「米糀のあまさけ」で伝える「発酵」

安土桃山時代の1597年に創業した山形県米沢市の老舗酒蔵「小嶋総本店」。日本酒を醸造している小嶋総本店では「発酵食品」の魅力を多くの人に伝えようと、日本酒造りに欠かせない「糀(こうじ)」を使い、「米糀のあまさけ」を開発しました。中心となって企画・販売に携わった小嶋千夏さんに商品に込められた想いを伺いました。

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◆「みんなが食べられる発酵食品」の開発

私は夫が社長を務める小嶋総本店で働く前は,大手のベビーケア・フェミニンケアの会社に勤めていました。そこでは主に生理用品の商品開発に携わり,生理期間中の悩みや負担を軽減したいと考えていました。「自分自身や周りの身近な家族・友人が,快適かつ健やかに暮らせるようにしたい」という当時の想いは,その後の甘酒の商品開発にも生かされました。

「米糀のあまさけ」の商品開発の直接のきっかけは,自分自身が妊娠・授乳で飲酒を控えるようになったことです。酒蔵に勤めていることもあり,元々は日本酒を嗜むのが好きなので,最初は飲めないことが辛かったのですが,「身体に良く,アルコールが飲めない方や子供にも安心して口にしてもらえるもの」を作りたいと思うようになりました。また、人口減少に加えて、日本酒を飲む人口も減っているので、何かしなければいけないという思いもありました。

米沢は名前に米という字が入っているように,米の生産量が多い地域です。米は日本人の古くからの主食であり,日本酒もお米から作られています。そこで,「日本人に馴染みの深いお米を使った,みんなが食べられる発酵食品を何か作れないだろうか…」と考えていました。

そこで着目したのが日本酒を作るときに使う「米糀(こめこうじ)」です。糀はお米に「こうじ菌」という菌を入れてお米を発酵させて作ったもので、日本酒造りはもちろん、味噌や醤油などの発酵食品に使われます。

「日本酒」はお米と「米糀」を混ぜ合わせ、発酵させて作っていきます。小嶋総本店のものづくりを「お酒」から「発酵」ととらえ直すことで、お酒を飲めない方にも何か価値提供ができるのではないかと思えるようになりました。

◆それぞれに合った「米糀のあまさけ」

私たちはこの米糀を使った甘酒を作ることにしました。実は甘酒は栄養価が高く「飲む点滴」と言われたり、海外では「ジャパニーズ・ヨーグルト」と言われたりしています。「安心して飲んで欲しい」という想いから,「米糀のあまさけ」は山形県産米糀を100%使用し,自然の原材料だけで作ることにこだわっています。化学調味料、人工甘味料は添加していません。

お酒を絞った後に出る「酒かす」で作る甘酒は砂糖が添加されていたり微量のアルコールが入っていたりする場合があるのですが、「米糀」で作るこの甘酒は砂糖もアルコールも入っておらず、自然の甘さを美味しく味わえる飲み物です。実際に企画し始めたのは2020年の5月頃で,多くの方の協力を得て,約1年かけて味やパッケージの内容を考えました。

「米糀のあまさけ」は3種類の味のラインナップを取り揃えています。

1つ目はシンプルな甘酒、「pure」。朝に通勤・通学で忙しい人が手軽に栄養補給できることを意識して,持ち運べる形状のパッケージにしました。身体に良い甘酒をより美味しく,かつ日常生活の中に取り入れてもらうには「手軽さ」が大切だと考えました。皆さんもゼリー飲料で栄養補給をしたことがあるかと思いますが、同じような手軽さを目指しています。

そして、もう2種類は野菜や果物を加えて「スムージー」のように飲めるものにしました。

野菜や果物を加えたあまさけを用意しました。野菜や果物を加えることで,あまさけ特有の風味を抑え,飲みやすさを意識しています。米沢の伝統野菜のウコギや小松菜,りんごなどを使い,朝にピッタリなスッキリとした味のwake up green。

抗酸化力の高いベリー系やビーツなどを使い,美容を考えたbeauty up。

例えば毎朝スムージーを作ろうとすると,野菜や果物を用意して包丁で切り,ミキサーにかけて作った後,ミキサーの刃も含めて使ったものを全て洗う必要があり,想像以上に手間がかかります。野菜や果物を入れた甘酒なら、その手間もなくなります。これは自分が子育てをしている時の家事の経験から感じたことです。このように,商品開発の際には自分の身近な人の生活を考え,その人たちが喜んでくれるような商品作りを心掛けています。

◆酒造り以外の可能性

若い人の日本酒離れが進んでいますが,一人でも多くの方が「米糀のあまさけ」を通して日本酒や酒蔵に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

また、酒造り以外の可能性もどんどん広げていきたいと思っています。酒かすのかす漬やかす汁のような食文化もそうですし、化粧品などの開発も進めていきたいと考えています。実は日本酒はお肌にも優しく、酒造りをしている杜氏さんの手はつやつやです。昔の芸者さんが日本酒を化粧水として使っていたというお話があり、大手化粧品会社も糀を使った化粧品を出しています。

写真提供=小嶋総本店・小嶋さん

◆おすすめの本
藤尾秀昭「小さな人生論:『到知』の言葉」(致知出版社)
これからを生きていく上で、とても大切な考え方や言葉に出会える貴重な本です。人との縁と同様に、本との縁も大切。ぜひ若い時に出会ってほしい一冊です。「自分の花を咲かせて生きる」の一文を紹介。「私たちは生きているというだけで、すでに花は咲いている。しかし、丹精を込めた花がさらに見事に咲くように、私たちも自ら意志することで生命をさらに輝かせ、深い花を咲かせることができるのだ。」

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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