はちみつ生産から商品化・販売まで行う株式会社EIGHT CROWNSのメイナード・プラントさん、菊池拓哉さん、小平紘輝さん。なぜ音楽活動と並行して、富谷市ではちみつの事業を興したのか、そして今後どんな展望を持っているのか。商品に込めた思いをぜひお聞きください。
地元・富谷市のために
私たちは20年間の音楽活動のキャリアの中で、日本全国、世界各国を回り、各地の魅力や美味しいものにたくさん触れてきました。各地でのライブはもちろん、地域のイベントにゲストとして参加したり、テーマソングをつくったりする機会もあり、この仕事は地域を盛り上げるという側面も持っていると感じています。たくさんの地域に触れてきた私たちだからこそ、20年以上住んでいる大切な地元・富谷市のために何かできないかとよく話し合っていました。
富谷市でも、ブルーベリーやスイーツ、はちみつを名産品にしようという市の構想があり、メイナードも地元・カナダで養蜂の経験があったことも後押しになり、音楽活動と並行してはちみつの事業を興すことにしました。 その名も「EIGHT CROWNS」。私たちが8つの巣箱から生産をはじめたことに由来し、2018年に立ち上げました。
当初はコワーキングスペースを事務所として利用し、オンライン販売をしていました。しかし、徐々に在庫が増えて手狭になっていた頃、現在入居する「富谷宿観光交流ステーション とみやど」の構想ができたのです。歴史ある蔵を改装し、デザイナーに手伝ってもらいながら今の店舗ができあがりました。
富谷市は、人口が増えている珍しい自治体です。起業家、昔から住んでいる人、最近移住した若い人など多種多様な人々が前向きにチャレンジしています。そんな素晴らしいコミュニティがあるからこそ、チャンスがたくさんある面白いまちだと思っています。
美味しいはちみつを作る
基本的には私たち3人で生産から販売まですべての工程を行っています。1年目の収穫は30kgほどと小さくスタートしましたが、現在は3名で全力を注いで「とみやど」ではちみつが買える店舗を運営しており、「作り手の顔が見えること」を目指しています。
具体的には、富谷市内の養蜂場ではちの巣箱を管理し、年に何度か採蜜をしています。その他、リンゴの時期には市内のリンゴ畑に巣箱を置かせてもらいリンゴの花の蜜を採蜜、アカシアの時期には巣箱を森に移動させ採蜜するなど、その時期によって蜜源が変わります。ただ、そこで採蜜できる量は少ないのであっという間に完売してしまいます。そのため、青森県や長野県の養蜂場とも提携し、有機レモンや高品質なバニラなど素材そのものが持っている香を閉じ込めた商品を販売しています。
商品のこだわりは、「生はちみつ」であること。通常のはちみつは加熱して不純物を取り除きますが、その代わり栄養分が揮発してえぐみが出てきます。しかし、私たちのはちみつは非加熱にこだわっているため、ミネラルやビタミンなどの栄養分が揮発せず、美味しいんです。余計なことを一切せず、純粋に美味しいはちみつづくりに励んでいます。
最初はテスト的に始めたこの事業ですが、徐々に奥が深いことが分かってきました。はちみつの味は、地域、花、育て方、ハチの品種、これらが微妙に変化するだけで全く異なるはちみつが出来上がるんです。買い手の皆さんには、いろんな地域のはちみつを手にとってもらった上で「富谷市のはちみつが一番美味しい!」と思ってもらいたいですね。
何事もチャンスは5年
今後のEIGHT CROWNSの目標は、「養蜂場の拡充」と「商品力の向上」です。採蜜できる量を増やし商品を安定供給していきたいですし、品質にこだわった商品の魅力化を進めていきたいです。まずは養蜂家として一人前になり、買い手の皆さん、富谷の皆さんにはちみつの美味しさや楽しみ方を広めていきたいと思っています。
そんな私たちがみなさんに伝えたいことは3つです。
一つは、最初から一つのキャリアに絞る必要はないこと。実は、私たちも最初は自分のやりたいことが分からなかったのです。メイナードは小学校のALT、菊池は歯科技工士が最初の仕事でしたが、社会経験を積む中で音楽という道に出会いました。私たちがバンドを組んだのは25才、デビューは30才の時でした。私たちは今45歳ですが、はちみつの事業にチャレンジしています。精神は歳を取らないので、いつからでもチャレンジできますよ。(メイナードさんと菊池さんはバンド「MONKEY MAJIK」として活動している)
二つ目は、「何事もチャンスは5年」と期限を設けてみること。5年続ければだいたい1万時間になります。私たちも「5年音楽をやってみてダメだったら諦めよう。軌道に乗ったら続けよう。」とあらかじめ期限を設けてスタートしました。そうすることで集中して本気で取り組むことができるので、結果につながってくると思います。
三つ目は、全ての経験がいつか必ず生きてくるということ。やりたいことを見つけられず、将来に自信を持てないみなさんもいると思います。5年後の自分はイメージがつかないかもしれませんが、1年後の自分はなんとなくイメージがつきますよね。1年後にどうなっていたいか考え、実行する。それをずっと積み重ねていけば、自分が何を目指していきたいのか、いつかそれに気づくことができると思います。目標が見つかるまでの経験は決して無駄にはなりません。音楽の世界においても、良いことも悪いことも身をもって体験していないといい詩が書けませんから、ふらふらしていた時間も含めて経験が役立っていると感じます。社会に出て経験を積み、その中で興味を持ったことに集中して取り組んでいけばいいと思います。
(本の情報:国立国会図書館サーチ)