畜産の課題を解決するため、肉牛の受精卵を乳牛に移植する「受精卵移植」を進めている株式会社ノースブル。ノースブルでは、獣医師や培養士といった様々な技術を持った若手社員の方々が働いています。ノースブルの「受精卵移植」を支える技術とチームワークについて社員のみなさんに聞きました。
ノースブルでの受精卵移植には、3つの職種のスペシャリストが関わっています。
・母牛から卵子を採取する獣医師
・卵子と精子を体外受精させて受精卵を作る培養士
・受精卵を牛の子宮に移植する移植師
今回は、獣医師と培養士の方に仕事の内容ややりがいを聞きました。
獣医師の仕事の広げ方
ノースブルで働く獣医師の池野梨那さんと渡部一星さんは同じ高校・大学に通った同級生。取材当時は26歳で2人とも「動物が好き」と理由で獣医師になろうと思ったそうです。
池野さんはもともとペットの治療、渡部さんはワシなど野生の猛禽類の治療に興味があったそうですが、高校や大学で牛や畜産について知り、畜産方面の仕事に進むことにしたそうです。
獣医師の就職先は動物病院や公務員、研究職など様々な選択肢があります。2人は大学を卒業して就職先を選ぶときにノースブルを知りました。「受精卵移植」の技術を最初に聞いた時は2人とも「こんな技術があるのか」と驚いたそうです。
2人は、牛の卵子の採取や「繁殖検診」という牛の状態の確認を行っており、特に「卵子が取れた時」にはやりがいを感じるそうです。
また、2人とも獣医師以外の知識の習得にも力を入れており、渡部さんは海外にノースブルの技術を広げていく仕事も担当しています。池野さんも「企業の経営にも興味がある」と話しています。獣医師以外の仕事にも挑戦できる環境を楽しんでいる様子を知ることができました。
受精卵を作る胚培養士の仕事
獣医師が取った卵を授精させるのが「培養士」の方々の役割。なかなか聞きなれない職種です。人の不妊治療でも「胚培養士」の方が働いている。2022年4月から人の不妊治療に保険適用が本格化されることを受け注目されている職業です。
片江篤子さん(右)と瀧上結葵さん(左)のお2人にお話を聞きました。お2人とも畜産系の大学入学当時は、違う職業を目指していました。最初は片江さんは獣医師、瀧上さんは移植師になろうと思っていたそうですが、大学時代に培養士の仕事を知ったそう。
顕微鏡で牛の卵子を観察すると、卵の形が1つ1つちがうことがわかり、卵を見る面白さにのめり込んだといいます。2人は顕微鏡で卵を確認しながら、状態がいい卵を選んでいきます。
瀧上さんは東京都の出身で24歳。もともと動物が好きで、高校時代に畜産系の職に就きたいと考えていました。どうしても牛がいる大学に行きたくて、北海道の大学に進みました。最初は経験を積むために1年間人の不妊治療を行う胚培養士として働き、ノースブルに加わったとのこと。現在は学会でも発表する機会があり、「社会人から勉強できることがいい。学べる環境づくりは大きい」と話していました。
2人が作った受精卵を「移植師」が牛の子宮の卵子に移植することで、乳牛から和牛が誕生するのです。
「チームプレー」で最高の技術を
ノースブルの働き方について、前編でもご登場いただいた社長の菅原さんに聞きました。受精卵移植をしている業界では、1人で採卵、培養、移植をやっている会社もあるとのこと。そこで菅原さんは「分業制で技術を高めていく方法」を目指し、他の会社との差別化を図っているそうです。
具体的には、獣医師は獣医師、培養士は培養士の技術を深め、その技術を組み合わせ、チームとして最大の成果を上げることを目指しています。ビジネスだけではなく、研究にも力を入れており、国内、海外の学会で発表する機会もあるそうです。日々進歩する生物工学の分野なので、個人の研究分野や専門技術が直接顧客の利益や会社の成長につながり、働く社員さんにとっても会社や業界に貢献できているという実感が感じやすいといいます。
働いているのは20代の若手も多く、菅原社長は「働く人がやりたいことがやれる場を目指し、人材育成に力を入れたい」と話していました。
(画像提供:株式会社ノースブル)
探究を振り返って
若い社員の皆さんがそれぞれの技術を生かし、生き生きと働いている様子が印象的でした。働いている人のほとんどが菅原さんの大学の後輩。まるで1つのチームで同じ目標に向かって働いている様子はまるで「部活動」のようでした。
高校時代でも部活動や委員会活動、グループでの探究活動など「チーム」で動く機会があると思います。高校生のみなさんも誰かと一緒に何かをする機会を大切にできると、働く時のためになると感じました。
(本の情報:国立国会図書館)