探究テーマ「薬と健康」
日本は医薬品の消費量が多く、医療用医薬品と一般用医薬品の両方が広く利用されています。新型コロナウイルスに対する治療薬の開発など、新しい薬の開発も進行中です。薬と健康はどのようにかかわっているのでしょうか。
薬の消費量
日本は薬の消費量が多い国である。医療が発達して病院で処方されたり、使用されたりするような医薬品の他に、風邪薬や鎮痛薬、胃腸薬など、すぐに店で買えるような一般用医薬品も選びきれない程ある。厚生労働省の調査によると、令和2年の時点で輸出額が約5125億円に対し、輸入額が2兆8534億円であり大きく輸出額を超過している。また、世界の医薬品市場でも日本は上位に位置している。日本が先進国であるというのも原因の1つではありそうだが、日本はすぐに医薬品に頼れるほどに、薬に恵まれた国であることがわかる。
また、薬の開発は常に行われており新しい薬が登場している。例えば新型コロナウイルスに関しても、当初は治療薬はなかったものの、重症化した患者向けの治療薬が開発されている。
参考資料:厚生統計要覧(令和3年度)医薬品輸出・輸入金額・指数,年次×州
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_2_4.html
薬の効果
薬が効く方法は主に2種類ある。1つ目は、病気のもとになる菌などに直接効く方法である。これは、医師から処方される薬や医療で使用する薬に多い。2つ目は、人間の体に備わる機能を利用する方法である。人間には痛みを感じさせる物質やアレルギーを起こす物質などを作り、分泌することで体の異変を知らせたり体を守ったりする機能が備わっている。それらの物質を作らせないようにしたり、分泌させないようにしたりすることで薬が効果を発揮するのである。このような薬は、ドラックストアなどですぐ買える薬であることが多い。
薬を多く使用しすぎると効きが悪くなることがある。これは、その薬への耐性がついたということである。耐性はよっぽど長時間服用していないと起こらない。しかし、長時間服用すると今まで出なかった副作用が出てきたり、免疫力が低下したりする。薬が効きにくくなったとしても、量を増やしたり飲み続けることは良くない。
また、人によって同じ薬でも効きにくさが異なる。性別や脂肪率などでも効きやすさが異なる。さらに、併用してる薬によっても効きやすさが変わってくるため注意が必要である。
ジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品とは、新薬と同じ有効成分を含み厚生労働省の許可を得て販売される医薬品である。新薬よりも開発費が少ないため、より安価で得ることができる医療用医薬品である。新薬は特許期間があるが、その期間を過ぎると他の製薬会社が同じ成分で薬を作ることができる。製薬会社が異なるため、添加物や形、色が違う場合があるが、有効成分が同じであるため効き方や、副作用は同じである。
薬機法
薬は基本的に医薬品と呼ばれ、医療用医薬品と一般用医薬品の2種類に分けられる。医療用医薬品は処方箋医薬品とそれ以外の2種類、一般用医薬品は第一類から第三類と大きく3つに分けられる。数字が小さいほど摂取した際のリスクが高い。これらの分類によって、ネットでの販売が可能か、対面でのみ販売が可能かなど細かく決められている。
このように、医薬品を細かく分類したり、薬を販売する際に必要になる登録販売者や薬剤師のような人材を規定する法律を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称薬機法という。
探究テーマ「肥満と健康」
肥満は健康を害する可能性があり、高血圧や糖尿病などの合併症を引き起こすことがあります。子どもの運動不足やファストフードの流行など、肥満は多面的な要因により引き起こされる複雑な問題です。肥満と健康について考えてみましょう。
日本人の肥満率
肥満とは病気ではなく、太っている状態のことを表す。肥満かどうかを判断する基準として、世界的にはBMI(Body Mass Index)が用いられている。BMIは、体重(㎏)÷身長(m)の2乗で求めることができ、日本肥満学会はBMI25以上で肥満であると定義している。肥満が原因で健康を害することもある。息切れ、動きにくいなどの症状の他に、高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの合併症が起こるときもある。また、肥満を原因として睡眠時無呼吸症候群が起こったり、脂肪肝や胆石症になったりする可能性もある。これらの病気は内臓脂肪型肥満によって引き起こされることが多いと言われている。
このBMIという指標は、18歳以上の成人に当てはまるものであり、成長途中である17歳までは成人とは異なる方法で肥満度が算出される。算出方法は下記の資料から見られる。
参考)文部科学省「学校保健統計調査ー令和3年度(確報値)の結果の概要-」
肥満・瘦身傾向児の算出方法について
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1411711_00006.htm
令和元年の厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、肥満者の割合は男性が33.0%、女性が 22.3%であり、この10年間で女性に大きな差はみられないが、男性の肥満者数は2013年から増加している。
参考)厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
子どもの肥満
子どもの肥満については文部科学省の「学校保健統計調査」の調査から知ることができ、また「都道府県表」からは県ごとのデータも知ることができる。また、2020年からは新型コロナウイルスの流行により学校が休みになり、運動量が落ちたことが肥満度が下がらない原因であると見られる。
政府統計の総合窓口(e-Stat) 学校保健統計調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400002&tstat=000001011648
例えば福島県では近年、肥満児の割合が5~17歳の全ての年齢で全国平均を上回っている。福島県では2011年の原発事故前から子どもの肥満率が全国平均よりも高かったが、事故後は一段と悪化し、2012年度では5〜9歳などが全国ワースト1位になった。これは屋外活動が制限されたことによる影響という指摘がされている。
肥満の要因
人間含め動物は食べることでカロリーを摂取し、運動をすることでカロリーを消費し体重や体の脂肪の量を保っている。カロリー接種量がカロリー消費量を上回ると、体の中で栄養が蓄積され脂肪が増えていく。こうして肥満になっていくのだ。例えば、食べ過ぎと運動不足であることは肥満の直接的な原因となり、他にも、偏食やストレス、遺伝的要因で肥満になる事がある。
肥満と国民の意識
近年は毎シーズンのように新たなジャンクフードやスイーツが開発され、インターネットやテレビのコマーシャルで流れる。また、ファストフードが流行り、安くてカロリーの高い食べ物が身の回りにもある。健康的な食事への意識と肥満との関係を考えてみてもよいだろう。
屋外の遊び場の減少と肥満
子供の肥満率増加の要因として運動不足が挙げられる。なぜ、運動不足になるのか。原因はいくつかあるが、例えば仮説の1つとして、スマートフォンのゲームなど屋内でできるゲームの浸透があるだろう。また、遊び場の減少も考えられる。近年、公園の利用方法に制限が設けられていたり、「大声禁止」などの注意書きがあったりすることもある。このような理由から、子供の足が公園から遠のいている可能性もあり、近くの公園の状況について見てみるのもいいだろう。
政府統計の総合窓口(e-Stat) 統計FAQ 23C-Q02 公園の数、面積、利用者数等
https://www.stat.go.jp/library/faq/faq23/faq23c02.html
探究テーマ「ヤングケアラー」
ヤングケアラーとは一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことを指す。法令上の定義はないものの「こども家庭庁」の「ヤングケアラーについて」というサイトには「ヤングケアラーがしていること」として、食事の準備や掃除や洗濯といった家事、見守り、きょうだいの世話、感情面のサポートなどが挙げられている。
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
出典:こども家庭庁 ヤングケアラーについて
https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer/
ヤングケアラーはどのくらいいるのか
令和2年度に中学2年生・高校2年生を、令和3年度に小学6年生・大学3年生を、それぞれ対象にした厚生労働省の調査では、世話をしている家族が「いる」と回答したのは小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%であった。これは、回答した中学2年生の17人に1人が世話をしている家族が「いる」と回答したことになる。
出典)文部科学省「ヤングケアラーに関する調査研究について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/mext_01458.html
ヤングケアラーの生活への影響
自分の時間が取れない、勉強する時間が充分に取れない、ケアについて話せる人がいなくて孤独を感じる、ストレスを感じる、友人と遊ぶことができない、睡眠が充分に取れない、などが挙げられる。こどもや若者が担うケアの負担は大きい。
一方で、家事や家族の世話などを若い頃に担った経験をその後の人生で活かすことができている、と話す元ヤングケアラーがいることもまた事実である。
こども家庭庁 こどもがこどもでいられる街に
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/
ヤングケアラーはどのような支援を受けられるか
スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、キャンパスカウンセラーなどを含めた校内支援会議の場で、状況を把握してもらえる。幼稚園や保育所、小・中学校などの前に所属していた校園や、兄弟の所属する校園との連携によってさらに支援してもらうこともできる。児童福祉関係機関と連携する場合もある。そこから、児童ケースワーカー等が家庭に必要な関係機関(高齢、障害、保健など各関係機関)との支援の調整を行ってくれる。
心理的な支援だけでなく、家庭支援や環境調整をしてもらうこともできる。関係機関との連携をしてもらうときには、個人情報に配慮してもらおう。
探究テーマ「健康診断」
健康診断には様々な種類があります。普段何気なく受けている健康診断も、その是非やあり方が問われています。健康診断にはどんな種類があり、どんなことを調べてみるとよいのでしょうか。
健康診断の種類
健康診断には様々な種類がある。学校で受ける学校健康診断や会社に所属している人が受ける定期健康診断、がん検診など特定の病気になっていないかを調べる健康診断などである。実際にどのように種類分けされているかを見てみよう。以下が代表的な健康診断の種類となっている。
一般健康診断
一般健康診断は企業に勤めるすべての労働者が対象となるもので、実施することが企業に義務づけられている。定期健診の他に特定の人に対して行うそれぞれの健診がある。
特殊健康診断
特殊健康診断は法で定められた有害業務に従事する従業員に対して行うものである。有害な物質が身近にあるような仕事を行う者の安全性を確保するために実施されている。
行政指導による健康診断
これは法律によって定めれれていないが有害であると判断された業務をする者に対して行政が推奨する健康診断である。例えば、騒音の中の業務や腰に大きな負担をかける業務をする従業員などに対して行われる。自治体によっても内容は異なる。
がん検診
胃がん、乳がん、子宮がんなどを早期発見するための検診である。これは、任意で行われることが多い。
このほかにも、未就学児や妊婦が行う健診、年齢によっても様々な健康診断が日本にはある。
がん検診の受診率
日本では「がん対策推進基本計画」に基づき受診率50%を目標に掲げている。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、受診率は年々増加してるものの、2019年時点で5つのがん検診の中で50%を超えているのは男性の肺がんと50~69歳の男性の胃がんのみという結果であった。
参考文献:がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening/screening.html
健康診断の必要性
日本は一回の健診で10以上の検査を行う。これに対し、アメリカやイギリスでは検査は5つも無いほど少ない。なぜ、日本はこんなにも検査量が多いのか。そして、こんなにも検査は必要なのだろうか。
健康診断は病気を発見するためというより、病気の可能性がある人間とそうでない人間を振り分けるためのものであるという。このため、ある病気にかかっている可能性が著しく低い人間はその病気の健診は必要ないのではないか、と考えられる。また、健康診断が始まってから何十年も経っている今、検査方法を変えた方がいいものもあるのではないか。検査の内容を見直す必要があると考える人もいる。
学校の健康診断
学校では小学校、中学校、高校と毎年健康診断が行われている。また、座高検査や寄生虫卵検査など、撤廃された診断や運動器検査のような新たに付け加えられた検査があり、検診時の服装についても配慮するようにという声も上がっている。
このように、学校、特に小中学校での健康診断は決まりが曖昧であったり、減らされたり増えたりする検査もあったりとまだまだ発展途上である。身近な学校健康診断、それぞれの検査がなぜ必要なのか、どこに有効なのかを考えてみよう。
「医療・健康・福祉」の探究に役立つWEBサイト
WAM-NET
独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・保健・医療の総合情報サイト。福祉・保健・医療に関するニュースや各種制度の説明が充実している。トップページ下にある介護・医療・福祉に関する特設サイトも豊富。
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/
国民健康・栄養調査
厚生労働省が毎年実施している調査で、国民の身体の状況や生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的としています。
具体的には、食生活状況、各種身体・血液検査や飲酒、喫煙、運動習慣などを調査しており、国民の健康状態の把握に役立ちます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
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