「みんなを活躍させる」サポートと場づくり

仙台市の中心部にあるコワーキングスペース「enspace(エンスペース)」でコミュニティマネージャーを務める可野沙織さん。多くのビジネスマンや起業家が集う場所で入居者の方のビジネスのサポートをしています。「みんなを活躍させる」ためにどんなサポートをしているか、その工夫を伺いました。

目次

◆自分たちで理想の未来を創る

宮城県登米市で生まれ育ちました。高校時代、「人への思いやり一つで、ハッピーな1日になる」と考えていた私は、「おもてなし」ができる仕事に就こうと、高校卒業後にアパレル業界に就職し、服屋さんで働いていました。その後「これから伸びるのはITだ」という話を聞き、転職してIT業界に飛び込み「カスタマーサポート」という仕事をしていました。

 「カスタマーサポート」とは、商品を購入した方や、サービスを利用しているお客様のサポートをする仕事です。電話やメールを使ってお客様の疑問質問に答えたり、お客様の声を聞いて、商品やサービスに活かしたりしていきます。常にお客様の一番近くにいるのが、カスタマーサポートでした。その仕事を10年ほど続けて、IT業界の方々が集うバーベキューで偶然出会ったのが、エンスペースを運営している会社の社長の吾郷(あごう)克洋さんでした。これからエンスペースを作るので、運営に加わってくれる人を募集しているタイミングでした。

「東北で出会った人はみんな魅力的で、東北に可能性を感じたんだよ!」。吾郷さんはそう話していました。東北には縁もゆかりもない吾郷さんの言葉に、私は驚きました。

 吾郷さんは、「今ここにない未来を創る」という目標を掲げて会社を経営されていました。私も「好きな場所で好きな仕事ができる東北を作りたい」と考えていたので、「想定された未来ではなく、自分たちで理想の未来を創りたいと考えている」点で思いが重なっていました。吾郷さんの目標、ビジョンと私が考えていることが一致していたことが決め手になり、エンスペースの運営に関わることになりました。

◆起業家サポートと学びの場

エンスペースは3階と4階がオフィスになっていて、たくさんの個室があり約70社の企業さんが入居されています。5階と7階は会議室フロア、2階には約80人が入るイベントスペースなどもあり、企業さん同士がつながれるイベントも開催されています。

エンスペースには自分で事業を立ち上げた起業家の方もたくさん利用されています。私の役割はその起業家の方々のビジネスをサポートすることです。エンスペースのその場づくり・環境づくりや入居者の皆さん同士をつなげて、新しいビジネスにつなげることも私の仕事です。

実は、自分の父親も自分で事業をしている起業家でした。しかし自分が小学生の時に、父親の会社が倒産。子どもながらに、世の中の現実を突きつけられた気がしました。

起業家はうまく行っている時は自分の力で前に進んでいける。でもうまく行かないと心が折れてしまうこともある。私の父親の姿を見ていて気付いたのですが、うまく行かない時に支えてあげられる人はなかなかいません。だからこそ、私は起業家が失敗したり困ったりしたときに守ってあげられる存在になろうと思いました。そして、どんな人であっても活躍ができるように後押しをする

特に「あいさつ」したときの相手の表情はよく観察しています。実は相手がうまく行っているのか、そうではないのか?は「あいさつ」したときの相手の表情でわかると考えています。あいさつをしてみて、「あ、この人は何かうまく行っていないことがありそうだ」という時には、ちょっと声をかけてみたり、「ちょっと相談があるんですけど」と私から持ち掛けて、話す機会を作ってみたりしています。

私は、失敗が許される社会であってほしいと考えています。このエンスペースもたとえ失敗しても、「ナイストライ」、「次何やりましょうか」ということを当たり前にいえる場所にしていきたいです。

また、これは「カスタマーサポート」の経験が生かされているのですが、利用者さんの声はとても大切にしています。例えば利用者さんから「ホームページを作るサポートをしてほしい」、「名刺づくりのサポートがほしい」という意見が出たら、それを実現してきました。この場所を利用するのは起業家やビジネスマンの方々なので、お客さんとの対話からサービスを作っていくことを心掛けてきました。部屋のレイアウトも、利用者さんの希望に合わせて毎年のように変えています。

そしてもう1つの特徴が、エンスペースは大学生がインターン生という形で運営していることです。受付やイベントの準備、館内の清掃などは学生が担当しています。これまでに約50人の学生がインターンとして関わっていました。ついこの前まで高校生だった若者もインターンとして働いています。

ここは、学生の皆さんにとってビジネスや働くということを考えられて、貴重な経験ができる学びの場だと考えています。私は、学生の皆さんには常に「思いやりを大切に」と伝えています。例えば、仲間が仕事でミスをした。その時に「なぜミスをしたの?」と声をかけたくなります。

でも、その前に立ち止まって「なぜその人はミスをしたのだろう」と考えてみよう、と伝えています。もしかしたら、その人に仕事が集中しているからかもしれない。そうなると、かける言葉も変わってくると思います。大切なのは、自分以外の視点を持って、思いやりを持って相手に接することができるかどうかだと考えています。

◆2つのメッセージ

皆さんに伝えたいことは2つあります。1つ目は、疑問を持つこと。私自身、決められた物事に疑問を持つ性格でした。「なぜ?どうして?」と疑問を持つことは自分の興味関心を考えるヒントになると考えています。例えば「コーヒーはなんでコーヒーと呼ぶのか」だったり、「幸せって何だろう」と考えてみたり、決まったことに対して疑問を持ったりするということをやってきました。

もう1つは、自分が苦手な人ともコミュニケーションをとってみること。社会では、多くの場合チームで結果を出すことが求められます。そうなると、時には、苦手なタイプの人と仕事をすることもあるかもしれません。どんな人とも一緒にお仕事ができるといいと思います。私も意識的に、自分と違う考えの人に話を聞きながら、「みんなを活躍させるポジション」という役割を果たしていきたいです。

◆おすすめの本
スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」(キングベアー出版)
毎日のちょっとした意識を癖づけるだけで日常が変わること、自分が変わらなければ周囲の環境も変化しないことを教えてくれます。ビジネスマンとしてのスキルや、成長するにはどうすればいいか?を学ぶことができる本です。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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