サッカーと部活から学んだ、社長のシゴト

株式会社メディカルネット代表取締役社長の平川大さん。グループ会社も含めて約150名の社員を束ね、「東証マザーズ」(取材当時)にも上場している会社の経営者で、医療系のビジネスをされています。

平川さんは、小学校から大学までサッカーに打ち込み、その経験が今の企業経営にも生きているそうです。団体スポーツと経営の共通点をぜひインタビューから感じ取ってみましょう。

サッカーと勉強の両立

小学校3年生にサッカーを始めました。小学校、中学校と結構強いチームでやらせてもらっていて、遊びとサッカーだけやっているような少年時代を過ごしていました。地元が「浦和レッズ」がある浦和だったので、とてもサッカーが盛んな土地柄でした。

そして中学校に入って最初のテストで200人中190番くらいを取ってしまいました。それが結構ショックで、サッカー部のメンバーがみんな文武両道で頑張っていたのでそこから刺激を受けて、学年5番くらいまで取ることができた。自分自身が母子家庭でそこまで家が裕福なわけでもなく塾にも行けなかったので、そのころから自分で気づいて、行動するような習慣があったように思います。

高校は親にお金をかけたくなかったから、勉強の特待生で私立高校の特進クラスに入りました。学校にも電車で通おうと思えば通えたのですが、お金がもったいないので片道1時間くらいかけて自転車で通学していました。サッカー部には入っていましたが、どちらかというと勉強中心。でもやっぱりサッカーをやりたくて、「サッカー部を全国大会に連れて行こう」と思ってサッカーを頑張ることにしました。でも、当時のサッカー部は県大会の1,2回戦で負けてしまうようなそれほど強くないチームでした。

「全国大会」という目標に向かった高校時代

高校3年生の時に、キャプテンを任されたのですが、練習メニューや試合に出る選手、作戦などは私がすべて決めていました。小学校からサッカーの経験があったので、一番経験があるのが私でした。まず、部員に伝えたのは、「県大会で優勝して全国大会に行こう」という目標です。

目標を立てて次にやったのは、戦い方を決めること。私たちのチームは守備側の選手にうまい選手がいたので、「まず守備を固めよう、点を取られないようにしよう」という作戦を立てていました。そこからボールを前に運んでいくわけですが、細かくパスをつなぐパターンやロングパスで一気にボールを前に進めるパターンなどいくつかパターンを用意しておきました。私は攻撃側の選手だったので、味方からボールをもらい、ゴールを決めると。

戦う相手からしたらいやなチームだったと思います。全体練習でこの「守備重視」の戦い方を何度も練習し、創部史上初めて、県大会でベスト16まで進めることができました。

しかしここで壁にぶち当たります。実はこの大会は3年の夏でベスト16まで決めて、秋にそれ以降の試合を行う方式だった。すると、3年生の主力メンバーが受験の準備があるからという理由でチームを抜けていったのです。あと4回勝てば全国。仕方ないことかもしれませんが、私は悔しい思いをしました。でもそこで1年生を抜擢したら、生き生きとプレーをするのです。何か問題があっても「組織力」でカバーできることを学びました。

結果、その年は県大会でベスト8まで進むことができた。サッカーの強豪校がひしめく埼玉県でベスト8まで進めたのは、創部初めてのことです。それまでは1,2回戦負けのチームです。

実は、この「目標を立てて」、「戦い方を決めて」、「組織を作る」ということは、企業の経営も一緒なんです。今会社を経営していますが、手が届く目標を立てて、お金を稼ぐことができるビジネスモデルを組んで、そして組織を作っています。私はこの経営を学んだ原点は高校時代のサッカーにあると言えます。

個の力を磨いた大学時代

私はその後大学でもサッカーを続けます。勉強を頑張って、一般入試で青山学院大に入学し、サッカー部に入部。青山学院大はとても強いチームで、周りにいるのは、高校の時に全国大会に出場経験のある選手ばかりです。その後、Jリーグでプロサッカー選手になった選手も何人もいました。それだけ強いチームなのでうまい選手から順に1軍、2軍、3軍、4軍と振り分けられていて、私は何と「4軍」スタートでした。高校時代はキャプテンでチームの中心だった私にとってはショックな出来事でした。

そこで私が立てた目標は「1軍のレギュラーになってやる」というものでした。そのためにまずは自己分析を行い、1軍の選手と自分の能力の違いを考えたのです。私はパスやシュートなど、サッカーの技術についてはトップ選手とそこまで差はないと思いました。ただ圧倒的に差があったのが「フィジカル」の部分です。筋力、走力といった部分が自分に足りないと思ったので、全体練習の前と後に個人練習を行い、走り込みや筋力トレーニングを行っていた。人の3倍練習することを1年半続けていたのです。

すると、1軍の監督が自分のことを見ていてくれた。「平川、いいね」ということが監督に伝わると、私のことをレギュラーで使ってくれるようになりました。そして1軍で初めて試合に先発した日のことは今でも忘れられません。なんと4点も決めることができた。「神様っているんだ」と思えた瞬間でした。

工夫することの大切さ

自分が大学時代に行っていたことは、目標に対して、差・ギャップを埋めるためにはどう工夫するのかということでした。他のいい選手を真似するのではなく、「自分がやる」ことが大事。圧倒的な努力が大事だということはサッカーから学びました。

そして、子供のころから自分を応援し続けてくれた母親やたくさんの方が応援者になってくれたからこそできたことだと思います。

個人の力を高めるために、色々な工夫をすることは自主性につながってくると思いますし、それは人生にも生きてくると思います。みなさんもぜひそうなることを信じてスポーツを楽しんでほしいと思います。

おすすめの本
スペンサー・ジョンソン「チーズはどこへ消えた?」(扶桑社)

変化を常に作る、対応する、トライアンドエラーを繰り返すことなど、こういった積み重ねが後に圧倒的な差を生み出します。人生もそれらの積み重ねですね。

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。