最適な治療と支援を通じて、世界中のてんかん患者さんに幸せな人生を提供するアプローチを考え続けてきたperple(パープル)。最終発表会では見事、最優秀賞を受賞しました。
MiTOHOKU Program期間中、経営者でもあるメインメンターとのメンタリングなど、メンターとの対話やクラウドファンディングへの挑戦を通して多くの学びがあったというperple。チームリーダーの久保田隆文さんに、MiTOHOKU Programでの学びや今後のビジョンについて伺いました。
熱いメンタリングを経験。ビジネス観点も加え、プロジェクトを前に進める
久保田さんは、家族がてんかんを患った経験が大きな理由になり、てんかんを専門とする医師になりました。大学卒業後、病院に勤務をした後アメリカに渡り、2年間臨床と研究を経験。現在は、東北大学病院で医師として勤務しながら、大学院の博士課程に在籍し、てんかんの研究を行ってきました。
日米両国でてんかん医療に関わった経験を活かし、臨床、研究、そして事業化という方向から、よりよいてんかんの治療法を考えてきた久保田さん。久保田さんが着目をしているのが遺伝データを含む多層な生物学情報を一度に解析する「マルチオミックス」という方法です。MiTOHOKU Programには久保田さんに加え、看護師、さらにはAIエンジニアという経験を持ったチーム「perple」で参加し、マルチオミックス研究とビジネスを融合させて新しい価値を生み出すことを目指しています。
医療分野での知識はあるものの、ビジネス面においては経験が浅かったperple。メンターで経営者でもある齊藤良太さんからマーケティングの視点を得られたことが勉強になったと話します。「どのように将来のお客さんになってくれるであろう人と良い関係を築いていくか」や「誰とどういう風にビジネスをしていけばいいか」、「どのように人を巻き込んでいくか」など、医療関係者との会話ではなかなか出てこない実践的なアドバイスを得ることができました。
また、メンタリングでは人生理念や人生ビジョンについて話が及ぶことも多く、「自分はなぜ今このチャレンジをしているのか」を考える機会が多かったそうです。時にはメンターの齊藤さんと寿司屋で「魂のセッション」をすることもあったという久保田さん。生まれた時から現在に至るまでの歴史を遡り、分析してもらった結果、「0から1を生み出すことも好きだけど、1からさらにそれを100にしたいという自分の性格に気づいた」と振り返ります。
クラウドファンディングを通じて届けられた切実なニーズ
久保田さんたちはMiTOHOKU Program期間中、東北大学の「ともプロ!2024」というプログラムでクラウドファンディングに挑戦しました。
寄付者は221名。目標を大きく上回り、約350万円の資金を獲得できたことは素直に嬉しかったと感じています。そして久保田さんがさらに励みになったことは、エンドユーザーである患者さんや患者さんのご家族から、寄付をいただいたこと。そして応援の声やプロジェクトに共感する声をいただいたことだと語ります。
「てんかんを持つ1人です。今回のプロジェクトで1人でも多くの患者に最適な薬の選択が行われることを望みます。」
「てんかん患者の家族がいます。perpleのパーパス、描いているビジョンに強く共感しています。」
「子どもがてんかんを患っています。AI技術の導入によって、てんかんを持っている方々のQOLの向上を心から願います。」
久保田さんは普段医師として患者さんと接してはいるものの、「perple」のプロジェクトについてどう感じたのか、実際の患者さんやそのご家族から感想を聞けたのは今回がはじめてで、改めて多くのてんかん患者を救うためにプロジェクトを前に進めたいという思いを強くしました。
最終発表会でも「エンドユーザーの方から期待の声や切実なニーズをいただいた。いち早く現場に還元させていきたい」と語りました。
若いクリエータからの刺激
MiTOHOKU Program採択者の中で最年長の久保田さん。自分よりも若いクリエータからの刺激も多かったと話します。「若手は行動力がすごい。私は行動を躊躇してしまうこともあるが、いろんなしがらみを突破するために行動することが大切だと改めて気づかされた」と語ります。特に、同じ東北大学の後輩のQueeen Bの永田将真さんとは、大学の研修で一緒にパリに行くなどもともとつながっていてお互いに進捗報告をしながら、永田さんのスピード感に刺激を受けていたと振り返ります。
グローバルスタートアップを目指して
今後は、グローバルへの展開を目指す久保田さん。MiTOHOKU Program期間中にはMiTOHOKU Programの開発資金を使ってアジアのヘルスケアの中心地・シンガポールに渡り、現地の大学関係者とのネットワークを構築。大規模なスタートアップイベント「SWITCH」にも参加しました。また、他国の医師・研究者とのネットワーキングを始めています。さらに2024年12月には医療機器特化のアクセラレータープログラム「MedTech Angels Season4」にも採択され、医療ビジネスに特化したメンタリングを受け始めています。
久保田さんは「MiTOHOKU Program期間に研究が進みプロダクトの実現可能性が高まった一方、開発をもっと進めたいが進まないもどかしさを日々感じている」と話します。今後は、「未踏IT」への応募やより大きな資金が獲得できるプログラムへの応募も視野に、研究や開発、将来的な起業を進めていきたいと考えています。
てんかん医療における課題は世界共通であり、グローバル展開をしていくことで、多くの患者さんを救いたいという久保田さん。「perple」は、MiTOHOKU Programで得た学びやネットワークをもとに、世界中のてんかん患者さんに幸せな人生を提供できるような治療と支援の開発を目指し、新たなステージへと踏み出します。
MiTOHOKU Programとは
「MiTOHOKU Program」とは、東北にゆかりのある未踏的若手人材を発掘・育成するプログラムです。「起業家・専門家集団による伴走支援」により、若手人材の「前人未踏」のアイデア実現を支援します。