自然観察の先生—冬の初めの自然観察ポイントをご紹介—

気象予報士で自然科学系ライターをしているわぴちゃんさん。書籍やテレビで拝見する現在のご活躍にいたるまで、実は学校に行けなくなったという過去がありました。どうやって乗り越えたのか、そして今の季節に注目の自然現象など、詳しくお話を伺いました.

目次

秋から冬にかけて注目の自然観察ポイント

ーー自然観察教室の先生をしているわぴちゃん。秋から冬にかけて注目の自然観察ポイントを教えてください。 

朝露の季節ですね。朝露がパーッと一面に降りたところに、後ろから陽の光が当たるように、太陽を背に立つと朝露が降りたところに虹がかかることがあります。見つけることが難しいと言われていますが、結構大きくて、毎年あちこちで見ています。ちょっと意識して探すようにすると見られると思います。場所が広くなくても条件が揃っていれば見られます。大体田んぼ一つ分あれば十分です。ポイントは太陽を背にすることです。

また、自分と自分の影の頭の部分だけが光ってキラキラと後光のように見えるのも素敵です。腕を伸ばしてカメラでそれを撮ろうとすると、肉眼だと自分の周りがキラキラして見えるけど、カメラではカメラの周りがキラキラして見えます。そうやって比べてみるのも面白いですね。 

露虹の写真

ーー朝露の虹も見たことがないので見てみたいです。あとは白虹も見たことがないですが、すごく見てみたいです。ポイントはありますか。 

つくば(茨城県)はわりと見られます。朝、冷えこむと霧が出ることがあり、特に川の周りで目立つ傾向があります。霧が薄くなってくると陽が差し込んで、そのとき太陽の光を背にして立つと霧のところに白い虹ができます。私も最初は気づくまでなかなか見られないのかなぁと思っていました。一回気づいたら結構見つけるようになりました。結構出てるんですよ。 

ハロなどの大気現象も気づくとよく見えるようになりました。身近な自然って、知ると見えてくるものがありますよね。学びを楽しいと思える瞬間です。 

藤原咲平博士っていう気象学の方がいらっしゃるんですけど、藤原先生の本を読んでいると、筑波山でブロッケン現象がよく出ると載っています。実際はどうなのか確かめられていないのですが、筑波山にかかるくらいの低い雲があるときは、可能性があるのかもしれませんね。 

ーー麓から見ると筑波山のすべてが覆われているときがありますね。なおかつ太陽が差し込むなど条件が揃って初めて見えるのでしょうね。見てみたいです。 

わぴちゃんの書籍紹介

ーー様々な書籍を出版されているわぴちゃん。今日はそのうちの1冊をご紹介いただきます。 

最近のおすすめは「新・散歩の花図鑑」です。9年ほど前に初版を出しました。全国的に見られる植物を中心にまとめた本なので、これには載せていませんが、筑波山に来たらぜひ見てほしいものがあります。ホシザキユキノシタっていう筑波山にしかないものがあります。ユキノシタは丸い葉っぱが特徴で5月くらいに白い花が咲きます。昔は薬草としても使われていたそうです。ユキノシタは丁寧に探すと日陰などにあちこち生えています。季節は雪の降る冬限定ではありません。ユキノシタという名前の由来は諸説あります。見るからに食べられなさそうですが、実は食用になります。私は食べたことはありませんが、天ぷらにして食べられます。 

ーー筑波山に生えるホシザキユキノシタは普通のユキノシタとどう違うのでしょうか。 

ユキノシタの花は、花びらが5枚あって、下2枚が長くて上の3枚が短いです。一方、ホシザキユキノシタは花びらが小さく、、雄しべが目立ってちょこちょこしたような感じになります。筑波山神社周辺で見られ、筑波山の固有種として保全されています。ぜひ行って観察してみてほしです。写真を撮ってSNSなどで共有するのもいいですね。 

ホシザキユキノシタ

ーー「散歩の花図鑑」こちらの本は、ユキノシタの他、ツユクサなど本当に身近な植物が多く載っていて、「見たことはあるけど名前は知らない」植物など、この本で名前を知ることが出来て、さらにもっと調べていくと固有種があったり、植物の世界も面白いなって思いますよね。 

現在に至るまでの経緯

ーー書籍やテレビや講演会で華々しいご活躍の一方、実は学生時代は体調不良により学校に登校できなかったというわぴちゃん。 まず、こどもの頃の夢はなんでしたか。 

実はこどもの頃の夢はありませんでした。最近ではキャリア教育の授業で職業紹介として、地元の小学校などに講師として招待されますが、私の時代はそのようなものはありませんでした。いい大学に行っていい会社に行くというようなステレオタイプな生き方しか知識がありませんでした。

ただ、小学校6年生の時にたまたま観ていたテレビで気象予報士という資格ができたのをニュースで見て意識し始めました。当時から天気が好きでした。

ーーわぴちゃんは高校生の時に若くして気象予報士試験に合格されました。中高生の時の進路選択は迷いなく、気象の道だったのでしょうか。 

実は小学5年生くらいの時に派手に体調を崩してしまい、まともに学校に行けなくなりました。それで修学旅行というものにも一度も行ったことがありません。進路についてはとりあえず大学まで行こうという気持ちでした。体調を崩したと言っても体に深刻な障害があるわけではなく、心の調子を整えながら社会復帰を目指してやりたいことを探していこうとしていました。

家族の支えもあり、中学校を卒業する頃には外に出られるようになり、“学びたい”という気持ちが強かったため、通信制の高校に通いながら家の中で本を読んだり教育系のテレビ番組を観たり、調子がいいと自転車で遠くまででかけたりしました。 

ーー体を休ませながらも学びを止めないという姿勢はとても意欲的で素敵ですね。気象予報士試験を高校生で合格されるとは、すごいです。 

今に比べて当時はスクールや参考書などありませんでしたが、一般気象学と最新天気予報の技術という本で勉強をし、四回目の試験で合格しました。実は三回目の試験の後にもう諦めようかと思ったのですが、親や先生から励まされ、もう一度だけ頑張ってみようと挑戦したところ合格できました。中学生から勉強を始めましたが、気象予報士試験の知識は学校で習うものより先だったため、先取り勉強をしました。 

その後、大学では気象キャスターを務めながら個人ホームページを開設し、それを見た出版社の方から出版依頼を受け
、こども向けの書籍を大学在籍中に出版。晴れて自然科学系ライターの道を歩きはじめ、現在に至ります。 

ーー自然科学系ライターの道ってなかなか進路選択で聞きませんが、やはり現在に至るまでの経緯もだいぶ人と違う道を歩まれていますね。人と違う苦労や経験をされてきたからこそ、見える景色やメッセージの重みの違いを感じます。 

出張授業の様子

不安と付き合いながら、やりたいことに向き合う

私は中高時代に体調を崩して学校に行けていない時期がありました。やっぱりそういう時ってすごく気持ちも沈みますし、将来どうなっちゃうのかなって不安で不安でしょうがないと思います。でも、今私こうやって乗り越えて活躍しています(活躍って自分で言うほどでもないかもしれませんが…)。

社会に出て、一応しっかり活動できるようになっています。自分の中にある辛い気持ちっていうのは我慢しないでしっかり受け止めてあげてほしいですが、同時に悲観しすぎないようにすることです。「学校行けなくなっちゃったからもうだめだ」「大人になったときに何もできない」と思わないでください。

いろんな方法で自分が輝ける姿を見つけることができると思いますし、私ももし体調を崩さずにスムーズに社会人になっていたら、おそらく今のような輝けることはなかったと思います。そういう経験を積んだからこそ、人の痛みも分かるようになりました。無理に学校に行かなくてもいいので、とりあえず命を大切にしてほしいです。

そして気持ちが落ち着いてきたら、自分がどんなことをやりたいのか、素直に向き合ってみると将来の道も開けてくるのではないでしょうか。 


博物館や科学館の冊子

私は各地の博物館や科学館をめぐるのが好きなのですが、そういったところのミュージアムショップで売っている冊子みたいな資料をおすすめします。とてもよく出来ていて、その冊子じゃないと書いていないような情報があってとてもおすすめです。企画展や期間限定のものもあります。たくさん集めて、忘れた頃に読み返すのもいいですね。 


FM84.2ラヂオつくばにて毎週月曜22時~22時30分放送中様々な研究所の博士や専門家たちにお話を聞いています。

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scienceexpress@gmail.com

写真提供=わぴちゃん


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この記事を書いた人

総合科学研究機構総合科学研究員
サイエンス・エクスプレスMC サイエンスコミュニケーター
気象予報士の資格を持ち、お天気の実験教室などを開催。第11、12回気象文化大賞を受賞。

実験の楽しさや自然の素晴らしさ、災害の恐ろしさ、人類や科学のすごさをみなさんと共有していきたいです。この世界はたくさんの知識に溢れている。学ぶってワクワク。一緒に科学を楽しみましょう!

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