おいしいジェラートを届ける 商品とお店の工夫

甘くておいしいジェラート(アイスクリーム)。皆さんも一度は口にしたことがあるのではないかと思います。このジェラートと地域の食材を組み合わせ、地域活性化につなげるという取り組みがあります。ジェラートの裏側に込められた思いを、ジェラートの商品開発・販売をしているGM7(宮城県丸森町)に聞きました。

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牛乳の生産が盛んな丸森町

宮城県の県南に位置する丸森町。牛乳の生産が盛んで、農家さんたちが牛の健康を一番に考え、無理をさせずに飼育しており、風味豊かでコクがある牛乳が生産されています。ただ、町外の人は、あまりそのことを知りません。牛乳が地域の魅力として生かされているわけではありませんでした。

第6次産業化でジェラート開発

そこで、丸森町産の牛乳をジェラート(アイスクリーム)に加工して販売できないか、というプロジェクトが始まりました。なぜジェラートか、1つ目の理由は、保存がきくことです。ふつう、牛乳の賞味期限は1週間ほどになります。しかし、ジェラートにしてしまえば冷凍保存ができるので、長期間保存できます。

もう1つの理由は、丸森町の様々な特産品と組み合わせることで、色々な味のジェラートを生み出せることです。例えば、はちみつやえごま、桑の葉など、ジェラートに使える食材が丸森町で生産されていました。丸森町全体をPRしたい商品になるように、色々な味を試し、商品にしました。

ジェラートを作り、そしてお店を出して販売するには、お金が必要です。インターネットで寄付を集める「クラウドファンディング」の仕組みを活用し、お金を集めました。そして発案から1年ほどで、念願のジェラート店をオープンし、のちにインターネットでもジェラートを売り出しました。

実は、商品開発の方法として、「6次産業化」というキーワードがあります。第1次産業(生産)、第2次産業(加工や製造)、第3次産業(販売)の3つの組み合わせを使えば、地域の経済が盛り上がるという仕組みです。

このジェラート開発はまさに6次産業化の例になります。おいしい牛乳を加工してジェラートにしました。最後は、実際の店舗やインターネットで販売することで、お金を稼ぐことができました。

[課題解決のステップ(6次産業化)]

美味しいジェラートを届ける工夫

この美味しいジェラートを、仙台市郊外のアウトレットパークにある、「ジェラテリア・ラ・フェスタ三井アウトレットパーク仙台港店」で味わうことができます。

仙台で古くから続く果物店とコラボレーションしており、ジェラートと美味しいフレッシュジュースを販売しています。店長の菊地祥子さんに、販売の工夫を聞いてみました。

まずは商品について。通常の商品に加えて、ジェラートにフルーツを載せた特別な商品を販売しています。いちごや「シャインマスカット」などフルーツを載せたジェラートについては通常よりも価格をあげたプレミアム商品として販売。宮城県東松島市で栽培された「矢本のとちおとめ」を載せたジェラートはとてもおいしかったです。菊地さんは「素材の味がメインに出るのがジェラートの特徴です。ジェラートに使う材料も限られています。その条件の中で、いかに素材の味を壊さず、おいしさを引き出しジェラートという商品を完成させるのが楽しく続けています。色々な食材でジェラートを作ってみたいです」と教えてくれました。

もう1つの工夫が、お店の「導線」。「導線」とはお客さんが歩くルートのことです。以前、ジェラートとジュースの売上を比較すると、ジュースの方が多かったのです。美味しいジェラートを味わってもらうために、もっとジェラートを販売を増やすにはどうすればいいか?を考えた結果、考えたのがお店の導線でした。

ジェラートが目に入るように導線を工夫。また、目立つところに大きな看板を置きました。確かに実際に歩いてみると、色とりどりのジェラートが自然と目に入り、ジェラートを買いたくなるような気分になりました。(実際に歩いてみた動画は↓)

このようなプレミアム商品やお店の導線の工夫を行ったきっかけは、新型コロナウイルスでした。コロナの影響で休業や営業時間の短縮をしなければならず、コロナ前はアウトレットパークに来てジェラートを購入していた外国人観光客の方も減少しました。難しい状況の中でも、「美味しいジェラートを販売して、お客さんに届けたい」その思いで色々な工夫を重ねてきたそうです。

「ジェラテリア・ラ・フェスタ」では、季節に合わせた商品開発にも力を入れており、「父の日」、「母の日」、「クリスマス」などにはジェラートで創った「ジェラートケーキ」を販売しているそうです。他にもインターネットでの販売や仙台市内の自動販売機での販売、大学生と連携した「お中元」商品づくりなど、様々な商品づくりに挑戦されているそうです。菊地さんは「自分の頭の中にある美味しい、の組み合わせを実際自分の手で作り上げたものが商品となり売れた時。お客様の手に届いた時はやりがいを感じています」と話していました。

「ジェラテリア・ラ・フェスタ」インスタグラムはこちら

https://www.instagram.com/gelaterialafesta/?hl=ja

特産品に「付加価値」をつけていく


このジェラートについて探究してみて、商品開発のはじまりは地域の魅力的な特産品を見つけることだということに気づきました。例えば、肉や野菜、魚や果物など地域でとれる特産品は地域の資源です。そこに「付加価値」をつけていくということが大切。例えば魚を生のまま売るよりも、干物にした方が長持ちします。缶詰にすればさらに日持ちして運びやすいので、日本全国、あるいは海外まで運ぶことができます。このように加工したり、「ブランド」にしたりすることで、「付加価値」が加わりより経済を豊かにする商品になる可能性があると感じました。

そして、いつも食べている「食」にも関わらず、商品を作っている方々のお話を聞く機会は少ないと感じました。普段何気なく食べているものでも「生産者」の顔が思い浮かばない。例えば農家さん、漁師さんはどんな思いでこの食べ物を作っているんだろうか、それを想像するだけでも、探究のテーマ設定につながっていくと思いました。

◆おすすめの本
川田勝彦「オーボンヴュータン河田勝彦の永久定番菓子」(河出書房新社)
古典菓子を販売している老舗の洋菓子店のオーナーのレシピ本です。これは私が好きなお店の本です。基本を忘れてはいけないと思い返しながら読んでいます。

ベルナール・ラウース他「香りで料理を科学するフードペアリング大全」(グラフィック社)
素材の組み合わせを知れる貴重な本です。科学的に相性が良い食材を知ることは今まで食べたことのないペアリングを勉強できるので楽しく読んでいます。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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