サッカーから広がった経験から学んだこと

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サッカーで日本一に

宮城県仙台市で生まれ、松島町で育ちました。小学2年生の時、仲がいい男子に誘われて、スポーツ少年団でサッカーを始めました。そのスポーツ少年団で、女子は私だけでした。中学校でもサッカー部に入り、ここでも女子は私だけで、男子と一緒にボールを蹴っていました。体力の差は感じていましたが、サッカーが好きだったので男子と一緒にプレーしていました。

ボールを思ったところに蹴ることができたり、自分が思ったようにボールを扱えたりすることが楽しく、仲間や味方と連携してゴールを決める喜びを感じていました。この時の部活の先生がサッカーの強豪校のキャプテンをされていた方でそこでパス、ドリブルなどサッカーの基本技術を教えて頂きました。

転機となったのは、偶然練習試合で対戦したチームに女子選手がいたこと。自分以外に女子がサッカーをしていることに驚きましたが、そのお父さんが中学生の女子サッカーチームの監督さんをされていて、そのご縁で女子サッカーチームに加入しました。平日は部活で、週末は女子サッカーチームでサッカーをしていました。高校は聖和学園高校に進み、ここでもサッカーのパスや技術を磨き、U-17の女子日本代表にも選ばれました。大学では自分が弱みと感じていた体力面や筋力面を磨き、大学選手権で日本一になることができました。

言葉で表現する大切さ

その後は「地元に近いチームでサッカーをしたい」と福島県の東京電力マリーゼに入団。しかし入団して1ヶ月後に起こった東日本大震災の影響で、チームが活動休止になってしまい、東京電力で事務の仕事をして働いていました。「もうサッカーもできないのかな」とも思いましたが、地元の仙台に「ベガルタ仙台レディース」というチームができ、私を含めマリーゼのメンバーの多くが仙台でプレーすることになりました。まさか地元でプレーすることになるとは思わなかったので、女子チームを作ってくださったベガルタ仙台には感謝しています。

会場は、子どもの頃から試合を見てきたスタジアム。たくさんの方に温かく迎えられ応援していただきました。スタジアムに響き渡る歓声、サッカーが地元でできる喜び、仲間とプレーする嬉しさ。それまでの苦労も含めて、感慨深くかみしめてプレーしたことを、今でも思い出します。本当に夢のような時間でした。

ベガルタ仙台レディースのホームでの初めての試合終了後。サポーターの「サッカーを続けてくれてありがとう」という垂れ幕に迎えられた。

主に攻撃的な選手(FW)として出場し、時には守備的なMFとしてプレー。自分は線が細く、フィジカル面がそこまで強くないのですが、その分サッカーの技術には自信がありました。相手をかわしたり、味方と連携してパスで相手を崩したりするプレーを得意としていました。2012年から仙台で9年間プレー。女子のサッカーリーグである「なでしこ1部」では100試合以上に出場を重ねてきました。続けることができたのは、自分のことだけではなく、周りを見られるようになったからです。仲間の良さを知ったうえでプレーすることができたからだと思います。

©vegaltasendai

また、サッカーだけではなく色々な経験をさせて頂いたと思います。私はサッカー選手をしながら、地元のテレビ局で働いていました。当時は女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が創設される前で、多くの女子サッカー選手が働きながらプレーをしていました。

 私は朝の情報番組のスポーツニュースのコーナーを担当。時には、自分が出場した試合を自分で解説することもありました。午前中はテレビ局で働いて午後から練習、土日のどちらかは試合があって月曜日は練習がなく、そして、火曜日は早朝に出勤して朝のスポーツコーナーを担当する…という1週間を過ごしていました。

テレビ局で働いていて学んだことはたくさんあります。特に、テレビ局でスポーツニュースや番組を作る側になると、「スポーツ選手の発言はテレビを見ている人にどう伝わるか?」を意識するようになりました。みなさんもスポーツニュースで、選手の試合後のインタビューが放映されるのは見たことがあると思います。

そのインタビューの編集をやってみると、放送時間に限りがあるので「どの言葉がニュースで使われて、どの言葉が使われていないか?」に気づきました。

すると、自分もテレビの向こう側の視聴者の方を意識して、試合後わかりやすい言葉を使って話すことを心掛けるようになりました。「プレーでも言葉でも表現する」ことを心掛けるようになったのは、テレビ局で働いたからだと思います。みなさんもスポーツを見たら、試合後の選手の言葉に注目をしてみることをお勧めします。

全てに意味がある

2020年に選手を引退してその後1年間は「マイナビ仙台レディース」のスタッフとして1年間、地域でチームのイベントを企画するなどの活動をしていました。その時、自分自身ができることは何だろう?ということを考えました。

色々な経験を振り返ってみて、やはり8歳から26年間サッカーをやってきたので、サッカーの技術を教えられることが自分にできることだと思いました。そこで、サッカーの技術を教えるテクニカルコーチとして独立し、2023年からはサッカー女子・なでしこリーグ2部の吉備国際大学Charme岡山高梁のコーチとなりました。選手たちが選手として・人として成長でき、チームを高みに導くサポートをしていきます。なでしこリーグ1部昇格を目指し、クラブと選手と地域の繋がりを大切にしながら、応援いただくみなさんと一緒に戦い、喜び合うチームにしていきます。

皆さんに伝えたいのは、2つあります。1つ目は全てに意味があるということ。私自身もマリーゼが活動休止になったり、選手時代に大きなけがを経験して約1年間サッカーができなくなったりするということを経験しました。でも今考えれば、マリーゼに入団したからこそ東京で働くことも経験できたし、けががあったからこそ自分が足りないことと向き合うことができ、長くサッカーを続けられたと思っています。いいことも、悪いことも無駄なことはないと思って受け止めていけばいいと考えています。

2つ目は自分が好きなこと、得意なこと、自分にできることを考えてほしいということです。いまの世の中はたくさんの溢れた情報の中から、自分で選ぶことのできる時代となりました。その中でも自分の感性を感じ磨きながら、自分にしかない素晴らしい個性を存分に活かしてほしいと思います。自分はこれがやりたいということに一生懸命になって、自己肯定感を持ってやってみてほしいと考えています。1人ひとりには必ず良いところがあると思います。その良さを見つけてどんどん磨いてほしいと考えています。

おすすめの本

「マイブック」(新潮文庫)
自分がつくる、世界に一冊だけの本。日記、手帳、絵など、その日の自分を表現でき、書くことで自分の思いに気づいたり、整理したりすることができる。自分が知らない自分に出会えるきっかけになれるかもしれません。

写真提供=小野さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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