです。

それから私は「起業して社長になりたい」という気持ちを強く持つようになりました。自分の気持ちに嘘をついて働くくらいなら、自分で仕事を創って起業したいと思いました。一緒に働く人も自分で決められるのっていいですよね。

「起業しよう」と進学したのが宮城大学の事業構想学部(当時)で、開学から10年ぐらいの新しい大学でした。学びも多かったのですが、最初のうちは座って授業を受けることが多く、「これだけじゃ起業できないな」と思ってしまったんです。そこでいろいろな会社のインターンシップに参加して、大人の話を聞きに行きました。その中で、障害者向けの福祉サービスをしている会社のある創業者に出会いました。人柄に触れて「この人だったら信じられる」と思えた方でした。

その会社では、身体障害者の方や知的障害者の方が就職して働くためのサポートを行っていました。国の制度でいうと「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスのひとつ「就労移行支援」です。

私はその会社で障害者雇用として勤める方と初めて一緒に働いたのですが、自分たちが「少数派」であることで我慢していること、社会に不満を抱えていることなどの話をお聞きしました。自分もそう感じることがあるし、共感することもあり、一緒だなと感じました。

私は昔から「多数に合わせる必要はない」と考えてきました。例えば右利きの人、左利きの人がいると思います。世の中には右利きの人が多いですが、左利きの人が右利きの人に無理に合わせる必要はないよね、と思っています。

このインターンシップでの経験や出会いをきっかけに、2009年大学3年生の時に、この「就労移行支援」を行う会社を立ち上げました。

◆ゼロからのシステム構築

私が就労移行支援に携わるようになってから課題に感じていたのが、せっかく訓練を受けて就職をしても、長く仕事が続かなかったり、病気が再発したりしてしまった方々がいたことです。国の制度の中である程度やり方が決まっているのですが、何か一工夫できないかなと考えました。

そして、ITスキルをインターネット上の「eラーニングシステム」で学べる仕組みを創ったのです。ワードやエクセル、プログラミングやホームページのデザインなど、今では40種類以上のコンテンツを自社で開発して、提供しています。この仕組みを使えば、家にいても自分のペースで学習することができます。

そしてこのサービスは、人に合わせることが苦手な方や、電車やバスが苦手で毎日出社することが難しい方に届くといいなと考えていました。例えば人に合わせることが苦手な方も、スキルを身につけて、人と顔を合わせることなく自宅で働くことができたら、無理なく続けられるかもしれない。そういう選択もあっていいと思ったんですね。そうすれば、その人にとっての「自分らしい」働き方で力が発揮できると思います。

ポイントは自分たちでゼロからこのシステムを作ったことです。manabyのスタッフが、支援の傍らシステムとコンテンツの開発を行っています。もちろん大変なので、既製サービスを使用してはどうかという案が出たこともあります。でもそうしなかったのは、すぐそばで支援する私たちだからこそ、利用者が使いやすいものを作ることができると考えたから。例えば、現場の経験から、質問がしたくてもできない人がいるということがわかったので、よくある質問をコンテンツ内に事前に盛り込みました。また、小さな成功を積み重ねることが大事だと感じていたので、チャレンジ課題や仕掛けを用意して、支援員と一緒に小さな成功を喜べるようにしました。

仙台の1事業所からスタートした私たちですが、2022年現在は、東北・関東・関西に合計28の拠点で、のべ約1900人を超える方をサポートしてきました。

一人ひとりが自分らしく働ける社会

これだけ社会が変化していくと、生きていく中で壁に向き合うこともあると思います。働き始めてからも、頑張りすぎてしまって精神的肉体的に体調を崩してしまうこともあるかもしれません。皆さんも、いろいろ悩みを抱えていると思いますし、何も問題なく生きられる方が少ないと思います。

私たちが目指している世界は「一人ひとりが自分らしく働ける社会」です。そのためには、選択肢をたくさん用意しておくことがとても大切だと思います。

私は2022年に35歳になりますが、まだまだやらなければいけないことはたくさんあります。例えば健常者の方にも、働くということに悩みを抱えている方はたくさんいるはず。障害者福祉の分野だけではなく、それ以外の分野にもサービスを提供していくつもりです。そして「一人ひとりが自分らしく働ける社会」を目指して、これからも行動していきたいですね。

◆おすすめの本
リルケ「若き詩人への手紙 若き女性への手紙」(新潮社)
自分自身で未来を決める、そんな時はもしかしたら孤独を感じるかもしれません。それでも自分の未来なのだから、誰かの言う通りに生きるのではなく、自分で決めていきたいと思う人にはオススメの本だと思いました。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

目次