実験教室の先生

総合科学研究機構、つくばエキスポセンターに所属され実験教室を開催されている加地浩成さん。実験教室を通じて子どもたちに教えていることや心がけていることなど伺いました。

目次

実験教室で行っているプログラム

主なプログラムはいくつかありますが、一番人気は「表面張力で遊ぼう(シャボン玉の科学)」です。シャボン玉を作る実験で大人気です。「“飛ぶ”を科学しよう」というプログラムではロケットや飛行機がどうして飛ぶのか工作をしながら考えてもらいます。「身近な材料で草木染めを楽しもう」では、身近な素材である玉ねぎやヨモギ、ぶどうなどを使って染めものを体験します。薬品を加えると一瞬で色が変わるのが面白くて人気があります。

15年間の実験教室を行って、約20のメニューを準備しています。

ープログラムの1つ、「音で遊ぼう」をご紹介いただけますでしょうか

人気のある風船電話を紹介します。風船電話は紙コップの底を十字に切って、長い風船をねじこむだけで簡単にできます。紙コップを一人は耳にあて、一人は口にあて風船を通じて電話してみると音の振動を感じることができます。どうして音が伝わるのか?鼓膜が震えるというのを実際に体感してもらいます。一人でもできるし、二人でもみんなでもできて楽しいです。

ーなぜ実験教室を開催するのでしょうか。

科学や理科は実験をしないと楽しくない、実験をやって初めてわかることがあると思っています。まず楽しい、ということを体験してもらうことで、将来この体験がこどもたちの役に立つと考え実験教室を行っています。

―実験教室を行う上で心がけていることはありますか。

実験工作が楽しいものにする為に説明や話しかけ方等を工夫しています。実験工作を楽しいものにするためには説明が大事です。よくあるのは一方的に話をしてしまうこと。そうするとこどもたちはわからなくても質問できずに終わってしまう。すると面白くなくなってしまいます。質問をして答えてもらう、さらにそれを補足する、そういうやりとりが大事です。

説明の仕方も大事で、例えば「どうしてどうしてシャボン玉は丸くなるの?」と質問を受けると、

→実はね、と難しい説明になってしまうことがありますます。

表面張力だよって言ってしまえば早いのですが、それでは子どもたちは分からない。それをどう説明するか、が大事です。

たとえ話やみんなの体験に関連付けて話しています。

「みんな寒くなるとどうする?」
「体をきゅーって小さくする」
「自然でも同じことがおきる。表面の面積が一番小さくなる形がまるなんだよ」

というような、できるだけわかりやすい話しかけ方を工夫しています。また、事故は絶対におこさないようにこころがけています。

化学に興味を持ち研究室を選択

子どもの頃は将来のことを考えずにのびのびと育ちました。高校に入ってから、大学の進路を選ぶ際に、私立か公立か→公立、工学部か理学部か→理学部と志望しました。

個人的には、工学部はものを作るのが主体で、理学部はどうしてそうなのかを考えるという違いがあり、自分は理学部の方が向いているかなと感覚で選びました。

中に入ってから研究室を選ぶとき、化学に興味をもち、物の変化が面白そう、どうしてそうなるのか考えながらいろんなものの変化をみる、という物理化学が面白そうだと専攻しました。そこでなにをやるかは教授が選んだテーマが「凝集浮選による放射能汚染除去法」でした。凝集浮選とは空気を入れて作った泡に色々なものをくっつけて濃縮し、放射能をその泡の中にくっつけて除去する、という方法です。鉱山でのある技術の応用です。4年生と修士2年間の3年間やりました。

-博士号は大学卒業後、日本自動車研究所で取得されたんですね。

大学卒業後に3年間東京都庁で大気汚染防止の行政に関わりました。その後、(財)日本自動車研究所で自動車排出ガス中の微量成分分析法開発と調査研究、環境と品質ISO審査を行いました。定年退職後はつくば市エキスポセンターでインストラクター、つくば市理科支援員、つくば市シニア・エキスパートとして理科実験工作の出前授業を行っています。

色々なことを体験して、その中から自分の興味が続くものを見つけてほしいです。 実験工作をやっていると「おじさん何やってるのー!」と子どもたちがやってきて、「どうして?、どうして?」とみんな非常に好奇心が強い。いろんな経験をして、1回切りではなく、自分の興味が続くものを見つけてほしいです。好奇心があるうちにいろんな経験をして、親は手助けをして、自分はこれが向いているんだとか、楽しいんだ、というものをみつけてほしいです。

福岡伸一(生物学者)著 「動的平衡」「生物と無生物のあいだ」

「動的平衡」という本は実験教室を行う上で特に通じるものがあると思っています。

一番感動するところを紹介します。

『多くの場合、実験結果は予想していたものとは異なるのである。与えられた手続きを行って予想していた結果が得られないのは実際の実験ではよくあることだ。当たり前のことが起こらないとき、どこに問題があるのかその所在を突きとめることができる能力を身につけることがプロになるということだ。』

うまく行かないことが当たり前で、どこに問題があるか考えることが必要。それがプロだという話。実験教室にも通じるものがあります。そういうプロセスが楽しいです。 そういう経験を感受性豊かな小学生や幼児に体験してもらいたいと考えています。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)


【プロフィール】

総合科学研究機構 

つくばエキスポセンターボランティアインストラクター

加地 浩成 さん

経歴

1968年4月 東京都 首都整備局 都市公害部 環境課 指導係

1969年4月 東京都 江東区 公害部 

1971年4月 (財)日本自動車研究所入所

1982年4月 (財)日本自動車研究所 研究第1部 第3研究室   室長

1990年12月 学術博士(埼玉大学)

2005年4月 横浜国立大学教育人間科学部非常勤講師(5年間)

2006年1月 つくば市エキスポセンター(インストラクター)現在に至る。

2007年4月 埼玉工業大学工学部非常勤講師(2014年3月で定年)

2011年4月 東京工芸大学工学部非常勤講師(2014年3月で定年)

2014年5月 つくば市理科支援員(2年間)

FM84.2ラヂオつくばにて毎週月曜22時~22時30分放送中様々な研究所の博士や専門家たちにお話を聞いています。

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番組へのご意見ご感想お待ちしています。

scienceexpress@gmail.com

写真提供=加地さん


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この記事を書いた人

総合科学研究機構総合科学研究員
サイエンス・エクスプレスMC サイエンスコミュニケーター
気象予報士の資格を持ち、お天気の実験教室などを開催。第11、12回気象文化大賞を受賞。

実験の楽しさや自然の素晴らしさ、災害の恐ろしさ、人類や科学のすごさをみなさんと共有していきたいです。この世界はたくさんの知識に溢れている。学ぶってワクワク。一緒に科学を楽しみましょう!

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