ラーメンを調べて気づく分析と仮説の立て方

あなたが何かを販売するとき、誰がどんな商品を必要としているか知ることはとても大事なことです。どんなにいい製品でも、誰も欲しがらない商品は売れません。

私は「誰が」「どんな商品」を欲しがっているかをインターネットで知る「ウェブ解析」を20年以上専門としてきました。なぜウェブ解析を専門にしたかというと、地方の中小企業やお店のご支援を子供の頃からしたかったからです。寂れていく地元の商店街や倒産する会社を見て、彼らが売上を伸ばす方法を探していました。

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多様化の時代で消えていく中小企業

30年以上前、日本の中小企業は大企業の下請け、もしくは販売代理店として売上をあげていました。下請けとは、大企業の製品をつくるために必要な部品を製造することです。販売代理店は、大手企業の作った製品を販売するために、契約をしてお店で販売をすることです。地方の中小のメーカーや街の販売店さんはこのような下請け、代理店として仕事をしていました。このような取引によって日本の経済は支えられてきました。

この取引が成り立っていた頃、日本は大量消費が当たり前の時代でした。大手企業が誰でもほしがる製品を作り、テレビで日本中に宣伝をすることで、日本中の誰もがその商品をほしがりました。

しかし今は、誰もがほしがる商品というものを作るのが難しくなりました。消費者が多様化し、商品に求めることが人によって大きく異なる時代です。そして消費者が見ている情報もTiktokやNetflixなど様々な手段を使っています。

その結果大手の家電メーカーなど様々な企業が業績を落とし、日本の中小企業も下請けの契約を止められ、家電屋さんは減り、大手の家電販売店に取って代わられるようになってきています。

新しい中小企業の在り方

私は日本の中小企業が、このような未来に生き残るためには、大手企業の下請けでも販売代理店でもなく、中小企業が自分の持っている強みを生かした製品を提供することで売上をあげることが一番良いと考えました。消費者の好みが多様化しているなら、大企業では規模が小さすぎたり、専門的すぎて対応できないようなマーケットに絞り込んだりして、その消費者が喜んでもらえる製品を作ることで、マーケットで高い人気をもちつづけることができる、と考えました。

そのときもっとも難しいのは、「誰が」「どんな商品」を欲しがっているか、という情報をどうやって中小企業が手に入れるかでした。そのために私はウェブ解析が役立つと思いました。

ウェブ解析を使えば、中小企業のウェブサイト(ホームページ)やソーシャルメディアや検索エンジンの情報を調べることで、消費者にとって自分の会社の製品にとって本当に求められているニーズを知ることができるのです。

テレビ電話の意外なターゲット

たとえば家庭用のテレビ電話の会社の宣伝を担当していたときです。スマートフォンが普及する前、インターネットで動画をつかった会話ができる専用電話を販売するビジネスが始まっていました。

このようなテレビ電話は誰が必要としているでしょうか?会議では以下のような人が欲しがるのではないか、と話していました。

  • 単身赴任したお父さんと家族
  • 遠距離恋愛のカップル
  • 海外の友人
  • お孫さんの顔を見たい祖父母

このような商品を買ってくれると想定した人たちをターゲットと呼びます。このようなターゲットに対して宣伝をしていましたが、なかなか売上が上がりません。

そこで私の方でウェブ解析をしました。すると、前述と全く異なる、ある言葉で検索してくる人たちは、「このテレビ電話のことを詳しく知りたい」と問い合わせや資料請求をしてくる割合が高いことに気づきました。

その言葉は「手話」でした。

遠距離で手話を伝えたいという人がいたのです。しかしどのテレビ電話の会社も手話が伝わることを説明していないため、彼らは困って資料請求やお問合せをしてきたのでした。

このようにウェブ解析のデータを見ることで、誰がターゲットなのか、ターゲットがどういう理由で商品を必要としているかを知ることができるのです。この「商品を必要としている理由」をニーズといいます。データを見ることでこのターゲットやニーズを知ることができます。でも、データを見ればすぐ理由がわかり、商品が売れるわけではないのです。「なぜか買ってくれるのか」という理由は売る企業が考える必要があります。

Googleトレンドでラーメンを調べる

一つウェブ解析でよく使う便利なウェブサイトを1つ紹介します。Googleトレンド(https://trends.google.co.jp/trends/)というウェブサイトです。このサイトをつかうと2005年からGoogleの検索エンジンでどのようなワードがどのぐらいの頻度で使われているか地域ごと、時期ごとに知ることができます。

例えばラーメンで考えてみましょう。ラーメン屋さんを開くとき、どんなラーメンなら人気が出るでしょうか?Googleの検索エンジンでよく検索されているワードを参考に、ラーメン屋さんのメニューを考えると、人気がでるヒントになるかもしれません。

  1. 醤油ラーメン
  2. とんこつラーメン
  3. 塩ラーメン
  4. 味噌ラーメン

この4つのラーメンのうち、どのワードが一番よく検索されているでしょうか?

2022年2月の結果を見ると味噌ラーメンです。時期を2004年から調べると、2008年からそれまで人気だったとんこつラーメンを抜いて一位になっていることがわかります。下の方をみると、都道府県ごとの違いも見ることができます。北海道より青森、宮城のほうが味噌ラーメンを検索していたり、近畿地方は塩ラーメンの方が人気なのもわかります。

なぜ味噌ラーメンが最も検索されているのでしょうか?とんこつラーメン屋や醤油ラーメン屋より味噌ラーメンのお店の数が多いということはないでしょう。ここで理由を考えてみます。醤油ラーメンやとんこつラーメンのお店は、人気もあるのでわざわざ検索しなくても好きなお店を知っていることが多いのでしょう。しかし味噌ラーメン屋さんは知っている美味しいお店が少ない、だから検索するのではないでしょうか?

仮説をたてて行動する

このように、データをもとに、原因を考えてみること、これを仮説といいます。データから数字や違いは明らかになりますが、その理由は分かりません。だから仮説を考えてみて、仮説に沿って行動してそれが正しいか、誤っているか検証をして正しいかどうか調べてみることができます。

これからラーメン屋さんを開くなら味噌ラーメン屋さんかもしれませんね(笑)。そしてどうやら、夏より冬の方が検索されているようです。そして油そば、つけめんなど様々なワードを調べてみてもいいでしょう。地域によって人気も違うでしょうね。

大事なことはデータを見て、仮説を立てて、行動することです。データから考えられる原因はまだ仮説なので、実際に宣伝してみる、販売してみることで売上が伸びるかどうかで、仮説が正しいかどうかを検証することが大事なのです。

(制作協力:一般社団法人ウェブ解析士協会)

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この記事を書いた人

ウェブ解析士マスター ウェブ解析士協会 WACA 名誉会長 福島県いわき市生まれ。 2000年株式会社環創業、ソフトバンク・テクノロジーに売却し2012年ウェブ解析士協会を設立、代表理事に就任。現在名誉会長。 日本経済大学 教授、Kirirom Institute of Technology 及び 産業能率大学客員講師。 農山漁村発イノベーション中央プランナー、ISACA認定情報システム監査人(CISA)、Mindset認定プロコーチを務める。

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