学生の目線で、地域の課題をITで解決する

現役の大学院生でありながら、会津に拠点を置く株式会社「Branchism(ブランチズム)」の代表を務める橋本志穂実さん。「学生」や「地方」ならではの課題をITを用いて解決すべく、日々邁進する橋本さんのストーリーをぜひお読みください。

目次

経験をビジネスに

私は北海道出身ですが、両親の転勤により、引っ越しを繰り返してきました。小学校は福島県いわき市の学校へ通い、その後東日本大震災を経て、中学校と高校はタイの学校に通いました。その後会津大学への進学を機に日本へ帰国し、学士の称号を得た後はそのまま大学院への進学を決意しました。

私は昔から「こんな物があったらいいな」と思うものを自由に構想を練って、あれこれ思案するのが好きでした。大学生になると、「計画して終わり」や、「作って終わり」にするのではなく、ものづくりを通して社会をより良くしたいと考えるようになりました。大学では「ヘルステック」という、人の健康をデータとして扱う分野を専門に研究し、人の健康維持に関わるものを多数制作してきました。例として、運動不足解消のためにリズムに合わせて身体を動かすゲームや、抱きしめるとストレス度合いが分かるぬいぐるみを制作しました。さらに、周りの地域への展開や規模を拡大していけば、今までやってきたことがビジネスになるかもしれない。ビジネスにして利益を得られれば継続的な活動ができると考え、起業を決意。2021年12月に株式会社「Branchism」を起業しました。現在は大学院の2年生になり、休学をして会社の経営に励んでいます。

会津にこだわって活動する

まず、「私が本当にほしいものは何か」と自問自答を繰り返しました。そこで頭をよぎったのは、コロナ禍で失った「今までの当たり前」でした。外出自粛、授業のオンライン化、イベントの中止。新しい人との出会いはもちろん、人とコミュニケーションがなくなり、私は、日々への希望ややる気を失いかけていました。しかしそんな中でも、オンラインイベントで、顔を見て誰かと話す機会を得られると、そんな辛さはいつの間にか薄れていきました。改めて、人と話す重要性に気付いたのです。こうして、「コロナ禍でも新たに誰かと繋がれる仕組みが作りたいと思うようになりました。

 そこで考えたのが、学生を対象とした、オンラインコミュニケーションサービスの「splannt(スプラント)」です。オンライン上で新たな交流が生まれ、直接コミュニケーションが図れます。「splannt」の中で、「誰かと一緒に〇〇に行きたい!」「このイベントに一緒に参加しませんか?」などと呼びかけると、その書き込みを見て興味を持ったほかの学生が反応し、マッチングが成立する仕組みです。マッチングが成立したら待ち合わせの詳細を当人同士で決めてリアルの世界で直接会うことができます。このサービスをアプリで提供しています。特長は「学生」に対象を絞っていること。そして、安心・安全・自由を保障したプラットフォームであることです。学生生活を彩る新たな選択肢として、「splannt」が役に立てたらと思います。2022年夏現在では、会津大学生のみを対象にサービスを提供していますが、50名程度の学生が「splannt」のユーザーとなってくれています。

 また、「splannt」以外にもサービスを提供していこうと考えています。現在、ひとりひとりの特徴や想いを掛け合わせてマッチングできるサービスを作成中です。「こんなことをやってみたい!」という誰かの想いに共感した他ユーザーが反応し、一緒にプロジェクトに取り組んでいけるようなサービスにしたいと思っています。対象は学生だけでなく社会人も加え、年齢関係なく一緒に挑戦する仲間が増えていってほしいと願います。このサービスのメリットは、そもそも「何かに挑戦したい」という同じ思いを持つ方が揃っているため、反応してくれる確率が高く、モチベーションの維持が期待できることです。共に頑張る仲間をお探しの方、頑張る誰かをサポートしたい方にお使いいただける未来を想像し、期待を膨らませながら、作成しています。

 もうひとつ、現在行っている活動として、会津の地元企業から依頼を受けてシステム開発や、Webサイトを制作があります。

 会津で活動をしていると、「どうして会津にこだわるの?」と質問されることもよくあります。その答えは、「会津を育てたい」からです。会津は観光地としてのネームバリューがあり、知名度は高い一方で、人口減少やシャッター街増加が著しいのが現状です。私たちの会社では会津という地域全体の価値を高めるだけでなく、私たちの会社そのものの価値も高め、「私たちは会津発のベンチャー企業です」と胸を張って活動することを目標としています。

 

もちろん、活動をしていると思うように上手くいかず、辛い思いをすることもあります。1つ目のサービスとして打ち出した「splannt」の運用も、当初は上手くいかず、「やはり会津では通用しないのかもしれない。東京に行かなければ成功できないかもしれない」と考えたこともありました。しかし、実際に東京に足を運び、ビジネスの実態を知ると考えは大きく変わりました。良くも悪くも、東京は入ってくる情報量が多すぎて、自分の気持ちに正直にビジネスをするのが難しいと感じました。上には上がいる現実や、売上額や投資額の桁の違いに圧倒されたのも事実です。それに比べて、いつも自分らしく自由に動けて、人と人との繋がりが多くある会津に改めて強く惹かれ、会津で活動をしていきたいと思うようになりました。経営に限らず、どんなことでも他者と比較し過ぎるのは成長には繋がらないと思います。東京での学びを通して打たれ強くなった今は、「楽しさ」を第一に考えて、私らしいスタイルで活動できています。

また、日本の社会課題として都会と地方で賃金の格差が大きいことが挙げられます。賃金の差が広がることで、地方に住む若者はより都会に行きたいという思いが強まり、地方の人材不足は加速する一方です。また、地方の1企業が頑張ったところで賃金格差や、人材不足の根本的な解決には繋がらないのが現状です。課題と感じていても、解決できない自分の無力さに悔しさを感じることもありますが、各企業は従業員の生活を十分に保証できる賃金と、従業員の心理的な健康を心がけることがとても重要だと思っています。私の会社では、現在10名ほどのメンバーが働いていますが、1人1人の要望になるべく応えられるよう最大限の配慮をしています。リモートワークが良い方、個室での作業を希望する方、それぞれ要望は違いますが、なるべく働きやすい環境で仕事をしてほしいという思いで応えています。1つの企業の行動ですぐに日本全体が変わるとはいえませんが、1つの企業から地元企業へ、地元企業から全国へと、仕事に対する考え方を見直すきっかけが派生していけば良いなと思います。

足を踏み入れてみる

ぜひ、今まで行ったことのない場所や環境に足を踏み入れてみてください。中学〜高校生の時にタイに住んでみて、日本とは全く異なる、自分の知らなかった世界が広がっていることに驚きました。この世の中には、皆さんが今感じている「当たり前」が「当たり前でない」ところがあって、別の「当たり前」が存在している現実をぜひ身をもって体感してほしいと思います。自分の固定概念を壊しに行くことで、新たな学びに繋がります。挑戦しようという気持ちがあれば何でもできる世の中だからこそ、ぜひ好奇心の赴くままに挑戦し続けていってほしいと思います。皆さんが殻を破って、新たな自分に出会えることを願っています。頑張ってください!

おすすめの本
推理小説(特に東野圭吾)

人の意外性を知ることができて、展開も面白いので趣味としてよく読んでいます。

写真提供=橋本さん

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

目次