情報工学の研究と教育事業に挑戦する高校生起業家

高校時代に株式会社を起業し、情報工学の分野ですでに大学との共同研究を行った清水紘輔さん。東北ゆかりの若者の未踏的な挑戦を支援する「MiTOHOKU Program」にも唯一高校生として採択されました。これまでどんな経験をされていて、何が行動の転機となったのか、お話を伺いました。

清水さんの起業のエピソードは、こちらのインタビュー動画をぜひご覧ください。

目次

中学時代に「ビジネス」に触れる

中学生まではサッカーに明け暮れていたサッカー少年でした。転機は中学校2年生の時に参加した「やまがたイノベーションキャンプ」。このキャンプは、地域の課題を解決するビジネスプランを考えるイベントでした。ここで「起業」や「ビジネス」にはじめて触れた私は「勉強」や「部活」以外にも活躍できる場があることを知り、学校外の活動にも積極的に参加するようになります。

もう1つの転機は、中学校3年生の時に参加したメディアアーティスト・落合陽一さんの個展です。落合さんは「計算機自然」、「デジタルネイチャー」という考え方を打ち出していますが、コンピューターと自然の境界があいまいとなる展示は衝撃で、そこから「情報工学」の世界に興味を持ち始めます。

高校入学後は東京大学グローバルサイエンスキャンパス 3期生に選ばれ、「立体音響を語彙学習に生かす方法」について研究し、国際学会(The 30th International Conference on Computers in Education)のWIPP部門に論文が採択。さらにスタンフォード大学が日本の高校生に提供するプログラム(Stanford-e Japan)にも合格し、スタンフォード大学の大学教授や海外の高校生とも英語で議論を深めてきました。

そして、中学時代に参加した「やまがたイノベーションキャンプ」をきっかけに出会った社会人と一緒に起業を実現。「誰もが主人公になれる世界をつくる」をビジョンにした株式会社Litableを創業し、高校生向けのコーチング事業などを行っています。

MiTOHOKU Programでの挑戦

MiTOHOKU Programでは、コンピューターと人間の同化を進めるハードウェアの開発に挑戦しました。人間の持つ感覚や価値をコンピューターで表現し、それを現実にすることを目指しました。「まだ世の中にはなくて面白そう」、「あったらいいな」ということを情報工学の知識・技術を使って表現することを目指してきました。

当初は「人の動き」(モーション)に着目をしてプロダクトの開発を進めていました。

しかし、既に人の動きに着目した研究やプロジェクトには先例がありました。MiTOHOKU Programのテーマは「未踏」。誰も足を踏み入れていない領域にチャレンジしようと考えた私は、人の動きに加えて、感情の可視化にも着目した研究を始めることにしました。

その中で自分のビジョンは「人々に『!』を振りまく」ことだと気付きました。「!」を生み出す、斬新なアイデアをいくつも生み、挑戦を重ねてきました。最終報告会では、「人間の動きで計算機を制御するインターフェース」と「感情を表現する流体シミュレーション」というユニークな成果物を紹介することができました。

MiTOHOKU Programから得た学び

MiTOHOKU Programを通じて、世界を知る経験ができました。印象的な出来事は2つあり、1つは、1週間滞在した中国研修。AIやロボット、蓄電池、医療・福祉など様々なテーマに取り組んでいる企業・団体を訪問し、中国はマーケットイン・経済合理性が高いということを実感しました。その一方で、経済合理性や効率を求めすぎる中国では、新しい価値は生まれにくいのではないかという考えも生まれました。

2つめに、マイクロソフト社の日本本社を見学できたこと。世界の最前線で何が起こっているかを感じる良い機会になりました。最終報告会のマイクロソフト社の方による基調講演の時にも積極的に質問をさせていただきました。

 2024年4月からは大学生になりますが、大学でも未踏プログラムに積極的に挑戦していきたいですし、研究や経営している会社の事業にも力を入れていきたいと思います。今興味を持っているのが人の情動と記憶という分野です。デジタルメディアが人の感情をどのように動かすのか、という設計を作っていきたいです。また、デジタルメディアが人の思い出を豊かに思い出すことをどう実現していくかということも考えて、大学3,4年生の時には何らかの成果を残せるように研究を進めたいと思います。

MiTOHOKU Programとは

「MiTOHOKU Program」とは、東北にゆかりのある未踏的若手人材を発掘・育成するプログラムです。「起業家・専門家集団による伴走支援」により、若手人材の「前人未踏」のアイデア実現を支援します。




よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

目次