バスケで福島に「元気」と「感動」を

福島県のプロバスケットボールチーム「福島ファイヤーボンズ」選手の猪狩渉さん。猪狩さんがプロのバスケ選手になるまでのストーリーや、世界最高峰のアメリカのプロバスケットボールリーグ「NBA」を目指す熱い想いを伺いました。

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バスケを続けてアメリカへ

 私は福島県のいわき市出身で、小学1年生からバスケを始めました。父の家系にはバスケ経験者が多く、息子である私にもバスケをやらせようと考えた父が、地域のミニバスチームに半ば強制的に私を連れていったのが始まりです。初めはただ言われるがまま練習に参加するだけでしたが、バスケを初めて1年ほどが経った時、私は「NBA選手になりたい!」という大きな夢を口にしていました。この夢を志したきっかけは、バスケの有名な漫画「スラムダンク」、「バスケの神様」とも言われるアメリカのNBA選手「マイケルジョーダン」。この2つの存在が私に大きな感動と憧れを与えてくれたのです。「もっとバスケが上手くなりたい。もっと大きな舞台で活躍したい」と願うようになった私は、より一層練習に力を入れてひたすらに努力を重ねました。

 中学校・高校に進学後も、共に頑張るチームメンバーや周囲の方からのサポートのおかげで良い結果を出すことができ、日々成長を実感できるバスケ生活を送っていました。そして高校を卒業後、私は奨学金を頂いてアメリカへ留学しました。

 そして、数多くのNBA選手を輩出してきた全米屈指の名門「IMGアカデミー」というフロリダのスクールに進学。私は全く英語が分からない状態で渡米したため、初めは海外のプレイヤーとコミュニケーションをとるのにとても苦労しました。毎日朝早くから夜遅くまで練習の練習。練習後は、疲れ果てながらも夜中まで英語の勉強に勤しむ生活を約半年間続けました。その努力の甲斐あってだいぶ英語を理解でき、話せるようになりました。「日本語」は、世界の中で「日本人」という1つの民族しか使用しない言語ですが、「英語」は世界各国で使用される、1番メジャーな言語です。今までは日本語の情報しか入ってこなかった分野のことも、「英語」を理解できるようになるとより有益で多くの情報を得られるため、スポーツ選手に限らずどんな人も英語を勉強するのは大切だと強く思います。

 IMGアカデミーを卒業し日本に帰国した後は、2016年に「福島ファイヤーボンズ」に入団。2019年までの3年間、「福島ファイヤーボンズ」で選手としてプレーをしましたが、幼少期からの変わらぬ「NBA選手になる」という夢を叶えるべく、再度渡米。「トライアウト」と呼ばれる入団試験に何度も挑戦しましたが、NBAのチームに所属する夢はまだ叶えられませんでした。しかし、NBAの1つ下のリーグであるABAの「シカゴフューリ」や、TBLの「ダラススカイライン」というチームに所属し、アメリカでのバスケ生活も充実させることができました。そして2022年に日本へ帰国。もう一度「福島ファイヤーボンズ」に所属し、現在は福島を拠点に活動しています。

バスケ教室で英会話を

 私が所属する「福島ファイヤーボンズ」は日本のBリーグに所属するプロバスケットボールチームです。2022年夏時点で、選手は私を含めて12名。このチームの選手は福島出身だけでなく、県外や海外出身の選手も多く在籍しています。

 そして、私は「福島ファイヤーボンズ」の選手としての活動だけでなく、個人として「渉塾」というバスケ教室も実施しています。対象は小学生~高校生までと幅広く、チーム・個人単位を問わずに全国各地から依頼を受けています。

 また、「渉塾」では、バスケのプレー指導に加えて英会話の要素も多く取り入れています。「バスケ教室で、どうして英会話を?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、私自身アメリカに留学した際に英語の重要性を強く実感したからこそ、バスケ教室にも取り入れていこうと思いました。これからの時代はグローバル化が顕著に進み、スポーツの世界のみならず、どんな分野においても英語が必須になってくる時代になります。そして、その中でもバスケは練習・試合で英語による掛け声や合図が使われることが多いです。いきなり高度な英語を学ぶのではなく、まずは自分の好きなバスケを通じて掛け声や合図といった些細な場面から英語に触れていこうという意図の下、「渉塾」では積極的に英語で掛け声や合図を使うようにしています。「バスケ」×「英会話」。新しいこの組み合わせで、今後より一層グローバルに活躍するバスケ選手が生まれるのが本当に楽しみです。

達成するまで挑戦する

 私はこれまで本当に多くの方からサポートして頂いて「今」があります。「福島ファイヤーボンズ」の選手としてのプレーだけでなく、今までに培った知識と経験を「渉塾」の活動のように、次世代に還元していく使命があると感じています。

 そして、私は人一倍地元福島に対する想いが強いのです。当時中学2年生で東日本大震災を経験した私は、「私が福島を元気にしたい」という復興の気持ちが芽生えました。復興には様々な方法があると思いますが、私にはバスケがあります。バスケを通じて、福島を復興できるような活動を行っていこうと誓いました。また、バスケをしている方々はもちろん、バスケに触れていない方々にも「福島出身でこんなに大きな舞台で活躍している人がいるんだ」と元気や感動を与えられる存在になりたいです。

 最後に、私の夢は「NBA選手になること」。幼少期から追い続けているこの夢は、達成するまで何度も挑戦し続けます。まずは「福島ファイヤーボンズ」でのプレーに全力を注ぎ、日本のBリーグで結果を出して、もう一度挑戦をします。福島に元気と感動を届けられるよう今後も邁進し続けますので、応援よろしくお願い致します!

 高校生の皆さんは、これから本当に多くの選択を迫られると思います。「どの選択が正解なのか」、「失敗したらどうしよう…」と不安になることもあるでしょう。しかし、「失敗はない」ということを覚えていてください。最終的に目指す先が決まっているのなら、情熱を持って取り組んでいけばどの選択をしたとしてもたどり着く先は同じです。「どの選択をするか」よりも、「選んだ道を大切にする」ことを軸に考えてみてください。

 そして、夢は積極的に口に出していきましょう!私は幼少期からずっと「NBA選手になりたい!」と口に出してきましたが、笑われたり馬鹿にされたりするのは日常茶飯事でした。ただ、そんな中でも私の夢に共感して応援してくれる仲間と沢山出会うこともできました。夢を口にして初めて「こんなにも私を応援してくれる人がいるんだ」と気づくことができ、応援してくれる方々のためにもより一層頑張ろうという気持ちが強まりました。皆さんもぜひ夢をどんどん口に出して、実現への協力者を見つけてほしいと思います。そして、協力してくれる方々への感謝を忘れず、自分のやりたいことに貪欲にチャレンジし続けていってください。応援しています!

おすすめの本
為末大「諦める力」(小学館文庫プレジデントセレクト)

世界陸上でメダルを獲得したトップ陸上選手・為末大さんの著書。自分の勝てる分野で勝負していくことの大切さを描いた本です。タイトルにある「諦める」は一般的にマイナスイメージを持たれがちですが、「諦める」ことが全て悪いわけではなく、諦めた後にどんなアクションを起こすかが重要だと語っている本です。「情熱があれば、どんな選択をしてもゴールは同じ」という私の考えと一致する内容で、私も興味深く読ませていただきました。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=猪狩さん

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この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

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