Kaziプロジェクト代表の木村秀則さんは、夫婦の家事の分担を「見える化」する「家事見える化シート」を開発し、家族で家事を分担する取り組みを進めています。実はその取り組みのきっかけは、ご自身の失敗談でした。家事分担という高校生にとって身近なテーマでの課題解決の取り組みをぜひご覧ください。
「しくじりパートナー」として
私がプロジェクトに取り組むきっかけは、5年ほど前のことでした。当時こどもが小学校1年生と2歳で手がかかる時期でした。私も仕事が忙しい時期が重なり、家族と一緒にご飯を食べることもないほどでした。家のことは妻に任せきりで、家事をやりたい気持ちはあっても休日に家の掃除をするくらいしかできていませんでした。
そんなある日、妻がメニエール病にかかり、体調を崩してしまいました。妻が家事をすることができなくなってしまったため、自分が行うことになりました。会社とも相談し、残業を減らしてもらい、働く時間も変更してもらいました。このことがきっかけで、「家事・育児を夫婦で分担しないといけない」と痛感しました。この時の失敗談を経て自分の名刺にも「しくじりパートナー」という言葉を入れています。
またもう1つのきっかけとして、私も仕事でさまざまな会社さんと関わる中で、社会で女性がもっともっと活躍することができると気がつくことがありました。能力の高い若い女性がいたとしても、年上の男性の方が地位が上であることがありました。また、男性であっても、「男なら稼がないとならない」というイメージの中で苦しんでいる男性もいると感じていました。
「家事見える化シート」を作成
2020年4月から友人とともに、Kaziプロジェクトを立ち上げました。「家事を“家族事”に」をキャッチコピーに家事シェアを広める活動を続けています。
私たちが作ったのがこの「家事見える化シート」です。
これまでの家事分担を確認するツールは、100以上の項目があるチェックリストなど、かなり大変なものでした。そこで25枚のカードにすることで始めるハードルを下げることにしました。また、スマートフォンでできるアプリではなく、あえてアナログなシートを選んだのは、一つのシートを夫婦で囲みながら、コミュニケーションを取りながら使ってほしいと思ったからです。
作っていくにあたって、まずは夫婦にアンケートを取り、普段の家事について「相手にやってもらって助かったこと、嬉しかったこと」を集計しました。たくさんのご意見を頂きましたが、その中で家事の内容を絞り込み、25種類のカードにしました。
10種類は「食事の準備」「洗濯ものを干す」といった家事に関すること。
12種類は「こどもの寝かしつけ」「こどもの相手」などこどもに関すること。
3種類は「『ありがとう』を言う」といった家族の関係性・コミュニケーションに関することをカードにしています。
特にこどもに関することは負担が大きいというアンケート結果がでたのでカードの数を増やしました。「保育園の送り」、「保育園の迎え」というカードをそれぞれ用意するなど、細かく分類しました。5枚は予備のカードとなっていて、「ペットの世話」などの家事をそれぞれのご家庭の状況に合わせて自由に書き込めるようにしています。
また、デザインや大きさにもこだわりました。全てのカードの8割ほどが男性側、女性側の片方のスペースに入ると枠線から溢れてしまうようにしています。これは負担の大きさを実感できるようにするためです。このように、細部にまで工夫をこらしたシートを作りました。
実際の使い方としては、夫婦で会話をしながら普段男性がやっている家事と、女性がやっている家事を分類します。2人でやっている家事は真ん中に置きます。
現状を「見える化」し、話し合いながらコミュニケーションを増やすことができれば、「家事見える化シート」の目的の95%は達成しているといえると考えています。あとはマグネット式になっているので、冷蔵庫などよく見える場所に貼り、いつでもコミュニケーションできるようにしています。例えばこどもが産まれたり、夫婦の仕事が変わったり、環境が変化したりしたら再度家事の分類をやって頂ければいいかなと考えています。
幅広く支援する
この「家事見える化シート」のターゲットは幼いこどものいる夫婦ですが、シニア版を作ってほしいとの声も上がっています。定年を迎え、家にいるようになった高齢の旦那さんが家事をやらないこともあるそうです。さらには小学生の家事お手伝いにも応用できるのではないかと考えています。
また、「見える化シート」以外でも、ベビーケアルームの設置を進めています。授乳・離乳食・おむつ交換が可能で、男性も利用可能な設置型のベビーケアルームです。授乳スペースが足りなかったり、赤ちゃんのおむつの交換台が少なかったりすることを解決するために始めた活動です。先日は仙台市泉区の「七北田公園」の都市緑化ホールに設置しました。
私たちは夫婦間のコミュニケーションを増やそうと「見える化シート」を作りましたが、コミュニケーションは人と人とが関わる場ではいつでも大切なことです。皆さんも、友達との対話やコミュニケーションを大切にしてほしいですし、「聞く姿勢」や「感謝」を大切にしてほしいと考えています。
最後に、捉え方が変われば「行動が変わる」、行動が変われば「未来が変わる」、未来が変われば「人生が変わる」という言葉を送りたいと思います。変わるかどうかは自分次第。ぜひ楽しい生活を送ってください。
(本の情報:国立国会図書館サーチ)