【石巻専修大学】「震災伝承」を多様な視点から研究する

東日本大震災を経験した石巻にある、石巻専修大学。ここでは震災の記憶を継承し、次の災害を防ぐために、理工・人間・経営の3学部で、それぞれの教員の専門分野をいかした多様な研究が行われています。

まちづくり、ものづくり、データ活用といった幅広い分野から、震災伝承にアプローチする様々な研究をご紹介します。詳細は、各教員へのインタビュー記事をぜひご覧ください。

また、石巻専修大学は震災直後から、被災者支援や復興支援活動の拠点となりました。記事の後半では、石巻専修大学と東日本大震災についてもご紹介していきます。

目次

震災伝承×観光 経営学部 経営学科 庄子真岐 先生

庄子先生は、観光やマーケティング、まちづくりを専門とし、観光の観点から震災伝承のあり方を研究しています。また、ゼミでは学生が主体となり、毎年3月に「石巻こもれびナイト」という鎮魂と復興した石巻を伝えるイベントを開催しています。さらに、学生たちが主体となって市内のまちあるきコースを企画し、東京都内の高校生を案内するなど、石巻をフィールドに実践的な学びが行われています。

震災伝承×防災教育 人間学部 人間教育学科 新福悦郎 先生

新福先生は、防災教育を専門の一つとし、教員や幼稚園教諭、保育士を目指す学生に対して、震災の教訓をどう次世代へ伝えるかを伝えています。石巻市には大川小学校をはじめ震災の教訓を伝える場所が多くあり、そうした震災遺構へのフィールドワークを通して災害伝承のあり方を考えています。特に、防災教育の題材として裁判の判決文などを用いた防災教育を研究しています。

震災伝承×ものづくり 理工学部 機械工学科 高橋智 先生

高橋先生は、材料力学を専門としながら、3Dプリンタを活用した被災地の復元立体模型づくりや、地域資源を生かした新素材の開発に取り組んでいます。石巻市沿岸部の模型は、航空写真などから震災前の家屋一軒一軒を再現して作られ、復興まちづくりを考えるワークショップや震災伝承活動にも活用されました。高橋先生はものづくりの技術を、防災教育や地域の記憶の継承に結びつけています。

震災伝承×人流データ 経営学部 情報マネジメント学科 小松真治 先生

経済学を専門とする小松先生は、人流データを活用した防災学習に取り組んでおり、石巻市内の小中学校と連携して、災害時の人の動きや望ましい避難行動を考える授業を実施しています。実際の津波注意報・警報発令時の人流データをもとに、地域でどのような避難行動が起きたのかを分析し、よりよい避難の在り方を考える学びにつなげています。

石巻専修大学と東日本大震災

石巻専修大学は、東日本大震災の際、建物自体には大きな損傷がなかったものの、津波によって地域社会が甚大な被害を受け、大学を取り巻く環境は大きく変化しました。その中で、大学は地域に根ざした存在として、震災直後から復興支援の拠点としての役割を果たしてきました。

震災当時の状況

震災発生から20分以内に災害対策本部を設置。石巻市は最大震度6強の揺れに襲われ、学内も停電しましたが、幸い建物には大きな被害はありませんでした。当時キャンパス内にいた教職員や学生は当初中庭に避難していましたが、ラジオで大津波警報の発令を聞いたことから5号館3F、そこから非常電源のあった本館2Fへと移動しました。石巻専修大学のすぐ横を北上川が流れており、津波は川を逆流しましたが、浸水は免れました。

震災直後、大きな被害を免れた大学には多くの避難者が避難してきました。その数は最大で1200人(うち石巻専修大学の学生が200人)。大学は指定避難所には指定されていませんでしたが、教職員が中心となって多くの被災者を受け入れました。

地域の要請でボランティアや救援活動の拠点に

そして、石巻専修大学はボランティアや救援活動の拠点となりました。震災直後の2011年3月15日には石巻市の依頼で大学内にボランティアセンターを立ち上げ、大学のグラウンドをボランティアの宿泊場所として提供することを決めました。

3月下旬からボランティアの受け入れが始まり、全国から集まったボランティアがテントを張ってボランティア活動を行いました。さらにグラウンドを自衛隊、消防、医療、国連世界食糧計画(WFP)等の倉庫やヘリポートとして提供しました。

研究を通じた復興支援を展開

また、復興段階においては、「復興共生プロジェクト」を立ち上げ、被災地支援や復興を担う人材の育成を行いました。例えば、水産業をはじめとした地域産業の再生支援、災害時にも活用できる技術開発、震災の記録や伝承に関する取り組みなどが行われており、大学の専門分野を横断したプロジェクトが次々に生まれてきました。

また、学生もこれらの活動に関わってきました。地域でのフィールドワークやボランティア活動、プロジェクト型学習を通して、単に知識として防災や復興を学ぶのではなく、実際の社会課題に向き合いながら学びを深めています。石巻専修大学は、震災をきっかけに生まれた活動を、研究・教育・地域連携へと発展させながら、地域とともに歩む大学としての役割を果たしています。

参考)東日本大震災 石巻専修大学報告書

写真提供=石巻専修大学

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この記事を書いた人

探究百科GATEWAYの編集部です。高校生の「探究」に役立つ情報や探究分野の解説、探究の方法について発信します。

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