事業を通して大切にできるものを大切にできる社会を

福島県郡山市に移住し、2017年に株式会社エフライフを設立した小笠原隼人さん。「大切なものを大切にできる社会をつくっていきたい」と力強く語る小笠原さんに、起業をした経緯と高校生へ伝えたいメッセージをお聞きしました。

目次

「大切なものの大切さ」に気付く

私が起業家になりたいと思い始めたのは大学1年生のときです。大学で起業家の方の講演を聞く機会が何度かあり、事業を通して自分のつくりたい社会をつくっていける起業家の仕事にとても魅力を感じました。

起業を視野に入れていた私はベンチャー企業でインターンをしたり、地域おこしに携わったりと様々な活動をしていました。そんな学生生活を送っていたのですが、就活の時期を前に大きな挫折を経験します。思っていたよりも自分が活躍できないことから心身を壊してしまい、約4ヶ月間、誰とも会わずアニメを見る生活をしていました。「こんなやつが起業したいなんて言えないよな」と当時はとても落ち込んでいました。

そんな状況だったので、ひとまず就職をしようと就職活動をはじめました。そんな中、ある出来事が起きます。母の死です。突然の死に驚きましたが、何者かになって誰かに称賛されるために必死になっていた私にとって、大切なことに気づかせてくれた出来事でした。当時の私は無条件に愛してくれていた母の愛情に気づかず、外の世界で愛されようとしていました。大切なものを大切にできていなかったんです。この出来事を機に「大切なものを大切にして生きていこう」と決断しました。

大学卒業後は、新卒で葬儀サポートを行う会社に就職。その後、東日本大震災を機に福島を訪れ2012年に関東から移住しました。それからは18歳以下のこどもの心の声を聴く「チャイルドラインこおりやま」や、新規事業を生み出すサポートを行う「一般社団法人ふくしまチャレンジはじめっぺ」の設立に携わりました。

新たな地で様々な経験をするなかで、頭の片隅にあったのは大学生の頃に芽生えた「起業をしたい」という夢でした。その夢を叶えることができたのは2017年のことです。大切なものを大切にして生きていける社会をつくることを目指し、エフライフを立ち上げました。

「自分のため」が誰かのためになる

エフライフでは現在、主にクラウドファンディングの支援事業と 「fukunomo」という福島の地酒を月に一度お届けするサブスクリプションサービスを行っています。

クラウドファンディングの支援事業は「復興庁クラウドファンディング支援事業」の地域コーディネーター業務を受託したことをきっかけに2018年にスタートしました。これまでに福島・宮城・岩手など東北地方の50を超える事業者さんを中心にサポートし、累計2億円を超える寄付金を集めました。エフライフでは以前、みなさんと同じ高校生が企画したクラウドファンディングのサポートも行いました。福島県の西田町に住む高校生が、ふるさとの魅力を発信するウェブサイトの制作・運営をするために必要な資金を調達するプロジェクトでした。結果的に目標金額の2倍以上の寄付金が集まり、大成功に終わりました。

クラウドファンディングのサポートをする際、事業者さんが何のために資金調達をしたいのかについてヒアリングからはじめます。よく「困っている人のためにクラウドファンディングをやりたい」という方がいらっしゃるのですが、エフライフでは自分以外の誰かのためにクラウドファンディングをすることを勧めていません。なぜなら、目的が「誰かのために」だと、いずれ本人が苦しくなってしまうからです。一番の理想は、目的が自分のためであって、結果的に同じことで悩んでいる人や支えてくれる人のためになることです。これは高校卒業後の進路を決めるときにも、同じことが言えるのではないでしょうか。どんなプロジェクトも設定した目標を達成することは大切ですが、それ以上に周りの意見に流されず主体的に目的を定めることが大切です。

クラウドファンディングが成功した時は、伴走者である私自身ももちろん嬉しいですが、それ以上にヒアリングで事業者さんの心が向かう先、すなわち目的を見つけられたときが一番やりがいを感じます。そして、その目的を達成するために応援し続けるのが私の仕事だと思っています。

感謝の気持ちをエネルギーに

私は学生時代、自分の意見を言えず、苦しく感じることがたくさんありました。みなさんも社会に対する違和感や「もっとこうなったらいいのに」というような気づきがあっても、周りからの同調圧力や主張を受けて自分の心の中で抑え込んでしまう、そんなことってありませんか?これは本人の問題だけでなく、自分の意見を言いづらい社会にも問題があるのではいかと感じています。私はエフライフの事業を通して、そんな社会を変え、一人ひとりの大切なものを大切にできる世の中にしていきたいと考えています。

みなさんには、外からもらうエネルギーに頼らず、持続可能なエネルギーを利用できるようになってほしいです。外からもらうエネルギーとは、例えば人からの称賛が挙げられます。「褒められたい」という思いがエネルギーになることもありますが、それに頼りすぎるといずれ疲れてしまいます。大学生時代の私はまさにそのような状態でした。では、持続可能なエネルギーとは何か…。それは「感謝の気持ち」です。外からもらえるエネルギーは有限ですが、自分の内にある感謝の気持ちは無限です。忙しくしているとつい感謝することを忘れてしまうので、探究学習の授業を機に、自分の身の回りの環境を見つめ直し、感謝の気持ちをエネルギーに転換してみてください。

 (本の情報:国立国会図書館サーチ)

おすすめの本
山口つばさ「ブルーピリオド」 (講談社)
本当にやりたいことが見つかったときに、怖くてもやってみようという気持ちを後押ししてくれるからです。

写真提供=小笠原さん

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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。(運営:株式会社オーナー)

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