岩手発・高品質ダウンジャケット。布団屋の持続可能な商品開発とは

私たちが毎日使う布団。「全く嘘偽りのない布団づくり」をモットーに布団のお直しを行う株式会社やよいディライトが、完全国産のダウンジャケットを商品開発しました。被災地の企業として、布団屋として、社会に対して何ができるのか。SDGsを意識した「IWATEDOWN(イワテダウン)プロジェクト」について、プロジェクトリーダーの重泉愛さんに「商品開発」の裏側のストーリーを聞きました。

目次

◆取り組みのきっかけ

株式会社やよいディライトは、2004年創業。普通の布団屋さんは新品の布団を販売しますが、私たちは布団の打ち直しやリフォームが専門の会社です。古くなった布団をきれいにしてお返しする事業を行っています。

そんな私たちが意識しているのは、「人にも環境にも優しいものづくり」です。

人に関しては、一人一人のお悩みに寄り添った布団づくりを大事にしています。スタッフは「睡眠環境寝具指導士」や「睡眠健康指導士」などの資格を有し、お客様のお好みや体調、住環境に応じて、使用する素材や量を調整しています。

また、環境に関しては、持続可能な天然繊維を利用した中身が見えるものづくりを大事にしています。東京都23区では、粗大ゴミの個数の1位が布団というデータがあります。それらのほとんどが化学繊維でできている安価な布団でした。化学繊維は、捨てても土に還らない環境負荷の高い素材です。当社では素材にこだわり、布団のリサイクルを進めています。

参考)東京二十三区清掃一部事務組合
https://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/pickup/20220408.html

このような布団づくりにこだわる私たちが、なぜ「IWATEDOWNプロジェクト」を興し、ダウンジャケットの商品開発を始めたのか。そのきっかけは、社長と私が受講した研修で労働問題、環境問題を知ったことからでした。


日本で売られている服のほとんどは、海外で作られたものです。しかしながら日本では、年間約50トンもの服がゴミとして捨てられています。「安い服を使い捨てする」私たちの消費行動が影響し、コストを抑える手段として労働力の安い海外で大量生産をするという悪循環に陥っているのです。

参考)環境省「サスティナブルファッション」

https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

このように、外国での大量生産品に頼り切ってしまったために国内の工場は減少し、職人たちも仕事を失っているという課題を目の当たりにしました。

この課題を解決するために、「同じ繊維を扱う会社として、国内の職人の雇用を守りたい。布団屋の強みを生かして、羽毛を使った持続可能なダウンジャケットが作れるのではないか。」と社長がダウンジャケットを作ることを決断。私はその想いを受け取り、2018年からプロジェクトリーダーとして動き出しました。

解決に向けた取り組み 

IWATEDOWNプロジェクトを進めるにあたり、「日本初の完全国産」「岩手県産」にこだわりました。東京ではなく地方発の”本当にいいもの”を作りたかったからです。

しかし、完全国産というコンセプトが決定したものの、実現のためには苦労しました。ダウンジャケットに使う羽毛は、岩手で育てられたカモの羽毛を使うことが決まりましたが、通常羽毛の仕分け作業(ふわふわした部分と羽の部分を分ける作業)は、ほぼ100%海外の工場で行われています。

国内で対応している工場がなく、一時「海外に頼るしかないのでは」という声が上がりました。しかし、完全国産のこだわりは譲れなかった私たちは、国内でその機械を持っている工場を探し、動いてない機械を動かしてもらえないかと交渉することにしたのです。そして1年後、なんとか機械を動かしてもらうことができました。

このように、国内の工場を動かすことで雇用を守ることができます。日本では、海外工場の安さに押されて国内の工場が廃業に追い込まれているという課題がありますから、販売することでその雇用が守られていくと考えました。

また、「岩手」にこだわる上で、岩手在住で障がいを持つアーティストにも協力してもらいました。コロナ禍で、アーティストの方の展示会の機会が減っていたので、その機会を用意したいと、プロジェクトに参画していただきました。

様々な課題を乗り越え、2021年に完成したIWATEDOWN。企画からリリースまで約3年もの歳月がかかりました。お披露目と販売のためクラウドファンディングを実施したところ、目標金額50万円に対して、約1,600万円が集まりました。達成率はなんと3351%。驚異の数字を叩き出しました。また、全国放送のテレビ番組でも取り上げてもらったところ、放送中から電話が鳴り止まず、完売することができました。

1着約15万円からという価格設定にもかかわらず、なぜこんなにも反響があったのか。

一つは、「完全国産」「岩手」にこだわり抜いたことだと思います。ストーリーに賛同してくれた方々や岩手にゆかりのある方々に購入いただくことができたのだと思います。

もう一つは、「100年使い続けられる物」というコンセプトを掲げたことだと思います。ダウンジャケットをお布団と同じように大切に使用して、何度ものリフォームを行いながら着続けてほしい。100年子や孫の代まで着続けたいと思っていただけるような、そんな一着になるようにすべてにこだわり作り上げたことに共感いただけたからだと思います。

未来に向けて・高校生へのメッセージ

IWATEDOWNプロジェクトの次なる目標は、実際にダウンジャケットをリフォームできるシステムを作ることです。布団は結婚や就職など大切なお祝い事にプレゼントする文化があります。人の想いが込められているので、古くなっても捨てられずに持っている人も多いです。中の原料を洗って作り替え、きれいにしてあげることが私たちの仕事ですから、それと同じように、ダウンジャケットも様々な想いを込めて使っていただき、使い捨てにせず、百年続くようなシステムを現在作っているところです。

また、私個人としても、「使い捨ての文化」ではなく「持続可能な文化」をつくりたいと思っています。昔の人々は環境に良いことをしていましたが、現在は利便性を優先した使い捨ての文化になってしまっていると感じます。だからこそIWATEDOWNを知ることで、労働問題や環境問題を知ってもらいたい。人々に気付きやきっかけを与えるブランドとして確立していきたいです。

そんな私が高校生のみなさんに伝えたいことは、ものづくりの裏側を考えながら買い物をしてほしいということです。他人事にせず、それを買うと一体どんな影響があるのかについて考えて、行動して欲しいと思います。

おすすめの本
藤原ひろのぶ「買い物は投票なんだ:EARTHおじさんが教えてくれたこと」(三五館シンシャ)

西アフリカの貧困の問題を目の当たりにした筆者は、私たちの生活スタイルが多く関係していることに気が付きます。未来を変えるために筆者は「買える」を「変える」を提案。優しい気持ちになれる一冊です。

(本の情報:国立国会図書館リサーチ)


写真提供=株式会社やよいディライト

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この記事を書いた人

東日本大震災で被災し、高校・大学時代は「地方創生」「教育」分野の活動に参画。民間企業で東北の地方創生事業に携わったのち、2022年に岩手県宮古市にUターン。NPO職員の傍ら地元タウン誌等ライター活動を行う。これまで首長や起業家、地域のキーパーソン、地域の話題などを幅広く取材。

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