探究学習の「次」を見据えたアントレプレナーシップ教育・総合型選抜対策~宮城県白石高校~

宮城県白石高校(公立)では、「探究百科GATEWAY」を制作する株式会社オーナーのサポートのもと、2023年度にアントレプレナーシップ教育や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を行ってきました。その取り組みについてご紹介します。

目次

アントレプレナーシップ教育で地域の課題解決を考える

2023年12月26日~28日の3日間、白石高校を会場に開催された「アントレプレナーシップ特別講座」には生徒約30名が参加。多様なゲストをお招きしながら、起業家精神(アントレプレナーシップ)について学びました。

1日目は株式会社オーナーがみちのくアカデミア発スタートアップ共創プラットフォーム・東北大学と協働して開発した「みちのくイノベーターズライブラリー」を活用し、「起業」の事例について学んだあと、地元・白石で養鶏場を営む竹鶏ファーム代表取締役の志村竜生さんをゲストにお招きし、竹鶏ファームの事業や商品開発について学びました。

志村さんの「探究百科GATEWAY」のインタビューはこちら

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 2日目はグループに分かれてビジネスプランを検討。1,2年生の生徒たちは「総合的な探究の時間」で進めている地域の課題を解決するプロジェクトのグループに分かれ、プロジェクトの事業化を念頭にビジネスプランを考えました。この日は白石高校の卒業生で大学生で起業した戸叶大地さんがゲスト。戸叶さんは山形で未利用の果物を利用した商品開発などを行っています。生徒たちは身近な先輩の起業ストーリーを知り、自分たちのビジネスプランに磨きをかけていました。

最後の3日目はビジネスプランの発表会。タブレット端末などでブランをまとめ、グループごとに発表しました。この日のゲストは東北大学産学連携機構スタートアップ事業化センター副センター長の早坂昌彦先生。早坂先生からは「アントレプレナーシップ」についての講話に加え、各プランへのコメンテーターや審査を頂きました。

審査や生徒間での投票の結果、最優秀賞に選ばれたのは「白石市中心街に創る多世代交流スペース」を提案した3年生のグループ。「地域に勉強できる場所がない」という自分たちが感じてきた課題を解決する具体的なプランが高い評価を得ていました。

 参加した生徒の満足度は高く、「起業」や「新たなビジネス」について前向きにとらえる生徒の声が数多く上がりました。


・元々起業に挑戦したいとは思っていなかったが、今回の講義を受けて成功例がたくさんあることや、それを後押ししている方が多くいることを知り、少し挑戦してみたいと思った。

・自分たちのプランに足りないことや思いつかないような発想が出てきて、今自分達のプランに足りないところを再確認できて学びを深めることが出来た。

・講師の方のお話を聞く中で、地域創生や起業に関するのアイディア出しの方法や楽しさ、難しさなどを知ることができました。またビジネスを創ることで「自分でも持続的な活動ができそう」だと感じることができた。

講座を企画した講座を企画した菊地伸宏教諭は、「アントレプレナーシップ講座についてはこれまでのように高校卒業~大学卒業~就職という一般的な人生設計にとどまらず、社会課題の解決のため、自ら社会課題を捉え、自らが活動するなかでその解決を目指す道もあることを認識させる意味合いをもって企画しました。進路選択の一つとして、起業という選択肢があることを知り、専門家から直接そこにいたるまでの道のりを学び、起業について身近に知ることで、将来の進路選択の幅を広げるために大変有意義な企画だったと考えています」と話していました。

総合型選抜・学校推薦型選抜対策で探究と進路を接続

 続いて2024年2月に開催されたのが、総合型選抜・学校推薦型選抜の対策講座です。近年、大学受験で募集人数が増えている総合型選抜・学校推薦型選抜(旧AO・推薦入試)。白石高校ではもともと「総合的な探究の時間」などの探究活動に力を入れていますが、総合型選抜・学校推薦型選抜では「総合的な探究の時間」の実績などが問われていきます。探究から高校卒業後の進路に接続しようと、今回1年生、2年生向けに総合型選抜・学校推薦型選抜の対策講座が実施されました。

1年生には学年全体に向けた講話を実施。一般的な実施時期よりも早い段階での実施となりましたが、株式会社オーナー代表取締役の佐々木が総合型選抜・学校推薦型選抜のポイントや志望理由書の書き方について解説ました。その後総合型選抜・学校推薦型選抜を経験した大学生2名が自身の経験談についてお話ししました。最後は講座のまとめとして、2年生でどんなことに力を入れて取り組みたいか、ワークシートに書き込みました。

また、2年生向けには総合型選抜・学校推薦型選抜を目指す生徒向けに個別相談会を実施。株式会社オーナーの講師や大学生が生徒1人ひとりと向き合い、志望理由の深堀りや今後3年生に向けて実施した方がいいことのアドバイスなどを行いました。

個別指導を受けた2年生からは、


・自分がなぜこの学校に入りたいかをどのようにして言語化すればいいか、どのようにして深めたら良いかが分かった。

・なぜこの大学を選んだのかという志望理由と将来自分が何をしたいかをつなげるといいと教えていただいた。

・総合型選抜について具体的なことが分かっていなかったが、自分だけの強みを表現することや志望する大学のアドミッションポリシーを参照したうえでどのようなことを身につけていきたいかを伝えることが合格に結びつくことを学んだ。

などの感想が挙がりました。

菊地教諭は学校推薦型選抜・総合型選抜対策講座について、

1年生に対して、学校推薦型選抜・総合型選抜の概要を知り、大学進学の選択肢の中に、推薦の占める割合が多いことを認識させ、総合型選抜入試への出願者を増やすことを目的に実施しました。2年生に対しては学校推薦型選抜や総合型選抜への出願を予定している生徒に、受験までの間に取り組むべきことなどについて、具体的にアドバイスをすることで、生徒の取り組みのモチベーションを上げることを目的に実施しました。

事後アンケートで、ほぼ全ての生徒が、推薦入試に対する知識が深まったと回答し、自分が志望する大学以外の選択肢も提示してもらった生徒もおり、進路選択の幅が広がった様子が見られました。また、課題研究の成果を推薦入試にいかに活用するかという点で、有意義なアドバイスをもらうことができ、課題研究の振り返りを意識した生徒が多く見られ、次年度以降、推薦入試にチャレンジする生徒が増えることが期待できるのではないかと考えております。

と話していました。

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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