城を拠点に「観光」で地域を盛り上げる

宮城県白石市の地域おこし協力隊として、観光を通じた地域活性化に取り組む後藤永行(ひさゆき)さん。日本三景・松島のある観光地、宮城県松島町の出身という背景もあり、「観光」に取り組んできました。白石市でどんな観光の形を作るのか、そして将来的には地元にどう貢献していきたいのか、お話を伺いました。

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観光で町に賑わいを

 宮城県松島町の出身です。専門学校時代を宮城で、大学・大学院時代を北海道で過ごしました。大学院に入学するタイミングで東日本大震災があり、地元に帰りたくても帰ることができない、という状態が続いていました。私は「地元で仕事をしたい」と考えていたので、大学院を卒業したあとに松島町に帰りました。観光地である松島町ですが、東日本大震災の影響もあったのかもしれません。町から若い世代の人たちがいなくなり、町全体に賑わいがなくなってしまったと感じました。卒業後は宮城県内や県外にて、スポーツ店や家具販売店での接客や販売の仕事をしていました。

 そして、31歳になった時に「自分のやりたいことを人生かけてやろう」と思い、松島町で観光ガイドの仕事をはじめました。活気を生み出すために外部から人を呼び寄せることが手っ取り早いと考え、「地元を観光で盛り上げたい」という想いを胸にすぐに行動を起こしました。松島町の観光ガイドとして、地元民にしかわからないような場所を観光客に案内していました。

 しかし、松島町のガイドはなかなか成果に結びつけることができませんでした。観光の勉強をしながら働ける場所を探していると、宮城県南部の白石市で観光に関する地域おこし協力隊を募集していました。将来的にも「起業」につながる道がある募集でもあったので、地域おこし協力隊として活動することにしました。

「あしがるさん」としての役割

 白石市には木造で復元された天守を誇る白石城があります。その白石城を利用した観光コンテンツを作ったり、イベントの企画・運営に携わったりしています。具体的には、甲冑(かっちゅう)の着付け体験や天守閣の前にある本丸広場での城キャンプ、清掃活動である城クリーン、城下町のガイドなどを行っています。特に甲冑着付け体験では、お客さんに甲冑を実際に着ていただき、その姿を写真に収めることを楽しんでいただいています。この体験は子どもや歴史が好きな人を中心に人気があるので、子どもたちに白石城や白石市の歴史について知ってもらうきっかけとなるのです。

ただ、子どもや歴史が好きな人以外の人に、「甲冑を着たい」と思わせるような体験が必要だと感じていました。そこで目を付けたのが、動画です。

この動画は、まずお客さんに甲冑を着ながら弓矢を引いてもらい、その様子を我々が撮影します。次に、編集アプリで撮影した動画と元から用意されている動画を組み合わせて、最後にその動画を提供します。概ね15秒程度の動画になります。

甲冑を着ることでなく、甲冑を着て何をするのかまで考えて、「動画」という形で提供することでより多くの方に、白石城や白石市の歴史について知ってもらえるのではないかと思いました。

 また、「あしがるさん」という名前で、自分自身をブランディングしています。SNSのアカウントも「あしがるさん」という名前にしています。地域の人や甲冑着付け体験に来た観光客に「あしがるさん」と呼んでもらったり、あしがるさんに会いに来てもらったりすることは、白石市に来てもらえる要因の1つであると感じています。最初は自分を「あしがるさん」と名乗ることを恥ずかしいと感じてしまっていました。しかし、キャラクターにしたことで多くの人にあしがるさんを知ってもらえたり、あしがるさんが何をしているのかということも伝わったりするようになりました。このように、閉鎖的な地域において「あしがるさん」というキャラクターを多くの人に浸透させることができたのではないかと思います。

 白石市の良さはコンテンツが沢山あることです。例えば、こけし、白石和紙、白石温麺(うーめん)などが挙げられます。しかし、白石市のシンボルである白石城という「点」に来て終わるのではなく、1つ1つの点を線で結ぶことができる可能性があります。また、白石市には魅力的な人が大勢います。何か行動を起こしている人、これから何かを始めたいと考えている人がたくさんおり、人という財産がある地域であると感じています。

今後の展望

 1つは、様々な人が集まる場所を作ることです。例えば、ゲストハウスや宿泊を含めた飲食店を作りたいと考えています。私がこのような場所を作ろうと思ったのは、新型コロナウイルスがきっかけでした。私が白石市で観光の仕事を始めた時はコロナが広がり始めたので、外部からお客さんを呼べない環境から始まりました。コロナによって、人と会えないという物理的距離とマスクの着用などを巡る価値観の違いから精神的距離が生まれてしまい、孤独や将来への不安を感じた人も多かったのではないでしょうか。

 このような現状を考えた時に、人に会ったり場所に行ったり、誰かと話したりすることは大事なことだったなと改めて思ったのです。孤独や不安を抱えている人が多いのであれば、そのような人たちが集まって話したり不安を解消したりするといった、前向きな話ができる場所を白石市に作ろうと考えました。そして2021年、人と会うことや対話することの大切さを体現したOneTableというイベントを実施しました。ここでは、キャンプ形式で1つのテーブルを囲み共通のテーマ、例えば「幸せとは何か」で互いに話し合い、自分の知らない自分を知ったり他人の価値観に触れたりすることができます。将来、私が建てたい拠点の中でも、1つの体験としてOneTableを提供したいと考えています。

 もう1つは、私の地元である松島町の活性化に携わることです。私が大学院を卒業して松島町に戻った時は、若者が町からいなくなり祭りに人が来ていないという状況でした。しかし最近では、若い世代の人が松島町に来ていたり、若者向けのおしゃれな場所も増えていたりします。私が松島町にいない間に町に元気が戻ったことを嬉しく思う反面、松島町の活性化に自分が携われていないことにもどかしさを感じています。今、私は白石市の観光や地域おこしに携わっていますが、白石市を観光で盛り上げたという結果を残したいと考えています。そして最終的には地元・松島町の活性化に携われたらと思います。

おすすめの本
須藤元気「神はテーブルクロス」(幻冬舎)

専門学校時代にこの本に出合いました。人前では明るく振る舞っていましたが、多くの悩みを抱えているというネガティブな感情が内面にはありました。しかし、この本に出合って私の人生が180度変わったように思えます。今までのネガティブな気持ちが少しずつ消え、外の世界へと意識が向くようになりました。

 (本の情報:国立国会図書館リサーチ)

写真提供=後藤さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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