漁具を回収し、リサイクル。気仙沼だから生まれるストーリーを

宮城県気仙沼市のamu株式会社の加藤広大さん。大学生時代に気仙沼で過ごしたことをきっかけに港町・気仙沼に移住し、漁網や漁具を回収してリサイクルを目指す会社を起業しました。なぜ移住・起業を決めたのか、そしてこれからどんなことを目指しているのか。加藤さんの思いを伺いました。

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「気仙沼」でビジネスを。

神奈川県小田原市の出身で、関東の大学に通っていました。気仙沼を最初に訪れたのは、大学1年生の時になります。大学の時の先生のご縁で、気仙沼の「ワークキャンプ」に参加しました。これは大学生が10日間共同生活をしながら、地域住民の依頼(ワーク)を受けて、地域の課題解決に取り組むというプログラムでした。昼は小屋を建てたり、バス停の待合室を作ったり。夜は学生と一緒にご飯を食べて語り合って寝泊まりして…とても楽しい日々を送りながら、気仙沼での暮らしにはまり、このワークキャンプを「企画する」側になりました。

地域住民の方にどんなことに取り組んだらいいかを聞いて回り、仲間と一緒に体を動かす。大学2年生の時は、長期休暇はずっと気仙沼に滞在。さらに毎月気仙沼に滞在し1週間程度過ごしていました。後で手帳で振り返ってみたら大学2年生の時は年間100日、気仙沼で過ごしたことになりました。その後東京の会社で番組制作などをして働いていたのですが、2~3年ぶりに気仙沼を訪れた時に「やっぱり面白い街だ」と感じ、地元の一般社団法人で働きながら、気仙沼で何か大きなビジネスをしてみたいと考えていました。ビジネスにして営利事業にした方が安定して継続しますし、より意味のあることだと考えていたからです。この「気仙沼で大きな事業をやってみたい」という思いは、今もぶれずに持ち続けています。

起業のきっかけになったのが、友人とオンラインでお話をしながら「気仙沼の漁網をリサイクルすればいいのではないか」と気づいたことでした。気仙沼の漁師さんに聞いてみると、確かに漁網を処理するのにはお金がかかり、処理に困っていました。さらに調べていくと、海に捨てられるごみの中で漁具が占める割合は高く、海洋プラスチックの原因になっていることも知りました。海に捨てられた漁網に海洋生物が引っかかる「ゴーストフィッシング」などの問題につながってしまうことも知りました。もともと、気仙沼だからこそできて、そして多くの人に影響するビジネスをやりたいと考えていました。そこで「環境」というキーワードは外に発信する上で一つのピースになると考えました。

リサイクルの可能性を広げるために

2021年9月にamu株式会社を創業。「amu」は「編む」、編集の「編」という意味なのですが、今あるものの中から価値のあるものを見つけて、編集していくというところから社名にしました。ロゴのデザインは気仙沼のデザイナー、志田淳さんに依頼をしましたが、本の背表紙と糸をイメージしたロゴで、とても気に入っています。

志田さんのインタビューはこちら

色々な漁網の中でも私たちが注目をしたのが、「マグロテグス」と呼ばれるマグロ漁で使われるナイロン製の糸になります。漁具はポリエステル、ポリプロピレンなどでも作られていますが、中でもナイロンは加工がしやすいことに注目をしました。遠洋マグロ漁では、全長150kmに渡る長い縄に3000本ほど針を吊るしてマグロを釣ります。重さ100キロを超えるマグロを釣るわけなので、糸が痛みますし、定期的に交換することが必要になります。使わなくなって捨ててしまうこの糸を回収し、リサイクルすることを目指しています。

気仙沼の漁師さんたちはとても協力的でした。もともと捨てるためには1キロ当たり数十円というお金がかかるものなので、それを無償で回収できることにはメリットを感じていました。また、回収したマグロテグスを保管する倉庫や運搬するトラックなどを貸していただくこともできました。

リサイクルの方法としては、プラスチックを細かく裁断した「ペレット」という形にして再利用することをテストしています。これは物理的なアプローチです。また、化学的なアプローチも可能で、大学の先生と協働してこの漁具を、「ε-カプロラクタム」という物質まで戻せないか、検討を進めています。「ε-カプトラクタム」からは「ナイロン6」という物質を作ることができ、これがナイロンの原料となります。「ε-カプトラクタム」まで戻すことができれば、服やアウトドア用品など色々なナイロン製品の素材を作ることができるため、より、リサイクルの可能性が広がるのではないかと考えています。

事業には同世代のメンバーが協力してくれていて、中には私と同じように県外から気仙沼に移住した仲間たちもいます。私はどちらかというと一人でやってしまうタイプで、なかなかチームでうまく行った経験がなかったのですが、「広大がやっているなら協力するよ」ということで協力者が集まってくれていることにとても感謝をしています。

世界を見据えて

今後は回収をより促進していくために、紙の「シュレッダー」のようにマグロテグスを細かく裁断できる機械などを開発していきたいと思います。その方が「漁網がかさばって船の上に置けない」ということを解決できると考えているからです。また、遠洋マグロ漁船だと、海の上を数か月航海してから気仙沼に戻ってきます。この機械を通して、回収した網の量を知ることができることがよいと考えています。

また、海外にも進出をしていきたいと考えています。まずは世界でマグロの漁獲量が多い国であるインドネシアやスペインのラスパルマス。ここには世界中からマグロ遠洋漁業の漁船が集まりますから、マグロテグスの回収やリサイクルを進められるといいなと考えています。「気仙沼だからできる」というストーリーをこれからも作っていきたいと考えています。

おすすめの本
アレックス・バナヤン「サードドア」(東洋経済新報社)

18歳の米国の青年が、成功者に対してインタビューを重ねた1冊。大人に話を聞くのもそんなに怖いものではないということを実感させられる一冊。やりたいことがないのは当たり前。動くことに価値があり、頭を使えば想像をゆうに超える応援が自分を遠くまで連れて行ってくれる。

(本の情報:国立国会図書館リサーチ)

写真提供=加藤さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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