子どもの自己肯定感を高め、助け合える環境を作りたい

福島県会津若松市で、子どもの支援事業を中心にボランティア活動を行う団体「ASOBI-NETWORK」。この団体を設立した、代表の佐藤直希さんに、こどもの支援に関わるようになったきっかけやどんな支援を続けてきたかについてお話を伺いました。

目次

「考える」ことを中心に


 「ASOBI-NETWORK」は、「会津てらこや」という団体を軸にして2021年に設立した団体です。「会津てらこや」とは、東日本大震災後に原発事故の影響などで会津の仮設住宅に避難してきた子どもたちに、学生が中心となってストレスケアを行っていた団体です。しかし、実施場所は会津にも関わらず、参加者の多くが関東に住む学生でした。現地(会津)の学生がほぼいないという現状から、当時会津の大学に通っていた私が誘われて参加することになりました。そこでの活動が、私にとって初めて子どもたちと関わる機会だったのですが、子どもたちと交流している時間はすごく刺激になりました。社会のルールに縛られていない子どもたちと触れ合うことでとても新鮮でしたし、純粋無垢でまっすぐな、そんな子どもたちが好きになりました。この「会津てらこや」の取り組みがきっかけで、私自身も子どもたちへの支援活動について考えるようになりました。

 「会津てらこや」での活動を始めてから数年が経った頃、仮設住宅の数が減少したり、規模が縮小されたりして子供の数も減ってしまいました。仮設住宅が多くあった頃のように、沢山の子供たちと交流することもできなくなり、今後も活動を続けるかどうか悩んだ時期がありました。しかし、今まで子供たちとの交流を通して育んだ「絆」や「愛」あふれるこの活動自体をやめてしまうのはもったいないと思ったのです。また、会津に定住することになった子供たちと、元々会津にいる子供たちとを結ぶ「ネットワーク」ができていないことを感じていました。そこで、2018年から仮設住宅の子供たちと、会津の子供たちを繋ぐイベントを、私が主体となって始めました。このイベントを2年間継続した結果、仮設住宅に住む子供たちを支援するための「ネットワーク」がある程度形成され、イベントがきっかけで人や物がつながる可能性を身に染みて感じました。

また、子供たちと交流を深めるうちに、日本の子供たちは海外の子供たちに比べて自己肯定感が低いということに改めて気付かされたのです。子供たちとイベントを通して関わる前から、何となくこの情報を耳にしたことがありました。しかしいざ直接関わってみると、この情報は単なる推測ではなく、れっきとした事実であることを痛感しました。ボランティアイベントで綱渡りを設置したことがあるのですが、「一緒にやってみよう!」と声をかけても、チャレンジする前から「こんなのできないよ」と悲観的になってしまうケースがありました。これはほんの一例です。

この理由は、日本の教育方針が「覚える」ということが中心になりがちだからではないかと私は考えます。海外の教育方針を見てみると、課題に対して「考える」ということをメインにしていて、日本で「考える」教育をメインにしている環境は少ないのかなと感じました。「自分で考える」という能力を身に着けることで、「自分自身について考える」ということも得意になるはずだと思っています。自分について考えられるようになれば、自分の得意分野を広げられて、最終的に自己肯定感が上がるのではないかと考えました。


 この考えを実現すべく、2019年から2021年の2年間にわたって、子供たちが自己肯定感を高めることを目的とした取り組みを実施しました。隔月で若者と子どもが交流するイベントの中で、「長所を伸ばす時間」を設けました。この時間中は子どもたちの得意分野をスタッフが見出し、しっかりフォローしていく体制を構築しました。特に勉強の時間とはしていなかったのですが、問題が解ける度にスタッフが褒めることもあり、この時間は子どもたちが積極的に宿題や得意分野の勉強を進めるようになったのです。

初めは、小学生の子どもたちを対象とした活動を行っていたのですが、活動を続けていくうちに、中学生や高校生とも交流して互いに自己肯定感を上げ合える環境にしたいと思いました。そこで、この取り組みをボランティア団体として中学生や高校生も一緒に活動出来たら、参加者それぞれが自分自身を考えるきっかけにもなると思い、2021年にボランティア団体「ASOBI-NETWORK」を立ち上げました。

人をワクワクさせることに挑戦し続ける


私たちは主に2つの事業を行っています。1つはボランティアで、子どもたちの交流する機会を設ける「ASOBI事業」。そしてもう1つは、地域課題に対してイベントを行ったり、何か企画を立てたりする「会津てらこや事業」です。
 「ASOBI事業」の主な活動としては、2か月に1回、学生と子ども(小学生)が公共施設に集まって、子どもが持参した宿題を学生が教えたり、一緒に遊んだりして交流できる活動を行っています。


 「会津てらこや事業」の活動はまだ始めたばかりですが、地元企業と一緒に、地域づくりのイベントなどを行っています。この活動では、中学生や高校生も「スタッフ側」として参加してもらっています。今後更に色々な企画を行っていくので、中学生や高校生にも企画の部分や運営などにも携わってもらって、子供たちにとってより良い環境づくりに共に励んでいければ嬉しいです。今後行いたいと考えている企画の一例として、地元企業が多く出店する地域のイベントに「ASOBI-NETWORK」のブースを出すことを考えています。子供たちに向けた遊びの企画を考えたり、ブース内で自分たちの取り組みを知ってもらったりするために、説明会なども行う予定です。

 この活動を通して、関わる人全員が自己肯定感を上げて、ポジティブになってほしいという思いがあります。というのも、私は、周りの人が幸せになっていたり、笑顔でいたりするのを見られるのが本当に好きなのです。綺麗ごとだと思われるかもしれませんが、互いに足りないところを補い合い、助け合い、それぞれが自分の強みを武器にして幸せになれる社会にしたいと思っています。ここでの活動で「助け合える環境作り」ができるという、プラットフォームになればいいなと願っています。
 そして「ASOBI-NETWORK」は、「地域のみんなにアソビゴコロを」というテーマで活動を行っています。このテーマは、子供たちだけでなく、大人にも「アソビゴコロ」を持ってほしいなという思いで設定しました。「アソビゴコロ」を持つことで1つの物事を色々な方面から考えられるようになり、常識や固定概念に縛られることなく、自由で斬新な考え方ができるようになるはずです!
 また、ビジョンに「人をワクワクさせることに挑戦し続ける」ということを掲げています。「人をワクワクさせる」ということも自分の強みであり、相手に対しても幸せを与えられる素敵なことだと思います。互いにワクワクを与えあい、関わる人全員が幸せになれる。そんな環境を目指して活動をしていきたいと考えています。

チャレンジしてみる

 個人的な夢ですが、会津に複合商業施設を作りたいと思っています。カフェと夜もやっている飲食店と、服屋さんが併設された施設を作りたいのです。服屋さんは学生でも買えるような安価な服屋さんにして、より多くの人が利用してくれるような施設にしたいです。施設は、学生が通学路でよく通る商店街に作りたいと思っています。
 私がこのような商業施設を作りたいと考える理由は、会津にいる若者が集まるところができたら良いなと思っているからです。若者が集う場所や、若者が「働きたい」と思える場所が会津には少ないと感じています。そこで、働く若者同士がお互いを助けたり、若者が集まって交流できたりする場所が必要だと思い、いつか実現したい夢と掲げています。

 みなさんへのメッセージとしては、自分のやりたいと少しでも思ったことや、周りの人から進められて興味を持ったことは、今からどんどんチャレンジしてみてほしいです。沢山チャレンジしていく中で、自分が本当にやりたいことを見つけて、1つ軸として持っておくと将来にも繋がると思います。チャレンジしてみて学んだことや、新しいことにチャレンジしたという経験や自信は、必ず皆さんの将来に活きるはずです。どんどん新しいものを取り入れて、チャレンジして、得意なことを見つけて、自分が本当は何をしたいのかを模索することが大事だと思います。

おすすめの本
大嶋啓介「世界一ワクワクするリーダーの教科書」(きずな出版)

リーダーとは!が記載されている一冊です。世界にはたくさんのリーダー本が出ていますが、著者がかなり読者に寄り添って書かれている本だと思います。「野球部の監督の動き」、「リーダーの大切さ」、「リーダーにとって大切なたった1つの条件」などがかなり読みやすく記載されています。リーダーになる予定がない方にとっても、チャンスがやってくる本だと思うのでおすすめです。ぜひ読んでみてください! 

(本の情報:国立国会図書館サーチ)


写真提供=佐藤さん

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この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

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