ロボット・AIを活用した「ラボオートメーション」で研究の未来を切り開く

医大生研究の未来を切り開くという大きな目標に向かって、ロボットやAIを用いたラボオートメーション(研究の自動化)の実現を目指してきた東北大学大学院の永田将真さん。最終発表会では熱いプレゼンテーションを披露し優秀賞を受賞しました。

大学時代に起業した永田さんはMiTOHOKU Program期間中、メインメンターとのメンタリングなど、メンターからの助言を受けたことが会社としての成長やプロダクト開発の加速につながったと話します。どんな学びや気づきがあったのかお話を伺いました。

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経営者の先輩からの貴重な助言

幼少期から研究者への憧れを抱いていた永田さん。東北大学に進学後、1年生のときから面白そうな研究室を訪問。そこで、研究費用の少なさやアカデミアを取り巻く将来について厳しい現実があることを知りました。大学3年生の時には「研究コミュニティミツバチ」を立ち上げ、研究好きの学生が集うコミュニティを創りました。さらに、大学4年生の終わりにQueeenBを創業。会社の経営面での成長やプロダクト開発をMiTOHOKU Programで進めてきました。

やりたい研究に時間を使えるようにするために科学研究をますます効率化する必要があると考えた永田さん。「研究者が生き生きと研究できる社会」を実現すべく、ラボオートメーション(研究の自動化)に関するプロダクト開発を進めてきました。

MiTohoku期間には計画していた通り、新たに開発メンバーを採用し、東京にも開発拠点を設けました。しかし、開発にかかる費用が増え、チームのメンバーも増えて社内でのコミュニケーションも大変になっていきました。永田さんは、「事業が大きくなればなるほど、夢も見えるが、会社としての死も見えるようになった」と振り返ります。

会社経営に悩んでいた永田さんにとって貴重だったのは、メンターの淡路義和さんとのメンタリングでした。淡路さんのことは以前から知っていて、仙台の経営者団体の集まりなどで顔を合わせたらお話をする仲でした。今回淡路さんが「メンター」となったことでより深い話をしたり、なんでも相談できる関係になりました。
「緊急ではないが重要なことに集中しよう」、「何のために資金調達をするのかを冷静に考えよう」、「会社の価値を高めるのは、顧客満足度、従業員満足度、そして実績」。失敗も含めた淡路さん自身の経験を踏まえたアドバイスから、永田さんはたくさんのことを得ることができました。

=メインメンターの淡路さん

永田さんは淡路さんとのメンタリングを通し、「今まで、目先の売り上げやお金の調達といったところに目がいってしまうことが多かったが、会社のミッション・ビジョンを考えることやメンバーの満足度も高めていく必要がある」という学びを得ました。また、金融機関の担当者や専門家などを紹介していただいたこともとても貴重だったそうです。

自由度の高い開発資金がプログラムの魅力

永田さんは、MiTOHOKU Program期間中に、経営面での改善と両立して、プロダクト開発も加速させました。「MiTOHOKU Programは、開発の自由度が高いことが魅力」と話す永田さん。3Dプリンターやロボットなど設備投資にお金がかかるため、自由度が高い開発資金を最初に受け取れるという仕組みのおかげで、自由に開発を進めることができたと言います。その結果、東北大学との共同研究で開発したものをベースに、商品化が進み、実際に販売が決定。当初検討していた研究分野以外へのニーズがあることもわかり、複数の商談が進んでいるそうです。

「未踏」への挑戦、そして海外展開へ

MiTOHOKU Programに参加した他のクリエータからの刺激も多かったという永田さん。大学の先輩でもある「purple」の久保田さんとは、昨年度一緒にフランスに研修に行き、「てんかん医療への思い、ディープテックという領域に対する真摯さがすごい」と感じたそうです。久保田さんと同じプログラムで肩を並べながら切磋琢磨できることがモチベーションになっていると言います。

今後は、次なるステップとして「未踏プログラム」に挑みます。MiTOHOKU Programに参加したことで、プロダクトが整理され、「未踏」に向けての準備も進めることができたと言います。MiTOHOKU Programの最終発表会が1月末、「未踏」の公募は3月からとタイミングも非常によく、「MiTOHOKU Programに参加しなかったら、『未踏』への参加もなかった」と話します。

将来的に、海外マーケットへの進出や研究者のコミュニティを広げていくことも視野に入れているQueeenB。研究の効率化は世界共通の課題であり、先進国では同様のプロダクトがあるものの、シンガポールなど、大学での研究が盛んな東南アジアでは可能性があると見ています。これまで研究者コミュニティを創ってきた経験も生かし、QueeenBが構想したプロダクトを利用する研究者たちのネットワークやコミュニティも創っていこうと構想しています。

最終発表会で「私たちのミッションである『人類の知を支える』を実現したい」と話した永田さん。MiTOHOKU Programでの成長を経て、研究の未来に向けてQueeenBは次なる挑戦へと踏み出します。

MiTOHOKU Programとは

「MiTOHOKU Program」とは、東北にゆかりのある未踏的若手人材を発掘・育成するプログラムです。「起業家・専門家集団による伴走支援」により、若手人材の「前人未踏」のアイデア実現を支援します。






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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

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