秋田の食材を使った「高校生ジェラート」 横手駅から届ける地域の魅力

JR横手駅の2階、改札口のすぐ横から聞こえてくる明るい声。「いらっしゃいませ!」と元気よく迎えてくれるのは、地元の高校生たちです。ここは高校生が運営するジェラート店「Stella artigianale(ステラ アルティジャナーレ)」。商品企画から店舗運営まで、高校生が主体となって行う全国的にも珍しいお店です。横手から全国にどんな商品を届けているのか、お話を伺いました。

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高校生が主体となりジェラート店を運営

「Stella」を運営するのは、地元の高校生有志。普通科、農業科、通信制高校など多様な学校から生徒が集まっています。経営や起業に興味を持つ高校生、将来接客の仕事に就きたいと考えている高校生、農業高校で野菜を育てている高校生など、それぞれの関心をきっかけに参加をしました。

「artigianale」はイタリア語で「手作り」を意味します。その名前の通り、高校生たちは地域の野菜や果物を使い、真心を込めて手作りしたジェラートをお客様に提供しています。

枝豆、とうもろこし、アスパラ、りんごや桃といった、地元秋田県産の旬の食材を使い、何度も試食を繰り返しながら味を完成させていきました。秋田県のブランド米「サキホコレ」を使ったユニークなジェラートや、地元特産のサイダーを使い、シュワシュワ感が夏にぴったりのアイスなど地域色豊かな商品が並びます。

さらに、高校生が育てた野菜も材料の一つになっています。大曲農業高校の生徒が育てた枝豆やほうれん草。これらの野菜の栽培には横手市で「ヘラクレスオオカブト」を飼育するベンチャー企業が開発した「ヘラクレス堆肥」が使われています。ヘラクレスオオカブトの幼虫を栽培しながら肥料づくりにつなげるため環境にやさしく、地域で行われている循環型の農業で作られた野菜を商品に生かしています。

お店には色とりどりのジェラートが10種類ほど並んでおり、季節によってその種類も異なります。注文を受けると高校生が丁寧に盛り付けていきます。ジェラートの盛り付けを担当する女子生徒は、「ダブルの注文が入ると、どちらの味を上にするか、ジェラートのかたさや写真映えも考えながら盛り付けています」と工夫を話します。

駅の空きスペースを活用し、地域につながりを生み出す

この場所はかつてJR東日本のきっぷ売場「みどりの窓口」があった場所で、「みどりの窓口」が終了した後は空きスペースとなっていました。地元で中学生・高校生向けのキャリア教育に携わってきた一般社団法人Sail on Japanの代表、奥真由美さんがJR東日本と連携し、この場所の利活用方法を考えてきました。奥さん自身も学習塾を立ち上げるなど様々な事業を経験してきた起業家で、長年高校生向けの起業体験プログラムを秋田県内で企画してきました。起業体験プログラムを通して高校生の成長を感じてきた奥さん。「駅は地域につながりを作る拠点。そこに高校生が運営するお店を作ったら、地域の活性化につながる」と考えました。

どんなお店を作ろうか考えたところ、高校生が好きな「ジェラート」がいいのではないか?と考え、横手市周辺の高校に協力を依頼しました。すると複数の高校からジェラート店を運営したい生徒が集まりました。奥さんや高校生はジェラートを製造する経験はありませんでしたが、地元のジェラート店の協力を得られることになり、開業にかかる資金については「クラウドファンディング」で100万円を集め、2023年8月にオープンしました。

JR横手駅には2つの路線が通っています。駅の周辺には横手名物の「横手焼きそば」を食べられるお店や冬の風物詩・かまくらに年中入れる施設もあり、観光客の方も利用します。「Stella」は週末を中心にオープンしていますが、取材中には地元の方だけではなく、県外から観光に訪れたというお客さんも笑顔でジェラートを買い求めました。

駅の空きスペースを活用した事例として全国的にも注目され、2024年にはJR東日本の「地域共創アワード」で優秀賞を受賞しました。そして東京での販売も実現。東京都心の新宿で開催された販売会では、ジェラートをカップに詰めて東京に持ち込み、完売することができました。

ジェラート店の運営を通して高校生が学んだこと

高校生が担うのは、接客や販売だけではありません。ジェラートの味の開発から製造、そして開店の準備、ジェラートを紹介するPOP作りや会計に至るまで、店舗の運営に関するすべての工程を高校生自身が行っています。生徒は実際の店舗に立ち、お客さんにジェラートを販売するという貴重な経験を通し、様々なことを学んでいます。

「言葉遣いを意識するようになった。積極的になった」 、「お客さんとの距離が近く面白い。年配の方から小さなお子さんまで、色々な世代の方と仲良くできる」、「人と接することができるこの機会を活かしながら、将来は保育士になりたいと思うようになった」こうした生徒たちの声からは、単なる体験を超えた人間的な成長や将来の進路とのつながりが感じられます。

高校生が運営する横手のジェラート店「Stella artigianale(ステラ アルティジャナーレ)」。多くの人が行きかう駅を拠点に、地域の食のおいしさと笑顔を全国に届けていきます。


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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

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