
株式会社オーダーメイドジャパン代表取締役の中野友登さんは福島大学在学中に起業し、福島県内各地でコワーキングスペースの運営やまちづくり、地域の情報発信などを行っています。中野さんは30歳を機に会津若松市に移住し、猪苗代湖畔の「限界集落」を拠点に、豊かなまちづくりのモデルケースを作るため活動されています。中野さんがこれから目指すまちづくりについて、お伺いしました。
「コワーキングスペース」の運営を通じて3つの豊かさを実現する
私は広島生まれで、父が転勤族だったために幼少期から各県を転々としてきました。大学は福島大学へ進学し、入学と同時に福島で1人暮らしを始めました。私は元々人に何かを教えることや、体を動かすことが好きだったため、大学在学中に家庭教師事業やトレーニングコンサルティング等の事業で起業。個人事業主として活動を続け、大学を卒業後も事業を継続させました。2018年、23歳の時に「株式会社オーダーメイドジャパン」として会社を設立しました。
オーダーメイドジャパンは、「繋がる人の特別になる」というビジョンを掲げ、地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的としています。実現したい豊かさは大きく分けて3つあり「働く環境の豊かさ」「資本の豊かさ」「心の豊かさ」。これら3つの豊かさを各事業で実現し、繋がった企業や人にとって「あの会社と繋がったから、今の私たちがいる」と思ってもらえるような価値を提供することを目指してきました。

私たちの事業の柱の1つが、コワーキングスペースの運営です。コワーキングスペースとは、異なる職業に就いている人々がオフィス環境を共有しながら仕事や作業ができる空間です。特定の企業に属していない、個人事業主、フリーランスの方や、在宅ワークが基本の方が多く利用されています。そして、コワーキングスペースは単なる「仕事場」ではありません。コワーキングスペースを通じて人と人が繋がり、新たな仕事やコミュニティを生み出し、地域を変えていく。これこそがコワーキングスペースの一番の魅力だと考えています。
コワーキングスペースに人が集まり、新たな仕事やコミュニティが生まれると「働く環境の豊かさ」が実現されます。働く環境が整っていれば、「地方には仕事がないから都心に行く」という人が、地方に残って活動できるようになります。そして、働く環境が整っていれば「資本の豊かさ」も実現できます。地方内で完結する仕事だけでなく、都心の人や企業と連携して依頼を多く引き受ける環境ができるため、資本を豊かにする環境が出来上がります。これら2つの豊かさを実現することで、最終的に「心の豊かさ」も実現されると考えています。新たな出会いや仕事がたくさん生まれる環境で、自分がやりたいことに全力で取り組み、安定した幸せな生活を築きあげて心も豊かにする。こうして、「3つの豊かさ」を達成することができると考えています。
福島だからこそ、地域に大きなインパクトを生み出せる
私が福島に拠点を置いて活動する大きな理由は「都会よりも地域に大きなインパクトを生み出せるから」です。同じ売上高でも、都会と福島のような地方では地域に与えるインパクトは大きく異なります。地方では自分の活動によって街が変わっていくのをより実感でき、とてもやりがいを感じることができています。
一方で福島にはどれだけ想いがある人や企業が存在していても、仕事が少ないという現状があります。地方になかなか仕事がないために、クリエイターやスキルのある人が都心に流出してしまうのです。福島に限らず、地方のほとんどがこの課題を抱えています。そこで私は、地域に想いを持ったスキルのある仲間と共に地域を盛り上げ、面白い企画や仕事が日々生まれるような環境にしたいという思いで会社を経営しています。
福島の情報発信にも力を入れており、福島の企業や団体、自治体さんのホームページやパンフレット制作、SNS運用のサポートなども行っています。最近は、特に企業の想いや地域を伝えるショートドラマの制作を行っています。SNSで閲覧されるように縦型の動画とし、台本の企画から制作・発信まで行っています。今の若い世代は文章よりも動画の方が伝わりやすいので、今後も動画制作に力を入れていきたいと思っています。

30代、限界集落で豊かなまちづくりに挑む
そして30歳を機に、会津若松市の湊町というエリアに移住しました。私が住んでいる集落はわずか15軒、人口減少が進んでおり、住んでいるのはみなさんご高齢の方々です。冬には大雪が降ることもあり、私も雪かきで大変な思いをしました。耕作放棄地や空き家、鳥獣被害など様々な課題があります。
私はこの場所で、「限界集落から、日本一豊かな里山をつくる」という挑戦を進めています。これまで、県内様々な地域のまちづくりに関わっていましたが、民間の立場から関わっているとどうしても短期間で終わってしまうことがありました。お仕事をいただいていた自治体の予算がなくなってしまうと、そこで地域との関係が切れてしまうというもどかしさを感じていました。
そこで、地域に深く入り込み、自分たちが主導でまちづくりに関わり、地域になりわいを作る持続的なモデルを作ることを目指したいと思い、湊町に移住し地域の一員となることにしました。
湊町はとても自然豊かな場所で、猪苗代湖と磐梯山を一望できます。そして特に朝の風景が素晴らしく、毎日、初日の出を見ているような景色を目にすることができます。加えて冬は白鳥の飛来地になっています。

また、歴史的にも縄文時代から人が住んでいたとされ、戊辰戦争では白虎隊の激戦地となりました。区画整備された農地があり、食文化も豊かな場所です。この場所に住んで2年半になりますが、新たに農業法人を立ち上げてお米やそばを育てています。住民の方々とつながり、空き家だった建物を貸していただくことができました。うち1棟を「MIZU-OTO ゆらぎ」という宿泊施設にしました。現在は招待制で、つながりのある方々のみ宿泊可能な形にしています。
朝の風景にはみんな感動していきます。コワーキングスペース運営を通じてつながった学生たちもこの場所を訪れ、地域と若い世代のつながりもでき始めています。今後はカフェレストランや温浴施設をオープンし、豊かな人のつながりを生み出していきたいと思います。そして、食料やエネルギーを自給できるようにし、持続的な地域を生み出していきたいです。


「やりきった」経験を大切に
高校生のみなさんに伝えたいことは、人生で「何をやるか」よりも、「やりきった経験」が何よりも大切だということです。高校生の皆さんは、日々の勉強や部活動、進路選択…と様々な活動に取り組まれていることだと思います。その活動に全力で取り組んで、「やりきった」と心から思える経験をしてみてください。皆さんが今後の人生で壁に当たったときに、そのやりきった経験が必ず活きてきます。そして、高校生のうちから色々な大人を見て、経験をして、職業を知って、将来の選択の幅を広げてほしいと思います。数ある選択肢の中から、皆さん1人1人が心から「なりたい!」と思える将来像を見つけ出せることを願っています。
最後に、私が大切にしている言葉を皆さんに送ります。アフリカのことわざと言われているのですが、「早く行きたければ1人で行け。遠くに行きたければ皆で行け。」どんなゴールに向かって、どんな道を、どう目指すのか。皆さんが心から納得のいく答えを見つけられますよう、私も応援しております。頑張ってください!
(本の情報:国立国会図書館サーチ)
写真提供=中野さん

