漬物に健康をプラス!「味よしプラス」開発ストーリー

青森県を中心に「ねぶた漬」、「味よし」などを製造販売する漬物メーカーのヤマモト食品。その代表取締役社長である山本浩平さんは、「健康」をテーマに新たな商品開発にチャレンジをされています。そのストーリーを伺いました。(写真提供:ヤマモト食品)

目次

「味よし」の誕生と挑戦

私たちが生産している「味よし」は、青森県産の大根・きゅうりと小粒の数の子、昆布、するめが入ったしょうゆ漬けです。

青森はかつて「北前船」が行き交い、その影響で刻んだ昆布と野菜を一緒に漬物にする文化があり、家庭でその漬物が作られていました。だんだん家庭では作られなくなりましたが、1960年に「味よし」を発売。その後数の子を多めに加えた「ねぶた漬」を開発しました。

「味よしプラス」の製造工程 ※音声が出ます

転機となったのは2020年のことです。「味よし」が発売から60年目となるタイミングで、何か新しいことができないかということで、「味よし」の新商品の開発に着手しました。ちょうど青森県でも「短命県返上」のために健康の向上に対する取り組みを進めており、自分たちも「味よし」を食べることができれば健康になるというポジティブな打ち出し方ができないかと考えていました。

機能性表示食品「味よしプラス」

我々は「水溶性食物繊維」(イソマルトデキストリン)を配合して食物繊維を従来品の2倍とし、塩分を従来の25%オフにしました。ネーミングについては、食卓に健康をプラス、「味よしに健康をプラス」という意味を込めて、「味よしプラス」という名前にしました。さらに、発売から翌年には「機能性表示食品」を取得しています。

実際に食べてみると、結果的に塩気が薄まり、甘味や旨味が際立つようになりました。お客様からは「減塩により味が変わるかと思ったがそんなこともなくおいしく頂けた」、「塩分控えめでも十分美味しい」というお声を頂いています。

結果的に初年度の「味よしプラス」の販売数は13万袋。しかも、もともとの「味よし」の販売数は減らず、売り上げにもプラスになりました。

どういうことかというと、塩分を気にして、漬物をなかなか買えなかった方が「味よしプラス」を買ってくれたのだと思います。消費者の方に選択肢を増やすことができたのだと思います。新たに「健康」を気にする方のマーケット(市場)に商品を届けることができたということです。また、塩気が減ったことにより他の具材と味の面で調和がとりやすくなった結果、他の商品とのコラボもできるようになり、現在では岩下食品様の「岩下の新生姜」や日本三大七味の一角、根本八幡屋磯五郎様の七味唐辛子とのコラボレーションなどもできるようになり、「味よし」の味の種類はどんどん増えています。

さらなる挑戦

商品開発をするときには「売り方」もセットで考えられるといいと思います。せっかくいい商品を作ったのに、お客様に売れないと意味がない。商品をお客様が手に取り、代金を支払っていただいて初めて商売として成立します。売れる予想が外れて商品が倉庫にたまってしまってはいけないのです。なのでテレビCMを入れながらお客様に商品の情報を届けることにも力を入れています。

私たちは「味よしプラス」とは別の取り組みで、最近魚卵の自動販売機を始めました。数の子やタラコ、筋子を自動販売機で販売しています。技術の進化で、最近は冷凍したものを販売できる自販機があります。市街地から離れた、私たちの工場の前に設置しています。

ツイッターで宣伝しましたが1000件以上リツイートされ、かなり反響がありました。そして、意外と売れるんですよね。コロナ禍で対面販売を避ける方もいるのだと思います。商品は、売ってみないとわからない。みなさんも商品を考えたり、作ったりして終わりではなくぜひ誰かに売ってみるというところまでチャレンジしてみるといいと思います。

◆おすすめの本
呉兢「貞観政要」(筑摩文庫)
中国史上最も安定した時代を治めたと言われる唐の第二代皇帝・太宗(李世民)と重臣たちの問答を編纂したもの。明治天皇や徳川家康がこの本から「帝王学」を学んだという。山本さんも「古典から学ぶことは多い」と語ります。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=山本さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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