探究テーマ「食品ロス」
「食品ロス」とはまだ食べられるにも関わらず、捨てられてしまう食品のこと。「フードロス」とも呼ばれている。「もったいない…」ということや身近な問題であることから、探究のテーマとしている高校生もいるだろう。
2021年度の日本の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースで63%となっており、多くを海外からの輸入に依存しているにも関わらず、食品ロスが発生している。
日本のフードロスは、2020年度推計値で522万トン。2020年度のフードロス量は、2012年度に統計を開始して以来最小の値となった。減少傾向にあるものの、この量は国民1人が毎日お茶碗1杯分の食品を捨てている量に等しい。
高校生にとっても身近な「食」。どのような活動を行えばフードロスを減らすことができるか、ぜひ考えてみることが重要だ。
参考資料)2020年度の食品ロス量について(農林水産省発表、2022年6月)https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/220609.html
食品ロス量の推移(農林水産省)https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/attach/pdf/220609-5.pdf
「maff」2020年10月号(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
日本の食料自給率(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html
また、食品ロスについて、少し視野を広げて考えてみよう。食品ロスについては様々な解決策が多様な団体で展開されている。「食」に関わる人々がそれぞれの立場で行っている解決策には、どのようなものがあるだろうか。
フードバンク、フードドライブ
捨てられてしまう食品を企業や団体から集めて生活に困っている家庭に配る取り組みが「フードバンク」であり、各地でNPO法人や一般社団法人が活動している。また、一般家庭も含めて家庭で利用しない食品を集める「フードドライブ」という取り組みもある。街中で「フードバンク」や「フードドライブ」のためにいらなくなったが食べられる食品を回収している場所もある。身近な
外食産業での工夫
フードロスは大きく一般家庭から出る廃棄物と、食品を扱う企業・事業者から出るごみに分けられる。企業・事業者のうちレストランやホテルなどの外食産業でも様々なフードロス削減のための取り組みが進められている。
例えば、注文時にご飯の量を調節したり、生ごみを肥料にしたり、持ち帰り用の容器を用意するなど様々な工夫を行っている。また、例えば宴会や会食の時に最初の30分と最後の10分は食べることに集中することを促す「30・10運動」なども推奨されている。
規格外野菜や未利用資源の利用
1次産業の分野でも食品の廃棄を減らそうという取り組みが進められている。例えば傷がついていたり、サイズが合わなかったりして市場に出回らない「規格外野菜」の活用や、これまで市場に出回らなかった魚(未利用魚)を活用しようという取り組みが進められている。そのまま売ることができなくても、例えば加工食品にすれば販売することも可能かもしれない。利用されていない食材や食資源に着目すると、食品廃棄を減らすことができるかもしれない。
世界の食糧問題と人口増加
フードロスが課題視されている理由の1つが、世界における飢餓の問題だ。SDGsのゴールにも「飢餓をゼロに」という目標が掲げられており、世界中で多くの人が「貧困」に来る住んでいる。世界の飢餓問題に関心のある人は「ハンガーマップ」と検索してみよう。「ハンガーマップ」とは国連が世界の飢餓状況についてまとめたマップで、世界の国々の飢餓の状況を知ることができる。
外務省が制作したパンフレット「日本と世界の食料安全保障」によると、2017年には、世界の栄養不足人口は約8.2億人と世界人口の約9人に1人を占めている。紛争や干ばつ、洪水などといった気象災害などにより飢餓問題が深刻化していることが課題となっています。
参考)外務省パンフレット「日本と世界の食料安全保障」https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/dpr/page23_002948.html
また、今後世界の人口は増加していくことが予測される。人口が増加すれば、食料も必要になる。例えば牛肉や豚肉などを生産するためにも飼料のための穀物や水が必要になってくる。気候変動も懸念される中でどのように飢餓という問題に向き合っていくかが課題となっている。
探究テーマ「身近な食」
私たちは普段、食事をして生活をしています。食事をとらなければ生きていくことはできませんし、食べるものによって太ったり、やせたりなど私たちの身体にも大きな影響を及ぼします。それほど、私たちにとって「食生活」とは重要なものなのです。そんな日々の「食生活」の中で疑問に思うことはないでしょうか。
農林水産省が2018年度版の食育白書をもとにまとめた「数字で見る日本の『食』」というWEBサイトでは、「食」や「健康」に関する興味深いデータがまとめられています。
・「主食・主菜・副菜」を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べる人は約6割
・日本とアメリカで野菜をよく食べているのはアメリカ
・日本の「食品ロス」事情
参考)農林水産省「数字で見る日本の『食』」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/30hakusyo_info/index.html
1.「食生活」に関する疑問
私たちは基本的に朝・昼・晩と一日に三回食事をとります。しかし、朝は食欲がない、ダイエットをしているなどの理由で一日二食の人もいるかもしれません。一般的に一日三食が健康的、三食食べなければ逆に太るなどと言われていますが、本当にそうなのでしょうか。食欲がわかなくても朝ごはんを食べた方が良いのでしょうか。
厚生労働省の調査「国民健康・栄養調査報告」によると、朝食を欠食した割合は、20代男性27.9%、30代男性で27.1%。20代女性で18.1%、30代女性で22.4%となっている。1人世帯に限るとこの数字よりも高い傾向にあります。
参考)令和元年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)
朝食の欠食率については 第10表以降に掲載https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html
「なぜ野菜を食べなければいけないの?」
ビタミンや食物繊維が多く含まれる野菜。厚生労働省は成人の1日の野菜摂取量の目安を「350g以上」と定めていますが、前述の「国民健康・栄養調査報告」を見ても、日本人の平均はその数字には届いていません。1日に350gの野菜を摂取するためにはどのような献立が必要なのでしょうか。また、みなさんの中にも野菜嫌いの人がたくさんいると思います。どのようにすれば「野菜不足」を克服できるのでしょうか?
参考)厚生労働省「健康日本21」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
「どうして肉は生で食べてはいけないの?」
私たちは普段肉を生で食べることはありません。生で食べれば、食中毒などになる可能性があるからです。しかし、ステーキのレアや肉寿司、鶏刺しなど生肉を用いた料理もあります。どうして、これらの料理は生で食べることができるのでしょうか。そもそも、生肉はどうして食中毒を起こしやすいのでしょうか。
2.「食文化」に関する疑問
私たちは、住む地域の「食文化」に従って生活しています。他の国はもちろん、日本でも地域によって食文化は大きく異なります。食文化はその地域の特性を象徴するものであり、食文化を通じてその地域への理解を深めることができます。日本の食文化である「和食」は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されるほどです。自分たちの食文化について普段意識することは無いと思いますが、世界の食文化と比べて日本の食文化について見つめ直してみましょう。
「日本ではどうして箸を使うの?」
日本では食事をするときに箸を使います。お隣の中国や韓国では同様に箸を使っているものの、箸を使う人は世界の約28%にとどまっています。箸を使わないアメリカや他の国の人にとって、箸は非常に使いにくいものです。私たち日本人でさえも、時々使いにくいと感じることがあります。では、どうして日本では箸を使うのでしょうか。いつ、何がきっかけで使うようになったのでしょうか。
「日本にはどうして発酵食品が多いの?」
発酵食品とは、漬物や納豆などの食材を発酵させることによってできた食品のことです。他にも醬油や味噌、くさやなど日本には世界と比べても数多くの発酵食品が存在します。その特徴的なにおいから他の国の人から苦手とされることも多いです。どうしてそのような発酵食品が日本には多いのでしょうか。
「外国の人はどうして生ものが苦手なの?」
日本では刺身や卵かけごはんなど、生で食べる料理が多くあります。上でも説明したように、肉でさえ生で食べることがあるのです。これは世界でも珍しく、日本独自の食文化ということができます。では、どうして外国では生食が受け入れられないのでしょうか。どうして日本では生食文化が発展したのでしょうか。
3.「食器」に関する疑問
私たちは、食事をするときに必ず「食器」を利用します。茶碗や箸など、食器が無ければ食事をすることはできません。そんないつも利用している食器に対して疑問を持つことは無いでしょうか。どうしてこの食器を使うのか、どうしてこの名前なのかなど、その由来や歴史に着目しながら疑問を考えてみるのも面白いと思います。
「ごはんを盛るのにどうして茶碗なの?」
ごはんを盛り付ける器のことを、私たちは「茶碗」と呼んでいます。その名前には「茶」という文字が含まれているにもかかわらず、ほとんどの場合お茶ではなく、ごはんを盛り付けています。では、どうして茶碗という名前なのでしょうか。名前の由来について、調査してみましょう。
「茶碗は左、汁椀を右に置く理由は?」
日本では、ごはんが入った茶碗を左に、汁椀を右に置く置き方が基本とされています。普段意識することは少ないと思いますが、給食や家での食卓ではこのような置き方がされているのではないでしょうか。どうしてこの置き方がされるようになったのか、これに関しても日本の歴史となにか関連がありそうです。
「フォークの歯が3本、4本であるのはどうして?」
普段フォークの歯の本数について注目することは無いと思いますが、一度身近にあるフォークを見て欲しいと思います。そのほとんどが歯の本数が3本か4本のはずです。2本や5本でも良いように思えますが、どうしてこの本数なのでしょうか。
以上のように、身近なところに目を向けてみると様々な疑問が浮かび上がってくると思います。
「食」の探究に役立つWEBサイト
農林水産省「SDGsの目標とターゲット」
SDGsの17の目標と169のターゲットがわかりやすくまとめられている。「食」にまつわる企業や団体の取り組みも知ることができる。https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html
ジュニア農林水産白書
日本の「食」や農林水産業の現状についてわかりやすくまとめられている。特に1次産業を探究のテーマにしている皆さんは必見の内容となっている。https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_junior/
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