看護師の経験から広げたい、アロマテラピーの可能性

看護師として緩和ケア病棟で働いた経験を経て、大学院時代に「アロマテラピー」に出会い、アロマテラピーを緩和ケアに生かそうとサービス開発を進めてきた伊藤里美さん。MiTOHOKU Program期間中、メンターのアドバイスをもとに行ったチームでの話し合いや2期生との交流を通して、自分たちの強みを言語化し、今後作りたい世界についても明確にすることができたといいます。どんな学びがあったのかお話を伺いました。

目次

メンバーと言語化した自分たちの強みとビジョン

伊藤さんは、看護師として3年間、緩和ケア病棟で働いた後、緩和ケア分野の研究をするために大学院へ進学。そこで出会ったアロマテラピーに可能性を見出し、伊藤さんは仲間と一緒にアロマテラピーを看護師に広めるためのプロジェクトを開始しました。しかし、医療現場でアロマを広める壁を感じ、打開策として「ビジネス」へ方向転換。アロマテラピーについての資格を持ち看護や心理を専門に学ぶチームメンバー3人と、アロマを緩和ケアに生かす商品を開発するというアイデアを磨いてきました。

看護師時代に「患者さんのことを1番に考える」という心構えを学んだ伊藤さん。「アロマテラピーと従来の医療を組み合わせて患者さんの『やりたいこと』や『目標』をかなえてあげられる世界」を目指して開発を進めてきました。

MiTOHOKU Program事務局とのミーティングでは「ブレないで続けていくためにはミッション・ビジョンを考えることが大事」というアドバイスを受ける機会がありました。また、メンターの齊藤良太さんからも「自分たちの強みを意識してプロダクトを考えよう」というアドバイスを受けました。伊藤さん含め、チームのメンバーは大学院生をしながら事業開発をしていたため、「実現したい世界観や、大切にしたい価値観、チームの強みなどを、チーム全体でじっくり話し合う機会がなかった」と語ります。

そこで伊藤さんたちは、2025年の年始に集まり、半日かけてチームでミッション・ビジョンを議論し、どのようにチームメンバーの強みをプロダクトに反映するかについても改めて考えました。

そして迎えた最終発表会。発表の冒頭、「研究とテクノロジーで、香りをケアの新しいスタンダードに」というビジョンと「アロマテラピーで患者と家族に穏やかな時を届ける」というミッションを発表。

自分たちの最大の強みは「医療者でありアロマの専門家がチームを組んでいること」と発表。「緩和ケア現場で働いていたことがある看護師がいること、そして研究者として、科学的根拠に基づいた商品を開発できることを生かし、患者さん1人ひとりに合ったサービスを提供していく」と伝えました。

チームメンバーの強みを活かしプロダクトを磨く

伊藤さんたちは、MiTOHOKU Programの期間中、患者さん1人ひとりの疾患と好みに合わせたオーダーメイドのアロマの開発に取り組んできました。どのような香りが特定の疾患や痛みを和らげるかという先行研究を参考にするだけでなく、高齢者数十名にヒアリングを行い、香りの好みのデータを収集しました。

さらに患者さんの情報を入れると「おすすめのアロマブレンド」を提案してくれるAIのプロトタイプを作成し、最終発表会で披露しました。

今後は実際にがん患者さんに香りを試してもらうことも含めてデータを蓄積し、より一人ひとりに合ったアロマをAIによって提案できるようにしたいと考えています。一方で、全てをAIに頼るのではなく、看護師として医療現場で患者さんやご家族と接してきた経験を生かし、人と人とのコミュニケーションも生かせるようなサービスを実現したいと考えています。MiTOHOKU Programに挑戦した理由は、「医療的ケア児の支援」という課題に取り組みたいからです。

自身のアイデアを発信することでブラッシュアップ

伊藤さんは、MiTOHOKU Program期間に、さまざまなビジネスコンテストや起業家プログラムに積極的に挑戦しました。福島県と福島イノベーション・コースト構想推進機構が主催するビジネスアイデアコンテスト「イノベのたまご」では「女性起業家ビジネスアイデア部門」の最優秀賞に選ばれ、シンガポールも訪問したほか、東北大学ビジネスアイデアコンテストでも優秀賞を受賞しました。

多くのプレゼンテーション経験を積み、アイデアを人に話してフィードバックをもらう機会を持つことで、アイデアがどんどんブラッシュアップされていると感じたそうです。当初、「自分たちのプロダクトがニーズに合っているのか。本当に求められているものなのかどうか」という漠然とした不安を感じていた伊藤さん。「実現したいことに近づいていくことが楽しかった」と振り返ります。

また、MiTOHOKU Programに参加した他の参加者からの刺激も多かったという伊藤さん。月1回程度開催される、朝7時からの情報交流会に毎回参加したと言います。二次審査からプロダクトを変えたメンバーや、「壮大な世界観」にたどり着いたメンバーがいるということを見聞きして刺激を受けたそうです。一人ひとりの個性の強さや成長を感じることで、「私も頑張ろう」とモチベーションになっていたと言います。

今後は起業も視野に、仮説検証やプロダクトの商品化を進めていきたいと考える伊藤さん。MiTOHOKU Programで得た「チームの強みを活かす」という学びをもとに、世の中を変えるプロダクトの開発を目指します。

MiTOHOKU Programとは

「MiTOHOKU Program」とは、東北にゆかりのある未踏的若手人材を発掘・育成するプログラムです。「起業家・専門家集団による伴走支援」により、若手人材の「前人未踏」のアイデア実現を支援します。




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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

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