中華料理店「中華屋丹心」を富谷市で2店舗営む三塚詩穂子さん。25歳の時から20年以上飲食店を営んでいます。「丹心」とは「真心」という意味で、真心を込めた美味しい中華料理を提供しています。また、お客さんに満足していただけるよう、お客さんの心をつかむ工夫も取り入れています。富谷市の「とみやど」にあるお店で、三塚さんの思いを伺いました。
誰かをもてなす楽しさ
自分が調理の道に進もうと思ったのは、母親の影響が大きいです。私が子供のころ、どんな食材でも、彩りがよくおいしそうな香りがするメニューにしてくれました。その影響で、私も高校生の時から料理をするのが好きでした。ご飯を作って、友人や誰かをもてなすことが楽しかったのです。そこで高校卒業後は調理系の専門学校に通い、中華料理店でアルバイトを始めました。そのとき、すでに「将来は自分でお店をやりたい」と考えていました。
その後、お客様と接する別の世界を知りたいと2年ほどバスガイドとして働き、出産を経て25歳の時に仙台市泉区でラーメン店を開業しました。専門学校の時に中華料理店で働き麺料理も作っていたので、「ラーメン店」という選択になりました。最初は順調だったのですが、開店から3年くらい経ってくると売り上げが落ちてきたのです。何とかしようと思った時に、行動を変えるきっかけになったのは1冊の本でした。
「おすすめの本」にもありますが、「リッツ・カールトン」というおもてなしに力を入れている世界的なホテルのことを学びました。そこには、接客では、人の感情を動かすのが大切ということが書かれていました。この本で得た学びを、自分のお店でも実際にやってみることにしました。当時から20年ほど経ち、今は富谷市に2店舗お店を構えていますが、今でもその学びを実践しています。
お客さんの感情を動かす工夫
まず、お客さんのことは「名前」で呼んでいます。「佐々木さん」、「佐藤さん」のように苗字ではなく下の名前で呼んでいます。それは、自分に名付けられた名前こそが、自分が存在する証だと思うからです。お客さんにとっても、何か特別扱いされたような、自分が主役になったような思いを味わうと思います。
また、このような「運命を変えるカード」というポイントカードを差し上げています。
ここにも名前を書く欄があります。最初は一番手前にある「誕生編」から始まり、700円ごとにスタンプを1つ差し上げます。3つスタンプがたまると次の来店時にギョーザセットがもらえる仕組みです。スタンプがたまると次の「幼稚園児編」、「小学生編」と次のステージのカードを渡していきます。このように、お客さんがまた来たくなるような仕掛けを作っています。
また、席においてある「お店へのメッセージ」を書いてくださった方には、3日以内にお礼の手紙を出して、チャーシューの無料券を差し上げています。このような仕掛けは、「リッツ・カールトン」の本から学びました。お客さんの感情を動かし、お客さんが私たちのお店のファンになって「常連さん」になれる仕掛けを作っています。
もちろんメニューにもこだわっています。中華料理は中華鍋を使い、強火で一気に調理していくので調理にかかる時間は短いです。逆に、料理の準備、材料を仕込むところには時間を使っています。材料の切り方1つで味は変わるので、切り方にこだわり、また調味料も自分たちで作っています。
ナスと豚ロース肉の細切りを使ったあんかけラーメン「丹心湯麺(タンシンメン)」。
富谷の卵、「ハチヤミート」のお肉、「Eight Crowns」さんのはちみつと富谷の食材をたくさん使った「十宮湯麺(トミヤタンメン)」。
彩り豊かな見た目にこだわって、おいしい中華料理を提供しています。お店の中にただよう、食欲をそそる香りと、調理場から聞こえる中華鍋の音と一緒に味わってほしいと思います。
「やりたいこと」を見つけるために
私は20代前半で出産した後に飲食店を開きました。なので、ママになってから、色々なことを経験させてもらいました。女性が結婚して終わり、出産して終わり、ではなく、女性が活躍する場を作っていきたいと思っています。なので、私と同じように女性が店主の飲食店へのアドバイスや、女性をいやすエステなど美容事業にも挑戦しました。「女」が「喜ぶ」と書いて「嬉しい」になる。その言葉の通り、女性が元気だと世の中が明るくなると思います。これからも女性が活躍する場を作っていきたいと思います。
「やりたいことが見つからない」というみなさんはまず「自分についての特徴」を思いつく限り出してみてください。例えば、「おしゃべりが好き」、「書くことが得意」、「こんな経験がある」。何時間もかけて、100個くらい出してみると、自分自身が何年も貫いてきたものが見えてくると思います。それが「自分の資産」になると思います。まずは自分のことを振り返って、分析してみましょう。そして小さくてもいいから自分でやってみましょう。すると、必ずやりたいことにつながると思います。
(本の情報:国立国会図書館サーチ)