スケートボードで人と人をつなげ、面白い街を作る

岩手県花巻市で10年以上、スケートボードができる環境づくりに取り組んできた佐々木大地さん。「若い世代に地元を大切にと思ってほしい」という思いを行動に移してきました。自分が好きなことを突き詰め、地域でやりたいことを実現し続けている佐々木さんのストーリーをぜひご覧ください。

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スケートボードが人とつながるきっかけに

スケートボードを始めたきっかけは、中学時代に見たスケートボードの映像でした。もともと映画が好きで、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「スターウォーズ」など海外の映画をよく見ていました。それで、海外の街をスケートボードでかっこよく滑っている映像を見て、自分も滑りたいと思いました。

スケートボードは自分に人とつながるきっかけをくれました。地元の花巻でも、先輩が「一緒に滑ろう」と声をかけてくれました。知らない街に行き、スケートボードで滑っていると、地域の方が話しかけてくれて、いつも面白いお話を聞かせてくれました。

そして自分自身、スケートボードから得られるものが多かったのです。スケートボードは「ストリートカルチャー」と呼ばれる1つの文化だと考えています。また、滑るだけではなく、スケートボードの様子を写真や映像に残すことは、今のインスタント的(一時的)な写真やビデオとは違った意味での作品になりますので、それらは音楽や、ファッション、映画などの多様な文化と密接につながっていると思います。

自分自身の転機になったのは、26歳の時のことでした。それまではただスケートボードを楽しんでいたのですが、「これからのスケーターのために、何か形になるものを残したい」ということを考え始めたのです。自分も先輩にお世話になり、スケートボードを楽しむことができたので、今度は自分の後輩や子供たちのために何かできないかなと思っていました。

そこで、花巻に思いっきりスケートボードを楽しめる場所を作ろうと思いました。

花巻に公共スケートボードパークを作る

私たちはまず「花巻市スケートボード協会」という団体を立ち上げ、2009年から花巻市役所の方々と花巻市にスケートボードが楽しめるスケートボードパークができないか、相談を始めました。2010年に行った署名活動では1800名の方の署名が集まりました。

2011年に東日本大震災があり、花巻は直接被害があったわけではないのですが、大変な思いをした仲間もいます。復興の意味も込めこのタイミングでと思っていました。活動を続けて4年、花巻市の方々も私たちの活動を理解してくださり、2013年に花巻の総合体育館や球場近くにある「日居城野運動公園」にスケートボードパークがオープンしました。オープン後、「ここからがスタート」という思いで、私たちはここで子どもたち向けの無料のスケートボード教室を5年以上重ねてきました。東京オリンピックでスケートボードが正式種目に決まったこともあり、スケートボードへの注目も高まったことも追い風となり、心配されていたパークの利用者も増えていきました。

念願のお店を持ち、仲間に会える場に

「次はスケーターの基地になる場所を作りたい」そう思っていた時に、2017年に一度「閉店」というニュースが流れた花巻のマルカンビル大食堂の運営を上町家守舎が引き継いだことを知りました。「ここで何かできないか」と思い、上町家守舎の代表で、同世代でもある小友康広さんに連絡を取りました。(小友さんの記事はこちら

実際にマルカンビルで滑ってみると、地下が滑りやすく、音も響かない。屋内なので雨や雪に関係なく滑ることができました。6階のマルカンビル大食堂には多くの人が訪れていて、ビルの地下にスケートカルチャーを発信できる場があれば、一般の方も見に来てくれるだろうと思いました。「このチャンスを逃したくない、ぜひやりたい」ということでビルの地下でスケートボードの板や靴が購入でき、その場でもスケートボードを楽しめるお店を作ることにしました。

自分たちで内装工事をしたり、床を整備したり、「セクション」と言われる障害物を手作りしました。スケートボードだけではなくこの場所で色々な方が楽しめるように、音楽を流せたり、人を集めてイベントができたりするスペースも意識して作りました。本当に多くの方のご協力で実際に実現することができました。作業を手伝ってくれた仲間の中には、高校生や小学生もいました。そして約1年間地域のスケーター達と、仕事を終えてから毎日集合して深夜まで作業を繰り返し、2018年に「DPRTMENT(デパートメント)SKATE SHOPPARK」をオープンしたのです。

お店を持つことは自分たちの念願でした。スケートボードは世界中で楽しまれているスポーツです。お店があれば、世界の最新情報を地域のスケーターに伝えられます。そして、スケートボード用品を目で見て購入することができます。スケートボードが好き、楽しみたいと思っている人たちが「ここに来れば仲間に会える」という場所にもなります。現在は地域でスケートボードをしている多くの方にご来店いただいております。先日は青森の方が「花巻でスケートボードをしたいから花巻に住みたい」と言って引っ越してきました。

花巻にさらなる拠点づくり

「花巻はいいよね、面白い街だよね」と若い世代が胸を張って言うことができる拠点を作りたいと考えています。「地元には何もない」と思わせたくはないと思っています。

花巻はお祭りが盛んでたくさんのお神輿が街中を練り歩く「花巻まつり」があります。大人になってから中学生や高校生の同級生が集まる「同窓会」も盛んだと思いますし、何か行動したいと思っている人たちがつながりを保ち、団結して何かをやっていこうという土地柄があると思います。進んで自分の興味のある事に参加してもらいたいです。

気づいてみれば、10年以上スケートボードのことを継続してきましたが、1つのことを突き詰める努力をしてきたからこそ、ここまでこられたのではないかと思います。

おすすめの本
岡本太郎「今日の芸術:時代を創造するものは誰か」(光文社)

自分が何かを創造することについて、もっとやらないとというあなたには力になると思います。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

写真提供=佐々木さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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