文化は商人がつくる 商店街の一員としてやるべきこと

仙台市青葉区の宮町商店街で、犬・猫・小動物のペットホテルと愛犬の毛をカットし整えるトリミングショップを営んでいる「ペットショップさまん」。店主の佐藤広行さんは、トリミングショップ黎明期から現在のような形態で事業を営むかたわら、地元の宮町商店街振興組合で商店街の活性化に取り組んでいます。商売とまちづくりを両立させる思いを伺いました。

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マネキンから「未知の業界」に

大学卒業後に働いたマネキンを販売するメーカーを退職し、家業であるペットショップを継ぐと決めたのは1992年、30歳のときのことです。ちょうどバブル期の前後で、マネキンの販売はやればやるほど儲かり、どんどん出世できる時代だったのですが、私は家を継いで、トリミングの専門学校に行くという選択をしました。私は起業家になるのが夢でした。ペットのトリミングショップは、まだほとんど一般の方に浸透していなかったので、未知の業界で自由に商売するのに魅力を感じたんです。トリミングは手間がかかる大変な仕事ですが、その反面、大企業が参入しにくい業界でもあるので、うちのような中小企業に商機があると思いました。

商売をし、商店街を盛り上げる

私はまず、トリミングの専門学校に入りました。仙台には2校、トリミングの専門学校があったのですが、30歳の男が入学できる学校は1校だけ。同級生は若い女性ばかりで、緊張しながら通っていたのを覚えています。

ペットショップは父の代から営んでいたので、ある程度のレールはあったのですが、トリミングの事業は最初、ぜんぜんうまくいきませんでした。洋犬(マルチーズ、シーズー)を飼う方も多くなっていたものの、番犬として外飼いされている犬も多く、犬を定期的にシャンプーするという文化が浸透し、お客さまがお店にリピートしてくださるようになるまでが大変でした。最初は、1日1頭トリミングのご利用があったら、みんなで喜んでいたくらいです。トリミングで利益が出るようになったのは8年目です。今ではスタッフも増え、1か月で250頭トリミングできるようになりました。

お店の経営は一筋縄ではいきませんでしたが、商店街のイベントなどもずっと継続して参加してきました。お店も家も宮町なので、商店街の人はみんな子どものころから顔見知りです。お店を継いですぐに商店街の振興組合の青年部に所属して、どんと祭や七夕の設営などに参加するようになりました。2010年から理事長を仰せつかり、今年で13年目になります。

宮町商店街は東照宮の門前町として発展した地域です。年間を通してさまざまな取り組みを行っていますが、最近では特に『七夕』『お宮町秋まつり』『まちゼミ』の3本柱で活動しています。商店の集まりなので、イベントを通してそれぞれのお店の売り上げにつながるのが一番ですが、商店以外の地域の人や、宮町以外に住む人も集まり、交流してほしいと思っています。

店をやりながら商店街のことも、というと、いろんな人に両立できるの?と聞かれます。でも、私は、商売することと商店街を盛り上げることはつながっていると考えています。

私は、人が集まれば集まるほど、いいことができるのではないかと考えています。その根拠の一つが「集団脳」という考え方です。旧人類と言われるネアンデルタール人は、5人ほどの家族単位で生活していました。それが、私たちの先祖であるクロマニョン人になると、家族以外の近隣に住む人たちもコミュニティに含め、20~150人の集団で暮らすようになりました。集団で暮らすことのメリットは、ひとつの問題をいくつもの脳みそで考えられることです。いろいろなアイディアをいろいろな視点で考えることで、クロマニョン人は多くの問題を解決し、イノベーションを起こすことができました。

私たちも同じです。人は、人と関わらないと情報が入ってきません。自分を通して情報を回し、いろいろな問題を解決していくことで、集団として強くなると考えています。例えば、この前は、ラーメン店を経営している人からこんな話を聞きました。彼は、ラーメン店を営むかたわら、農業を始めるというのです。これからモノの原価はますます上がり、どこかからモノを買うだけの立場でいたら、格差はどんどん広がる。じゃあ、モノを売る立場になればいい。飲食店にモノを売る人と言えば、農家。農業に携わらないと、これから飲食店を商う者には未来がない、と言うんです。こんな話は、ペットショップで店番していても聞くことはできません。店の外に出たからこそ、入ってきた情報です。私がそういう話を聞き、商店街の会合でこの話をすることで、将来大儲けするお店が出てくるかもしれない。地域のなかにいて、いろいろな体験をすることが、自分にとっても他人にとっても大きな貢献になるんです。

宮町商店街で夢の実現を

宮町商店街には、ここ数年、若い人が営むお店が増えてきました。宮町以外のまちに住み、商売は宮町でやりたいと来てくれる人も多くいます。そういう人が「宮町で商売をやってよかった」と思えるように、その時々でいろいろな取り組みを続けていきたいと思います。文化は商人がつくるものです。みんなで大きな夢を追い求めて、実現していけたらいいですね。

まちは、みんなで関わり、みんなで参加すれば、どんどん良くなっていきます。最近の若い人はすごいですね。昔の人は商店街の活動というとそっぽを向いたものですが、若い人たちこそ、組合に入りたいと言ってくれます。彼らは「地元企業は、地域に関わるのが当然です」と言ってくれます。そういう気持ちに応えられる商店街にしたい。皆さんもぜひ、宮町商店街に遊びに来て、このまちのパワーを感じてくださいね。

おすすめの本
高槻 成紀編著「動物のいのちを考える」(朔北社)

朔北社の本です。ペットや家畜、野生動物、動物園の動物、実験動物などの動物がどのように扱われ、どう生きているのか、詳しく紹介されています。身近なペットはもちろん、生き物全般の「命」を考えるきっかけにしてほしいと思います。

 (本の情報:国立国会図書館リサーチ)

写真提供=佐藤さん

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この記事を書いた人

仙台、東北を中心に活動する広告制作会社&代理店。2019年創業。インタビューやキャッチコピーなどのコピーライティングをはじめ、パンフレットやウェブサイトなどのデザイン、ブランディング等に携わる。社員全員が食とお酒に対して貪欲であるため、六次産業化等の商品開発、ブランディングが好き。

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