若者の”やりたい”を全力で応援

岩手県宮古市で子ども・若者の支援を行うNPO法人みやっこベースの早川輝さん。なぜ縁もゆかりもない岩手県宮古市でNPO法人を設立したのか、そして今後どんな展望をもっているのか。若者の「やりたい」を全力で応援したいという早川さんのストーリーをぜひお聞きください。

目次

地元への愛着を持つきっかけを作る

私がNPO法人みやっこベースを立ち上げたきっかけは、東日本大震災でした。

震災が発生した日は、私がオーストラリアから帰国して10日後。福岡県出身の私は東北には全く縁がありませんでしたが、海外にいた以上、日本国内での出来事は他人事とは思えませんでした。宮古市を選んだ理由は、たまたま個人ボランティアの受け入れが早かったから。2週間ずつ、様々な地域でボランティアをしたいと考えていた私ですが、宮古で泥かきなどの復旧作業に専念していると、気がついたら約2週間後にはボランティアリーダーになっていました。

そこから、声をかけてもらって市内のボランティア団体に入り、コーディネーターとして「宮古の復興のために何が必要か」を考える立場になりました。団体では、現地の支援に関するニーズの調査や、小・中学生の仮設住宅内での遊び場の提供、学習支援を担当。その中で高校生・大学生ボランティアと出会い、復興に対して自ら責任感を持って取り組む学生の姿を見て、未来の世代を育てる大切さを認識しました。

しかし、翌年にそのボランティア団体が解散。団体に所属して宮古に残る決意をしたものの、中途半端に終わってしまいました。私は宮古を離れる前に、今の自分にしか残せないものを残していきたいという気持ちになっていきました。

宮古には4年制の大学がないので、高校を卒業すると県内外問わず、宮古を離れてしまう若者が多いです。加えて、震災の翌年にはすでに若者ボランティアの数が減っていました。だからこそ、未来を担っていく世代が地域に関われる場を作り、地元への愛着を持つきっかけになるようにという想いを込めて、2013年に任意団体ユースみやっこベースを設立。2015年にはNPO法人化しました。

「みやっこベース」での取り組み

2023年で団体設立から10年目を迎えました。

当初は「高校生サミット」というワークショップイベントを毎月開催し、高校生たちがどうやって地域に関わっていくか、高校生の想いを形にする支援をしていました。また、翌年には高校生の居場所をまちにつくること、地域に関わるきっかけをつくることを目的に、商店街に若者向けフリースペース「みやっこハウス」をオープンさせました。

そのように学生たちの活動をサポートしていく中で、各年代を対象にしたプログラムが派生していきました。

例えば、小学生向けには子どもだけが参加できる架空の街「みやっこタウン」。子どもたちが自分が好きな職業を選択して働き、給料としてお金の代わりに「ベスカ」という疑似通貨を受け取ります。それを使って買い物をしたり、遊んだりすることができます。まさに社会で生きる体験ができるという仕組みです。

また、大学生向けには、地元を再発見するプログラム「地元修学旅行」や地元企業の課題解決「実践型インターンシップ」を提供。さらに、宮古地域の新入社員向けには、地域内での同期コミュニティ形成を目的に合同研修企画「ルーキーズカレッジ」を開催しています。

このように、子どもから若手社会人まで世代ごとにプログラムを提供し、地域に関わるきっかけづくりや活動のサポートをしています。10年間活動を継続していると、プログラムに参加した卒業生が宮古に戻ってきたり移住したりするケースが増えてきており、これまでの取り組みの成果を実感しています。

自分の人生を生きる

震災から10年を迎えたタイミングで、みやっこベースでは理念を刷新しました。これまでは、震災後の地域を担う子ども・若者をサポートしたいという想いで活動してきましたが、最近は震災の記憶がない子どもたちも増えています。震災から11年が経過した今想うのは、「未来の始まりを共につくっていこう」ということ。宮古において、何かがはじまるきっかけになるような、ポジティブなコミュニティを作っていきたいと考えています。

というのも、先述の通り一度宮古を出て宮古に戻ってくる若者や、宮古を選んで来てくれる若者が増えてきました。「なぜ宮古を選んで来てくれたのか?」。それを突き詰めると「意思ある人々が集まっているから」なのだと思います。

これからは、震災当時高校生だった若者たちが中心となって新しい挑戦をしていくと思うので、それを大人である私たちが全力でサポートしていきたいです。そうしたコミュニティをいくつもサポートし、コミュニティ同士の行き来ができる、ハブのような存在になれたらより素敵ですね。小さい子どもたちもそれを見て憧れるような、そんな循環を作っていきたいです。そうすれば自然と地域は明るく、豊かになっていくんじゃないかと思っています。

最後に、皆さんには自分の人生を、自分が主人公になるように生きて欲しいです。

高校時代は興味があるものを見つけられず、なんとなく理系、なんとなく情報系の大学に進みました。それでも、大学時代に1人で日本一周のバイク旅に出たり、オーストラリアに留学に行ったり、そういう経験を積む中で将来やりたい仕事について気付くことができました。

自分が知らない世界に出るということは不安に思うこともあるかもしれませんが、その分新しい発見があるはずです。自分が動かないと周りの景色は変わりません。逆に言えば、自分が動きさえすれば景色は変わるし、考えも変わるんです。それを繰り返していけば、納得のいく人生を送ることができるんじゃないかなと思います。

おすすめの本
伊坂幸太郎「砂漠」(新潮社)

仙台の大学生5人が中心の青春小説です。皆さんに何かしらの勇気をくれる本ではないかと思います。ぜひ、大人になる前に読んでください。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供:早川さん

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この記事を書いた人

東日本大震災で被災し、高校・大学時代は「地方創生」「教育」分野の活動に参画。民間企業で東北の地方創生事業に携わったのち、2022年に岩手県宮古市にUターン。NPO職員の傍ら地元タウン誌等ライター活動を行う。これまで首長や起業家、地域のキーパーソン、地域の話題などを幅広く取材。

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