持続可能な農山漁村を岩手から創る

岩手県北部、北三陸地域を拠点に活動されている、株式会社アースカラーの高浜大介さん。関東地方から岩手県に移住し、農山漁村の持続可能なモデルづくりを目指しています。なぜ過疎地域の課題解決に取り組んでいるのか。田舎や農山漁村を守ることの価値について、お話を伺いました。

目次

ベンチャー企業から農山漁村に

大手国際物流企業、人事・教育ベンチャー企業に勤務した後、2010年に起業し、「地球のしごと大學」という社会人向けの市民学校を立ち上げました。日本の農山漁村でフィールドワークを行いながら、これからの「生きる」と「しごと」について考える講座を企画し、のべ約700名に受講していただきました。また自分でも千葉県佐倉市で約1ヘクタールの田畑にて無農薬・無化学肥料のお米作りや大豆作り、農業体験などを主とする教育農場にも挑戦しました。

都会と田舎の関係とは

田舎には資源があります。農林資源やエネルギー資源を身近にある状態にしながら、自然と共生しながら生きている。しかし田舎から人がいなくなり、都市に人口が流出し、自然界のことがわからない人が多くなってしまうと、自然界と離れた生活に慣れていく。そうすると、人間の暴走が始まり、自然はなくなってしまうかもしれません。

そこは意地でも残すべきだと思うのです。経済合理性ではなく、身体性や大事な価値観は、多少不便であっても自然の力を活かしておかないと継承されないと考えています。

残そう、という前提の中で考えると、多少不便であっても、自然に触れながら暮らすことが楽しい、田舎暮らしに憧れがあるという人は一定数いるわけです。この人たちと一緒に作りなおさないといけないと考えています。昔の日本の知恵や仕事を継承して現代版に再実装し、飯も食べられるし、幸せに暮らせるという状態を目指していきたいと考えています。

子育てを考えた時にどこか田舎で子育てがしてみたいと思っていて、そこで出会ったのが岩手県の北三陸地域でした。妻がそのエリアに近い青森県八戸市出身ということもあって、2018年に岩手に移住をしました。

「村」と「都市部」をつなぐ

現在は岩手県普代村を拠点に、過疎地域や農山漁村の活性化に取り組んでいます。普代村には海も山もあり、歴史的な神社もあります。商店街もあり、小さいながらも思いを持って頑張っているお店や事業者さんがいます。普代村の人口は岩手県内の自治体では最も少ない、約2500人ではありますが、小さいながらもまとまりがある村だと感じています。

移住者を増やすためには、まず構想を作り、地域の面白い人が一定数いる状態で、面白い人たちと地域の外の人をつなげ、この中に入ると面白そうだな」と思ってもらわないといけないと考えています。

普代村はコミュニティの力が強いですし、普代村の面白い方と都市部の方とのつながりを作ることで、新たなコミュニティを立ち上げることができるのではないかと考えています。まずは村の宿泊施設の一角に都会の企業で働いている方が地方でも仕事ができる「リモートワーク」ができる施設を作りました。

2022年夏からは、その宿泊施設に泊まりながら村の方のお話を伺い、一緒にできることを考える「留村」プログラムを始めています。「留村」をきっかけに、「こんな田舎なのに、やる気のある人がたくさんいるんだ」という感覚を持っていただければ、移住のきっかけになればと考えています。「地球のしごと大學」を受講している方々や、企業の方が滞在してくださいました。移住したい、というお話を頂いたり、実際に地域の課題解決につながる複数のプロジェクトが進んだりしています。

村にかかわって頂ける人数はまだまだ多くはありませんが、逆に10人程度のネットワークを作り、お互いがわかる関係性の中で小さいコミュニティを作っていくことが大切なのではないかと感じています。100人、200人単位の大きなコミュニティを作ってしまうと、人数は多いものの離れて行ってしまう人もいるかもしれません。逆に少ない人数で価値のあるコミュニティを作った方が世のため、人のためになるのではないかと考えています。

もう1つ、カギになるのは教育だと考えています。五感を使い、自然に触れて、たくましく生きる力を身につけてほしいという思いで「つちのこ保育園」を開園しました。園の近くには畑があり、外の自然の中で体験することを重視しています。将来的には小学校中学校まで作りたいと考えています。

農山漁村の理想形を作る

こういう地域こそが理想だよね、という理想形を作っていきたいと考えています。地域の環境資源を守り、社会価値を作る、まさに農山漁村版の「SDGs」のようなものです。

理想形を作ったうえで、お金が回る仕組みを作っていきたいと考えています。例えば地域の理想像に貢献したら、貢献した人の地域通貨が支払われるような仕組みです。

この仕組みができれば、地域にあらたな経済圏ができると考えます。例えば地元産の食材を使って、いい仕入れをしっかりしている飲食店については地域通貨を支払うことができる。これで地域経済を盛り上げ、加えて地域教育を行うという両輪で、持続的な地域を作っていきたいと考えています。「小さな事業者」と「よい教育」が地域の持続性につながるということを過疎地域の活性化を行う一つのモデルにしていきたいと考えています。

今後の展望

まずは普代村を拠点にしながら、岩手の県北で活動を広げていきたいと考えています。1つひとつの自治体がばらばらに移住に取り組むよりも、近くの自治体と一緒になって、魅力化を進めていかないといけないと感じています。複数の自治体と一緒に「留村」のプログラムを進めていきたいと考えています。

おすすめの本
養老孟司・宮崎駿「虫眼とアニ眼」(新潮社)

解剖学者・養老孟司さんと映画監督の宮崎駿さんによる対談。自然との共生や人間の原点について考えさせられる本。対談形式で文章が短く読みやすい。

(本の情報:国立国会図書館リサーチ)

写真提供=高浜さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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