薬剤師が開発した「漢方コーラ」 「自分らしく」を追求する

福島県で調剤薬局の事業を行っている会社を経営している藤田元さん。薬剤師の資格を持ち、「自分らしく」をビジョンにした「株式会社LasiQ」という企業を経営しています。薬の知識を用いて「漢方コーラ」にもチャレンジ。社名にも掲げた「自分らしく」ある生き方についてお話を聞きました。

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薬剤師を価値ある職業に

 福島県須賀川市で、調剤薬局事業や介護事業を行う会社を経営しています。もともと1905年に薬の流通業を曾祖父が創業しており、昭和時代に3代目だった父親が調剤薬局を開業しました。もともとは薬剤師を継ごうとは考えておらず、化学が苦手で文系へ。大学卒業後は商社に就職し、石油の工場やパイプラインを作ったり、海外の病院に医療設備を納入したりするような仕事をしていました。

 家業を継ぐことになったのは、29歳の時。そこから薬剤師の資格を取るため、薬科大学に入り直しました。とはいえ最初は家業を継ぐことにあまり前向きになれませんでしたし「やらされている」という感覚が強かったです。転機になったのは、父の死です。薬剤師という仕事が大好きで、志半ばで倒れた父の死をきっかけに、「薬剤師という職業を価値ある職業にしたい」と思えるようになりました。

カウンセラーのような薬剤師に

 父が亡くなってから、「自分は何のために生きているのだろうか」ということを考えるようになりました。結果、浮かんできたのが「自分らしく生きる」というキーワードでした。100年以上続く企業の4代目ということもあり、「○○しないといけないんじゃないか」という思いが強く、自分らしくできないという悩みがありました。自己肯定感も高いわけではありませんでした。

そこで考え方を変え、「自分らしく」やってみることがいいのではないかと考えました。薬剤師が働く場所はたいてい、限られていると考えていて、病院や薬局、ドラックストア、製薬会社、研究…。でも、僕はそのどこにも当てはまらないかなと考えていました。

薬剤師というのは一定の薬学の知識レベルがあることなので、その薬の知識を使いながら、やりたいことをやれたらいいと考えていました。

例えば薬剤師の資格を持ちながら、歌手や漫画家として活躍されている方がいらっしゃいます。自分なりの、自分らしい薬剤師ということを考えた時に、「カウンセラーのような薬剤師」ということを考えました。考え方と行動を変えることで、健康を維持していく、そんな支援をするような薬剤師がいてもいいかなと思ったからです。産業カウンセラーの資格も取りました。

 みなさんも薬局に行かれた方ならわかるかなと思いますが、通常の薬剤師さんは、 「ご飯を食べた後にこの薬を飲んでね、飲み合わせに注意してね」などというアドバイスをすると思います。加えて、「その方が本当に求めていることは何か?」を考えてみるのです。例えば、子どもさんの薬を渡した時にお母さんに「これから夕飯作りは大変ですね」と話しかけたら「本当に大変なんです」と涙を流されたこともありました。

本当に求めていることは、薬や薬の知識というよりも、承認なのかもしれない。それが価値だと考えるきっかけでした。原因を一緒に考えたり、人を勇気づけたりすることで人の人生をよくすることに貢献していきたいと考えています。

 「プラシーボ効果」という効果があり、何も効果のない薬を飲んでも薬を飲む人が「効く」と思えば症状が改善することがあります。「信じる」ことで良くなるのです。このことからわかるように、いかに安心安全を届けられるかがポイントだと考えています。相手とのコミュニケーション力が求められますし、相手に信用してもらえるような言動を心掛けることが大切だと考えています。

そして「自分らしく」を追求したいと思った結果、社名もその目的に合わせて「有限会社フジ薬局」から「株式会社LasiQ(らしく)」に変更しました。

「自分らしく」を実現する「漢方コーラ」

 「自分らしく」を自分自身が実現しようと取り組んだのが「漢方コーラ」の開発です。近年、大手メーカーの作る大量生産のコーラではなく、地域性や原材料へのこだわりを持って少量生産で作られた「クラフトコーラ」が作られ始めています。そこで、薬剤師としての専門性を活かして漢方成分を加えて作ったクラフトコーラ「漢方コーラ」を作ることにしました。

 家業を継ぐことになって福島に戻った時、東日本大震災の直後ということもあり薬剤師が足りずとても忙しい日々を送っていました。その時、仕事のほんの合間に植物の実や葉、根を調合し、ティーパックに1つ1つ詰めて漢方茶を作るのが幸せな時間でした。実や葉、根の形は1つひとつ違っていて、においも違っています。その個性があるものに囲まれていることが好きでした。そして、実は私は甘いコーラが大好きです。健康に気を使っている薬剤師なのに甘いものが好きということを伝えるのは恥ずかしいな、と思った時期もありましたが、好きなものが組み合わさり、「漢方コーラ」につながりました。

 構想から販売までは約1年半の期間をかけ、クラウドファンディングでお金を集めました。「漢方コーラ」には、カルダモン、シナモン、ナツメグなど体を温める漢方を入れています。黒コショウなども入れています。薬は飲んだ瞬間に「効いたな」という感覚が大事かなと思っていて、なので飲んだ瞬間に効き目が分かるような味にしています。ブラックペッパーのようなスパイスも入れていますので、体がぽかぽかと温まるなと思えるような味にしています。

 実はコーラと薬剤師には縁があり、有名なコカ・コーラも最初に開発をしたのは薬剤師さんなのです。私、ジャンクフードといわれるスナック菓子も大好きでして、次は減塩のノンフライポテトチップスを作ろうかなと思っています。

時代に合わせた経営を

 高血圧や糖尿病などの生活習慣病が今課題になっていますが、これは「習慣」からくる病気なので、治すためにはまさに「習慣」を変えないといけないと考えています。「あなたの考え方と行動を変えれば健康になりますよ」ということを伝えていきたいと思います。

 会社は創業1905年。私で4代目になりますが、最初は薬の行商と倉庫を主にやっていました。今の時代でいうと薬の流通ですね。3代目の父の時に調剤薬局を始めた。そして私の代も時代に合わせて薬や健康に関わることをやっていきたいと考えています。

おすすめの本
「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀 史健)

世の中にはコントロールできることとコントロールできない事があり、コントロール出来ることに注力する価値を知ることができた。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=藤田さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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