仙台市中高生向け起業家講師による出前授業出前授業実施レポート(仙台市立茂庭台中学校)

【概略】
・仙台市立茂庭台中学校2年生を対象に、起業家講師による出前授業を実施。
・講師は、株式会社トーシン(福島県新地町)代表取締役の日下智子さん。
・新地町周辺で水揚げされたタコを使った「タコシウマイ」のブランドストーリーを通じて、地域資源を仕事に変え、誰かの「困った」を解決する日下さんの働き方を紹介。
・職場体験を控えた生徒たちに、「働き方も正解も一つじゃない」、「自分らしい働き方を思い描き人生を楽しもう」と伝えた。

目次

タコシウマイのおいしさに驚く生徒たち

2026年9月11日、仙台市立茂庭台中学校で、起業家講師による出前授業を実施しました。茂庭台中学校は仙台市郊外の団地の中にある学校です。団地には小学校・中学校がそれぞれ1つずつ。スーパーやコンビニ、公園などもあり、団地の中で生活が完結します。職場体験の事前学習の内容を検討している中で、「働くとは何かを考え、広い世界を知る機会を生徒たちに設けたい」と、先生方が企画した今回の授業。講師を務めたのは、福島県新地町の株式会社トーシン代表取締役の日下智子さんです。仙台市主催の社会起業家育成・支援プログラム「Tohoku Social Impact Accelerator(SIA)」にも採択され、「浜福のタコシウマイ」というブランドで地元のタコを使ったシウマイを開発し全国に届けています。

講演の冒頭、日下さんは生徒のためにと、福島から持参した自社製品のタコシウマイを振る舞ってくださいました。事前にタコシウマイを調べていた生徒たちからは歓声が上がりました。

「まず香りを確かめてみてください。そして、ゆっくり噛んでいただくと、口の中にタコのつぶつぶが残ります」

「1つ1つ、浜のお母さんたちが手作りしています。お醤油も何もつけなくても、しっかりと味がついていて、海の香りが広がりますよ」

日下さんの説明を聞きながら味わった生徒たちからは、「おいしい!」「うまい!」と自然に声が上がりました。

仕事も働き方も、1つじゃない

会場の雰囲気が和らいだところで、日下さんは生徒たちに問いかけました。「皆さんは将来、何になりたいですか?」

日下さんは続けて「どんな家に住みたい?」「誰と暮らしたい?」「どれくらいの収入があったらいい?」など、職業に限らず将来の暮らしについての問いも投げかけました。

「なりたい職業だけを考えると、視野が狭くなることもあります。どんな暮らしをしたいかを考えて、そこから仕事を探していくのも一つの選択肢です」日下さんが伝えたのは、仕事を「職業名」だけで考えないという視点でした。

そして、この日の授業で持ち帰ってほしいこととして、3つのキーワードを示しました。

「キャリアは一直線じゃない」、「働き方は一つじゃない」、そして「小さな一歩が未来をつくる」。

日下さん自身のキャリアも、決して一直線ではありませんでした。中学生の頃は、あまり目立ちたくないのに身長が高いことがコンプレックスで、背中を丸めて歩いていたそうです。一方で、コンピューターに憧れ、知識をつけるために工業高校へ進学。高校卒業後は東京の電機メーカーに就職しました。

その後、20代半ばで地元・新地町へUターンし、事務用品の会社の事業承継を受けます。その後、得意のパソコンスキルを活かした新規事業の立ち上げなどにも取り組みました。そして2011年に発生した東日本大震災で、海沿いの新地町は甚大な被害を受けます。日下さんは地域の人たちとNPO法人を立ち上げ、被災者支援や復興のまちづくりに取り組みました。

復興が進み港が復旧した一方、震災の影響で町からはスーパーマーケットや魚屋さんがなくなっており、地元で水揚げされた海産物を地元の人が食べることができない状況となっていました。

「漁師さんたちが獲ってきた海産物を、みんなに届ける方法がない」

その「困った」を解決するために生まれたのが、タコシウマイです。

日下さんたちは新地町のタコを使ったタコシウマイを手作りで作り、福島県内だけではなく、関東、関西など全国各地に届けています。タコを自分たちで加工し、販売する「6次産業化」に取り組むことで、1つの商品に漁師、加工する人、運ぶ人、商品を企画する人、パッケージのデザイナーや販売する人など、さまざまな仕事が関わっていることも紹介しました。

「困った」を見つけ、まず動いてみる

「起業とは、特別な人だけのものではありません」と日下さんは話します。起業とは、会社をつくることだけではなく、「困った」を見つけ、解決方法を考え、形にして届けること。また、「気づく→考える→動く→届ける」というサイクルでまず一度やってみることから本当の学びが生まれること、そして自分にとっての「好きなこと」「困っていること」「できること」の3つが重なるところに、起業の種や将来の仕事につながるヒントがあるかもしれないと伝えました。

最後に日下さんは、「働き方は1つじゃない。正解も、1つじゃない。途中で変えてもいい。やり直してもいい。自分の『好き』や『気になる』を大切にして、自分らしい未来をつくっていこう。人生を楽しもう!」と、生徒たちにメッセージを送りました。

お礼の言葉を述べた生徒は、「小さな興味が次の道しるべになるという言葉が印象に残りました。私はまだ将来何の職業になるのかわかりませんが、興味が湧いたら挑戦して、一本道じゃなく、いろんな将来への道を作って、人生を楽しみたいと思いました」と話しました。

また、企画した先生方は、「これからは色々な職業を経験する世の中になる、というメッセージが心に残りました。これからも多様な職業の方との出会いを作っていきたいです」と話していました。

今回の授業は、これから職場体験に向かう生徒たちが、「どんな仕事に就くか」だけでなく、「どんなふうに働きたいか」「どんな暮らしをしたいか」「誰の役に立ちたいか」を考えるきっかけとなりました。

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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

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