探究テーマ「ファストファッション」
ファストファッションとは、そのシーズンの流行を取り入れ、低価格に抑えた衣料品を大量生産し、新作商品を短いスパンで販売するファッションブランドやその業態のことを言います。1990年代からアメリカで始まったといわれるファストファッションですが、現在は日本にも多くのファストファッションブランドの店舗があり、私たちは流行に沿った服を手軽に買うことができ、それぞれが好きなファッションを楽しめるようになっています。
しかし、大量に生産され、低価格で気軽に買えることから、様々な問題が生じています。2020年度、日本国内で供給された衣類の量は81.9万トンに対し、78.7万トンの約9割が事業所や家庭から手放されると推計されました。そのうち廃棄される衣類の量は51万トンと、大量に生産しても大量に廃棄されてしまいます。手軽に買えることにより、気軽に廃棄されるようになってしまったことが考えられます。廃棄される衣類以外は、12.3万トンがリサイクルされ、15.4万トンがリユースされます。2009年のリサイクル量8.6万トン、リユース量18.4万トンと比較すると、リサイクル量は増加しましたが、リユース量は減少しています。
また、国内に供給される衣類の原材料調達から廃棄までに排出されるCO2の量は95百万トンと推計されています。原材料調達、製造、輸送、利用、廃棄などの各過程でCO2が排出されることがわかっています。
このようなファッションのライフサイクルの短さや環境への負荷を考えると、これからのファッションの在り方を考えていく必要があります。
参考)環境省「令和2年度ファッションと環境に関する調査業務-『ファッションと環境』調査結果-」
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/goodpractice/case25.pdf
サステナブルファッション
衣類の生産から廃棄において持続可能であることを目指し、環境や社会に配慮した取り組みのことをサステナブルファッションといいます。
具体的な取り組みとして、企業は衣類をより長く着られるように丁寧な作りにすること、消費者は今持っている衣類を長く大切に着ることです。企業は衣類を生産する際に、原材料を質の高いものにする、成長に合わせて調整可能なものにするなど、長く着られることを前提として商品企画を行う必要があります。私たち消費者は1着を今よりも1年長く着ることで、日本全体として4万t以上の廃棄量の削減に繋がるというように、環境負荷を減らすことができます。
参考)環境省_サステナブルファッションhttps://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/index.html
アップサイクル
アップサイクルとは、大量に廃棄される衣類や繊維を別の製品に作り替え、付加価値を付けるものです。例えば、廃棄されるデニムのジーンズをバッグに生まれ変わらせるように、アイデアやデザイン次第で新しいものを生み出すことができます。近年アップサイクルへの関心が高まっており、自宅にある着られなくなった衣類を用いてオリジナルのぬいぐるみを作るワークショップが開かれたりしている。このように、自分の手で着られなくなった衣類を生まれ変わらせる機会がより増えていくと、そのまま廃棄される衣類が減っていくことが考えられる。
探究テーマ「バリアフリーとユニバーサルデザイン」
街を歩くと、バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮したものをよく見かける。意識をしなければ、その存在に気づかない人も多いかもしれない。または、「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の意味を正しく理解しておらず、違いがいまいちわからない人もいるだろう。2002年12月に閣議決定された障害者基本計画では、それぞれの言葉の意味を以下のように定義している。
「バリアフリー」とは、障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。
バリアフリーは、障害によりもたらされるバリア(障壁)に対処するとの考え方であるのに対し、「ユニバーサルデザイン」はあらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。
2017年には、東京パラリンピックの開催に備えて、ユニバーサルデザイン2020行動計画が策定された。世界に誇れるユニバーサルデザインの街づくりを実現するとともに国民全体を巻き込んだ「心のバリアフリー」の取組を展開することを目的としたものだ。
近年多様性が拡大しつつある中で、バリアフリーやユニバーサルデザインがどれくらい認知されているのか、これを機に身近なバリアフリーやユニバーサルデザインに関心を持って調べてみるのもよいだろう。
参考)バリアフリーとユニバーサルデザイン/総務省https://www.soumu.go.jp/main_content/000546194.pdf
バリアフリーの例
エレベーター
車いすを使用している人が利用しやすいよう、ボタンの位置を低くしたり、方向を変えずに出入り口を確認できるよう鏡をつけたりするなどの工夫がされている。
点状ブロック
視覚に障害のある人に道を案内するために、駅や道路などには点状ブロック・線状ブロックが設置されている。駅のホームの端に設置されている点状ブロックでは、線路への転落を防ぐため、ホームの内側と外側が区別できるように内方線をつける工夫がある。
ユニバーサルデザインの例
自動ドア
誰にでも簡単に使用できる自動ドアはユニバーサルデザインの代表例である。
車いすを使用している人だけでなく、両手に荷物を持っている人や子どもを抱いている人などすべての人に便利。
多機能トイレ
十分なスペースに、ベビーシートなどの設備があるトイレは、乳幼児連れや車いす利用の人だけでなく、誰もが利用できる。
シャンプーの容器の突起
気を付けてみてみると、シャンプー容器には、突起がついている。これは、触っただけで同じような形をしたリンスの容器と区別するためで、リンスの容器には、この突起がない。目の不自由な人だけでなく、頭を洗っているときなどの目をつぶっている場合にもシャンプーとリンスを区別することができる。
ピクトグラム(絵文字)
交通施設、観光施設、商業施設など様々な場所で使われているピクトグラムは、海外からの旅行者や細かい文字の見えにくいお年寄りなどすべての人が伝えたいイメージを一目で理解することができる。
心のバリアフリー
意識上のバリアをなくすために大切なのが、一人ひとりの「心のバリアフリー」である。「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことである。まず、自分の周りには、どのようなバリアを感じている人がいるか、どのようなバリアフリーの工夫があるかに目を向けてみよう。様々なバリアフリーの工夫に気づいたら、障害のある人などがそれを利用しやすいように考えてみよう。
参考)知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」/政府広報オンラインhttps://www.gov-online.go.jp/useful/article/201812/1.html#section3
身の回りにあるユニバーサルデザイン/郡山市ホームページhttps://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/33/4934.html
探究テーマ「色彩」
周りに目を向けてみると、色であふれていることがわかります。では、色はなぜ見えるのか疑問に感じたことはありませんか。また、色が全ての人にとって同じように見えるわけではないということはご存じでしょうか。それでは、色についてみていきましょう。
色はなぜ見えるのか
色を見るためには「光源」「物体」「視覚(眼)」の3つの要素が必要です。眼で受け取った情報を脳で処理してはじめて色を認識することができるのです。
私たちが色を見るためには、光が必要です。光は電磁波の一種で、波のように振動しながら進んでいきます。さまざまな波長をもつ電磁波の中で、人間の眼が感じることのできる波長の範囲を可視範囲といい、可視範囲の電磁波のことを可視光、あるいは単に光と呼びます。
物体に光があたると、光は波長によって表面で反射するか、吸収されるか、物体を透過するかのいずれかの経路をたどります。太陽光のもとで白く見える物体は太陽光があたると、可視範囲のほぼすべての波長の光を反射するので白く見え、黒く見える物体は太陽光があたると、可視範囲のほぼすべての波長の光を吸収するので黒く見えます。
私たちは視覚によって物の色や形を知ることができます。色がどのように見えているのか知るためには、眼の仕組みを知る必要があります。眼球に入る光はまず最初に角膜で屈折し、虹彩が瞳孔の大きさを変えて光の量を調整します。さらに水晶体が光を屈折させて網膜に像が結ばれます。
色の見え方の違い
色の見え方には個人差がありますが、色覚検査の結果から、色の見え方が大多数の人とかなり違う場合には、医学的に「色覚異常」と診断されます。色覚異常のタイプは、網膜にある3種類の錐体細胞(L錐体、M錐体、S錐体)のうち、どの錐体細胞に欠損や変異があるかによって分類されます。正常色覚は3種類の錐体細胞の機能不全がないことから、正常3色覚と呼びます。
1型色覚:長い波長の光に感度が高いL錐体の異常により起こります。
2型色覚:中波長の光に感度が高いM錐体の異常により起こります。
3型色覚:短い波長の光に感度が高いS錐体の異常により起こります。眼の病気を原因とする後天性の場合が多いです。
1色覚:L錐体、M錐体、S錐体のうち、ひとつの錐体細胞しかはたらかない、もしくはどの錐体もはたらかないタイプで極めてまれです。
通常、色覚異常という場合には1型色覚と2型色覚を指します。
色の心理効果
色を見たときの暖かい、冷たいといった温度の感じ方は色の寒暖感と呼ばれます。暖かく感じられる色は暖色、冷たく感じられる色は寒色、暖かくも冷たくも感じられない中性色と呼ばれます。
色によって近くにあるように見えたり、遠くにあるように見えたりします。これを色の進出・後退感といいます。近くにあるように見えるのが進出色、遠くにあるように見えるのが後退色です。
色は見かけの大きさの判断にも影響を与えます。これを色の膨張・収縮感といい、大きく見える色は膨張色、小さく見える色は収縮色と呼ばれます。
色が見かけの硬さに及ぼす効果を色の硬軟感といいます。一般的に明るい色ほど軟らかい印象になり、暗い色ほど硬い印象が強まります。暖色と寒色で比べると暖色のほうが少し軟らかく、寒色のほうがやや硬い印象となります。
明るい色は軽そうに見え、暗い色ほど重そうに見えます。色の軽重感は明るさに強く左右されます。
興奮感や沈静感のような効果は、主に色の鮮やかさと色あいが影響します。鮮やかな色、暖色系の赤から黄にかけての色は興奮感を与え、反対に寒色系の色は沈静的な印象が強くはたらきます。
色による派手さの印象は、主に鮮やかさとの関わりが強く、一般的に鮮やかな色ほど派手な印象が強くなり、鮮やかでない色ほど地味な印象となります。色あいは鮮やかさや明るさと比べると派手・地味感に及ぼす影響は弱いといえます。
参考文献
『文部科学省後援 色彩検定 公式テキスト 3級編』
『文部科学省後援 色彩検定 公式テキスト UC級』
「表現・芸術」の探究に役立つWEBサイト
環境省「SUSTAINABLE FASHION」
持続可能なファッションを考えるため、ファッション産業の特徴や環境への負荷についてなど、ファッションを取り巻く現状がわかるサイト。https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
内閣府「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する調査研究」
ユニバーサル社会の実現に向けて実施された、バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査(インターネットによる意識調査)の研究結果。https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/tyosa_kenkyu/index.html
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