町の人々と地域に 「アカリ」を

株式会社「家守舎桃ノ音」の代表取締役を務め、福島県国見町でCo-Learning Space「アカリ」を営む上神田健太さん。「アカリ」を作ったきっかけや、上神田さんの地域に対する熱い想いをぜひお読みください。

目次

◆取り組みのきっかけ

 私は生まれてから大学へ進学するまで、ずっと岩手県に住んでいました。大学は宇都宮大学に進学し、都市計画研究室でまちづくりについての研究を行っていました。大学を卒業後は東京都庁に就職して7年間勤務したのちに、妻の実家の建設会社を継ぐために福島県国見町に移住しました。国見町は人口9,000人ほどの小さな町ですが、桃や柿の栽培が盛んで、自然も豊かなとても素敵な地域です。

 しかし、少子高齢化が進み、この町の経済活動が徐々に衰退している現状を目の当たりにしてきました。そこで、国見町で暮らす人々が、楽しく、豊かな生活を続けていくために活動したいと思い、地元の有志数人と「家守舎桃ノ音(やもりしゃもものね)」を2018年に設立しました。

◆どんな取り組みをしているか

 「家守舎桃ノ音」で行っている事業の1つにCo-Learning Space「アカリ」の運営があります。この施設は、1階にレストラン、ラウンジ、ライブラリー、2階にシェアオフィス・スタジオを設けた複合施設です。レストランでは地元の食材を使った料理を提供し、ラウンジでは地域の学生が団らんしたり、学習したりしています。2階では、地域おこし協力隊の拠点として使用されたり、テレワークを行う方がシェアオフィスを利用されたりと、多くの方に足を運んでいただいています。立ち上げの背景として、「アカリ」を立ち上げるまで、国見町には地域に暮らす人たち同士が共に学び合い、成長していけるような場所を作りたいという想いから2019年にオープンさせました。「アカリ」の由来は、「駅前にあるこの施設に実際にアカリが灯る」ことと「この地域に暮らす人々が、自ら”やりたい”と思う気持ちにアカリを灯す」こと、この2つの意味を込めて名づけました。施設のコンセプトは「1人1人の想いが灯る場所」とし、日々営業しています。

 また、そのほかにはエコタウン事業も行っています。エコタウンとは、環境にやさしいまちづくりを行っている都市のことをいいます。日本の住宅の断熱性能は先進国内で見ても低いという課題があり、国見町から実践していきたいと考えました。国見町は人口規模は小さいものの、住宅の需要がまだあります。そのため、駅前に賑わいを持たせるためには商業施設よりも住宅地をつくるべきだと思いました。そして、エコタウンという環境配慮型の住宅地とすることで、地域の魅力を向上させることにも寄与すると考えました。福島県内では、エコハウスを1棟建てるという事例はありますが、エコタウンのように「まち」として作っているところはまだないため、県内初の挑戦です。場所は「アカリ」のすぐ近くで、全部で8棟の住宅、カフェ、ゲストハウスを建設する予定です。まだ建設途中ではありますが、エコタウンで沢山の新たな出会いや感動が生まれ、環境にも配慮するまちづくりのあり方を示せればと思います。

 そのほか、「エリアデザインラボ」というまちづくりの勉強会も定期開催しています。若年層をターゲットとし、”自分の手で地域をより良くしたい”という人材が増えるようにという思いで実施しています。どんなに小さなアイデアでも、少しずつ実現していくことで必ず町は良くなります。定期開催を続けて3年間で、延べ120名の方にご参加いただいた勉強会です。

 また、「空想マルシェ」というイベントは、参加者の「やりたい!」という空想を1日だけ実現するというものです。通常、お店を開くなど、何かを新しく始める際には、場所や設備など用意するものが多く、コストがかかるのが難点です。しかし、1日限定でテント等を利用してイベントとして実施することで、コストを大きく抑えられるため、気軽に挑戦できます。過去には参加者の希望により、演劇や短編アニメーションの上映会、ハンドメイド作品の出店を行い、大盛況でした。また、「めぐるくらし市」というイベントでは、飲食店は地域食材を使用したもの限定としたり、併せて開催する古本市や子供服のフリーマーケットも地域資源の循環を目的としたりと、地域の資源がめぐる仕組みを作りました。

 このように様々なイベントを行うのは、商業的な意味合いよりも、地域の魅力や価値をより高めるためです。イベントを通して、地域の人たちの挑戦を応援する気風や、環境に配慮した豊かな暮らしぶりを発信することで、町のブランドを向上させることにつながります。継続的にイベントを行うことで、地域に魅力を感じてくれる人が増え、結果として移住者増加や住民の「国見町に対する誇り」へと繋がっていくと嬉しいです。

◆未来へ向けて・高校生へのメッセージ

 そもそも「まちづくり」は定義があいまいなものですが、私たちは「町を経営すること」だと結論付けています。現在のまちづくり分野における課題として、「賑わいの創出」や「人通りの改善」といった抽象的な目標を掲げた、単発のイベントが多く行われていることがあげられます。確かにその時は多くの人が一時的に集まるかもしれませんが、長期的に考えれば本当に町が良くなったとは言えないものも散見されます。短期的な投資ではなく、長期的な投資をして、町に経済的なメリットを数字で証明できるようにすることこそが大切だと思っています。 

 しかし、国見町という市場が小さい地域で事業をすることは、集客が難しかったり、売上が上がらなかったりと難しい点もたくさんあるだろうと計画当初から予想していました。そこで、一般のお客様が毎日たくさん来なくても成立するように、出来るだけコストを削減した運営を心がけました。また、アカリの運営を続ける中で嬉しかったことは、「アカリ」をオープンした1年目に、自習目的で利用してくれた福島市在住の高校生のことです。直接は会っていませんが、「素晴らしい施設をつくってくれてありがとうございます!」と書かれた置き手紙を見つけ、とても嬉しく感動しました。

 高校生のみなさんへのメッセージとしては、今興味があることに積極的に関わってみてください。高校生のうちにまじめに社会課題を解決しようとすることも大切ですが、自分の中の好奇心をくすぐられるようなものにまっすぐ取り組む方が、大人になってから必ず役に立ちます。私自身もアートアニメーションが好きで、絵を描くことなどに昔から興味がありました。現在の仕事では、絵を描くことやアニメーションを作成することはないものの、建築・アート・デザインが必要不可欠な「まちづくり」という分野に関わっているので、過去の興味が現在の活動に繋がることを実感しています。皆さんにも楽しみながら、遊びながら、沢山学んでほしいと思います。

 最後に、大人の言うことを鵜呑みにせずに、自分の感性に正直に生きることが最終的に人生を幸せに生きるコツかもしれません。皆さんのやる気に”アカリ”が灯り、夢に向かって邁進されることを心から応援しています!

探究テーマを広げる問い

あなたが「まちづくり」を定義するとしたらどのように定義しますか?理由と一緒に考えてみよう。

カテゴリ:地域

◆おすすめの本
「ぼくらのリノベーションまちづくり」 (嶋田洋平)

北九州市の小倉で生まれた「新築に頼らずに、今ある空き家・空地・空きビルなどの資源を使ってまちづくりをする」という考え方について詳しく書かれています。全国100箇所程度で用いられた考え方で、「まちづくり」についてとても勉強になるのでぜひお読みください。

写真提供=上神田さん

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